今年度は29期生(2012年度卒)の先輩方にお世話になった2年生(35期生)が2名いましたので,臨床実習の様子を聞いてみました。国リハの先輩に教えていただいたものは知識や技術だけでなく,今は活躍している先輩でも学生時代にはいろんな悩みがあり,それらをどのように克服したかを聞かせてもらえる特別な面もありましたので,先輩からのコメントもまじえてご紹介します。

鈴木竜也(2年)

 僕は第29期の徳田和彦先輩にお会いしたく,徳田義肢製作所さまでの臨床実習を希望させていただきました.学生時代の徳田先輩は優秀な成績で,学生会長として抜群のリーダーシップを発揮していたと教官から伺っていました.僕もいま学生会長をしており,父が義肢装具製作所を経営しているという境遇も同じだったので,徳田先輩に学べることが多くあるのではないかと思い,「僕に足りないものを知る」ことを臨床実習の目標としました.

 徳田先輩は大変お忙しい中,僕に少しでも多くのことを教えようとたくさんの時間を割いてくださいました.その中で将来は会社を背負わねばならないと幼いころから責任感を持っていたこと,だからこそ学生時代に周りが遊んでいても勉強し続けたこと,今も努力し続けていることを教えていただき,自分には足りないものがたくさんあることを痛感しました.

 初めての臨床実習で緊張していた僕のために,週末には歓迎会やレクレーション大会を催していただいたり,ラフティングに連れて行っていただいたりと,勉強も遊びも大変充実した記憶に残る臨床実習にしていただきました.いつかこのご恩に報いることができるよう,日々精進していきたいと思っています.

徳田先輩からのコメント

毎年臨床実習生が学びに来てくれるのを楽しみにしています。

臨床実習生の姿勢を見ていると、自分の学生時代が回想されます。

日々の努力と挑戦を大切にするということを学んで欲しいと思いましたので、短期目標を掲げ、それに向かい一緒に取り組むカリキュラムとしました。

時には夜遅くまでかかることもありましたが、最後まで熱意を持って励んでくれたことが印象深く残っており、気づくと自分も学生から原点の“学ぶ姿勢”を得ていたように思います。


松葉みなみ(2年)

 私は,在学中に数々の伝説を残したと噂の加古さん(29期卒)と吉田さん(17期卒)が勤務されている金沢義肢製作所で病院営業に同行させていただいたり,会社で義肢装具の製作指導を受けたりしました.

 加古さんは仕事に対しては普段の穏やかな雰囲気とは変わって,上司や患者さんに対してもしっかりと意見を言い,難しい症例にも工夫を凝らし,納得がいくまで作業をされていました.そのように大変忙しい中でも時間を割いて,私が希望していた足底板の製作を一から教えてくださり,営業の移動時間には症例の説明や国リハの思い出を話してくださるなど,臨床実習指導者であると同時に頼りになる先輩でした.

 週の仕事が終わった金曜日には吉田さんと加古さんが晩御飯に連れて行ってくださり,おいしいものをお腹いっぱい食べました。休日には能登島に行ったり,金沢名物の金箔ソフトクリームを食べたり,プライベートでも大変お世話になりました.加えて社員さん方皆さんにも大変良くしていただき,ご飯やバレーボールに連れて行っていただきました.それは加古さんが臨床実習前,見知らぬ私のために「後輩のことをよろしくお願いします」と社員の方々にお願いしてくださったおかげだと後々知りました.

 実習期間中,義足に関しては大腿義足から足根中足義足まで,装具は私が希望していた脳卒中の症例を積極的に指導してくださいました.大腿義足に関しては「肌を大きく露出して採型するため,女性POにやってもらいたい」という女性ユーザーの方の意見を聞く事ができ,女性POの必要性を実感しました.また,医師や患者さんの要望に沿った装具を提案できる知識と発想力,要望に応えるために勉強を継続する力などPOに求められる力を金沢義肢製作所の皆さんから学びました.国リハの学生ということで加古さんや吉田さんに散々甘えさせていただきましたが,加古さんと吉田さんが最前線で活躍している姿を見て,「国リハPOの学生」として私が身につけなければいけないものは「積極的に知識を得る向上心」だと感じた臨床実習でした.国リハ生であることを自覚するとともにその繋がりに感謝しています.

加古先輩からのコメント

国リハより臨床実習生を受け入れるのは珍しいことで、とても楽しみにしていました。と同時に、こちらも見られる立場ですので、国リハの学生を受け入れるというのは(いろいろな意味で)特別な緊張感がありました。

松葉さんは観察力が鋭く、私たちの行動の先を読み、細かいことにも気が付き、よくいろいろなことを手伝ってくれました。ドタバタな臨床の場面で助けられることも多く、助手として雇いたいほどでした。また、患者さんとも程よい距離感で、安心感を与えるような接し方ができており、若いながらすごいなぁと思ったりしました。

学生が期間中に見ることのできる症例は一部であり、その基にある考え方をこちらもできるだけ論理的に伝え、それをもとに学生自身が自分の考えを引き出せる機会を作ったつもりです。義肢装具士として働くということがどういうことか、どういう覚悟でこの仕事をしているか、ありのままをさらけだしたつもりですので、それが松葉さんの今後に少しでも役立てば幸いです。

遠く所沢から金沢に来てくれたということもあり、休日には観光ついでにいろいろな所へも遊びにも出掛けました。

いつかこの臨床実習が思い出話となったときに,同じ国リハOBとして,同じ義肢装具士として話ができることを楽しみにしています。