科目紹介

 ※以下、自立支援局(旧更生訓練所)だより に、「シリーズ 理療教育の科目紹介」として掲載されました内容を転載いたします。


シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.1

◎ 人文科学概論

1 はじめに

 日本のあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の歴史は古く律令制の時代から続いています。これらの職に就こうとする方は3年間又は5年間の理療教育を受け、国家試験に合格することが必要です。
 当課では、22名の教官、17名の非常勤講師が基礎、専門基礎、専門の3分野31科目を担当していますので、シリーズで各科目をご紹介します。今回は、基礎分野から人文科学概論Ⅰ、Ⅱの2科目です。

2 人文科学概論Ⅰとは

 この科目は、理療師として必要な基礎的素養を身につけていただくことを目的としています。専門課程1年生で週1時間、年間30時間以上、高等課程では3年生を除く4学年で週8時間、計280時間以上の授業を行っています。その中から、2つの代表的な授業を取り上げ紹介します。

(1) おくのほそ道
 ―理療師としての感性を育む―
 私が最も長く続けている単元です。日本人の教養として『古事記』『源氏物語』『おくのほそ道』は必須との恩師の教えを活かしています。

…もゝ引の破をつゞり笠の緒付かえて、
三里に灸すゆるより松嶋の月先心にかかりて…
(岩波古典文学大系『芭蕉文集』より)

 江戸深川を発ち白河の関を越え、奥州から大垣まで歩いた約600里の中に、芭蕉の人生観、世界観が、引き締まった俳文で綴られています。
 自らの俳風を確立するために庵を人に譲って旅に出る覚悟が、40代の芭蕉の中に燃えていた。
 理療師を目指す方のモデル足り得る人物です。

(2) 医療面接
 ―患者さんとの信頼関係をつくる―
 患者さんと理療師とのコミュニケーションを考える授業を組んでいます。専門的には「医療面接」と呼ばれる分野です。
 医療面接とは、疾病とそれに伴う病苦に関して患者と医療者との間で行われる対話と観察の総体です。
 理療師は、初対面の患者さんと30~90分、時には120分にわたって時間と空間を共有します。そこでは、患者さんの身体面だけでなく、怪我や疾病に伴う様々な苦しみに耳を傾けることとなります。そして、施術。一連の流れの中で、患者さんを全人的に捉え、信頼関係を紡いでいくのです。
 授業では、理療師が行う医療面接の基礎的な知識と技法を身につけていただきます。

写真 単元「医療面接」ロール・プレイの様子

単元「医療面接」ロール・プレイの様子



(3) 学んだことの唯一の証は変わることである
 人文科学概論Ⅰの指導目標は、次のとおりです。「個々の障害特性に応じたコミュニケーション手段並びに保健・医療及び理療の専門職に必要な人文科学に関する基礎的知識と技能を習得させ、理療の分野における問題を適切に解決するための態度と習慣を修得させる」(教科指導要領,2002)
 鍼灸マッサージは無限の可能性を秘めた素晴らしい世界だと、私は思っています。これからも、不易流行の精神で、ほかとはひと味違う理療師の養成に寄与する授業を続けます。

(文/伊藤



◎ 人文科学概論Ⅱ「情報概論」

 理療教育の専門課程において、平成13年度から基礎科目人文科学分野に「情報概論」を設けて、コンピュータや情報通信ネットワーク等の利活用を通した情報基礎教育を実践しています。主な授業内容は、社会で実務上必要とされるWordやExcel、電子メールの送受信、ウェブによる情報検索と活用の知識や技能の習得です。

 今では、いずれも中学校や高等学校等の学校教育で行われており、一般社会においても当然のスキルのように感じられるかもしれません。しかし、理療教育課程の新1年生の平均年齢は毎年およそ40歳前後、利用開始時のパソコンの所有率も約半数という中で、入学後初めてパソコンに触れる方も少ないながら在籍しています。


(1)情報通信技術とその活用の意義

 情報概論は週1時間、1年次のみの配当ですから、この時間だけで誰もがパソコンを自由に活用できるようになる訳ではありません。それでも現代の情報通信技術に触れ、視覚障害によって閉ざされた情報、そのアクセスの可能性をこの授業を通して体感し、それらを自らの生活に活用することの有用性への気づきは、新1年生たちの生きる意欲や力に貢献するものと思われます。
 視覚障害者にとってのパソコンが単に読み書きの道具というだけでは残念です。情報通信技術が生活に画期的な利便性を与え、現代文化を享受する機会となり、そうして得られる情報の利活用が個人の知的枠組みを拡大する道具になりうる、その中心にパソコンという道具があるのではないでしょうか。そう考えると、障害者の生活の多くの場面で、わが国の憲法的価値である知る権利から思想の自由、自己責任と自己決定権、幸福追求権といった基本的人権を支える技術であると言っても過言ではないのです。


(2)視覚障害者とパソコン操作法

 他方、視覚障害はパソコン操作スキルにも大きな影響を与えることがあります。視覚障害により、一般的なパソコン操作に必要なマウス等のポインティング・デバイスが使いにくい、あるいは使えなくなるということです。事実、多くの健常者がパソコンのマウスを取り上げられると、全く手が出なくなります。それまでパソコンの得意な人でも中途失明により操作体系の見直しが求められることになります。この対応がこの科目の大きな特徴の一つです。


平成21年度1年生の授業風景(コンピュータ教室にて)



 画面を視認できないという障壁は、スクリーンリーダと呼ばれる画面読上げソフトウェアを用いた音声化対応により聴覚から、また点字ディスプレイ出力により触覚から、それぞれ知覚することができます。マウス操作に代わるキーボード操作は一般的な基本ソフトやアプリケーションに実はもともと装備されているもので、決して特別なものではなく、大きな困難もありません。
 友人の全盲のご夫婦に、目の見えるお子さんがいます。とても賢い当時6歳の男の子は、両親の姿を見ながらキーボード操作のみでパソコンを操作する習慣がありました。ある日お邪魔した時のこと、パソコンを操作する私のすぐ隣に駆け寄り、澄んだ目を輝かせて、私がマウスでも操作する画面に見入っていました。彼にとっては、私のほうが“異文化人”だったようです。

(3) 情報倫理
 もう一つ大切な習得内容が情報倫理です。情報通信技術は、ややもすると詐欺等の犯罪、子ども達のいじめの道具にもなります。情報倫理の習得とは、簡単に言えばパソコンやインターネットの利活用を通して、行なって良いことと悪いことを理解することです。
 百年に一度と言われる昨今の世界的経済危機後の社会が、ますます発達する情報通信技術を背景にいかに変化するとしても、人の社会には変わることのない、あるいは変えてはいけない普遍的な価値があります。それは、既に言い古された自由や平等、平和や人権等という概念より、何よりも他者への配慮と思いやりの心であり、そうした気持ちをもって情報通信機器を正しく利活用することの大切さを実例を通して学びます。
 少し欲張りな内容かもしれませんが、この科目、情報概論を通じて、ぜひ皆さんにお伝えしたい事柄です。

(文/太田)


シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.3
社会科学概論/あん摩マッサージ指圧基礎実習Ⅰ

◎ 社会科学概論


はじめに
 カリキュラム上に科学的思考の基盤と位置づけられる基礎分野は、科学的・論理的思考力を育て、人間性を高めて自由で主体的な判断力を培う内容を取扱うことが関係法令により規定されています。そこでは、理療師や職業人に必要な能力として、人権やその尊厳についての理解とともに、国際化、情報化社会への対応能力の涵養も求めています。
 こうした観点から、今回は基礎分野の社会科学概論の授業を簡単にご紹介します。

1 社会科学とは
 「理療教育課程における教科指導要領」において、社会科学概論の指導目標は「施術者として必要な社会科学諸分野の基礎的知識について教授し、現代社会の諸問題を総合的に把握し、解決する能力と態度を修得させる」ことと謳われています。
 まず、そもそも「社会科学」とは何でしょうか。簡単にいえば社会を科学すること、つまり、我々の社会やそこに起こる諸現象を科学的に分析・考察することによって普遍的な法則を導き出すことでしょう。実はこれは、多くの人々がそれぞれの人生や職業生活を通して得た経験や学習により行われ、あるいはまた、巷で語られている性質のものといえるかもしれません。しかし、我々の一生の間に得られる経験則は高が知れています。だからこそ、社会科学という学問分野が必要となり、その主な視点として法学、経済学、経営学、政治学、地理学等があります。
 残念ながら、筆者は広範にわたるこれらの分野すべての専門家ではありませんが、永らく学び求めてきたのは法学という分野です。近年のグローバリゼーションの波、情報通信技術革新による情報化社会の進展は新たな諸問題を我々の社会にもたらし、法学の分野にも幾つかの変革を要求してきました。その反面、どんなに社会が変化しようとも、人類にとって普遍的で大切な法理や価値も多く、これらは時代の大きな転換期にこそ、より存在意義を発揮します。
 この法律学という視座から、理療教育課程の皆さんが社会的諸事象への観点と解決への糸口に触れることを通して、それぞれがより意義深い生活を送ることに寄与することができるなら幸いです。
 今回は、授業で扱っている法学分野の科目のうち、次の二つのテーマを中心にご紹介します。

2 日本国憲法
 授業では、日本国憲法誕生の経緯から前文、第1条から順にすべての条文を概観してゆきます。
 憲法学習の中でとりわけ面白いのは何といっても人権規定とその解釈学でしょう。
 基本的人権の永久不可侵性や法の下の平等を謳うわが国憲法は、思想・良心の自由、信教や表現の自由、財産権不可侵等のいわゆる自由権、健康で文化的な最低限度の生活を保障する生存権、教育を受け、また勤労する権利等の社会権、そして参政権を中心に権利規定を設けています。
 これら従来の価値だけでなく、経済発展や都市化の影響、20世紀末から21世紀にかけての情報通信技術の向上とその普及による社会構造の変革は人権カタログを豊富化させ、新しい人権を誕生させてゆきます。その具体例として、環境権、自己責任と自己決定権、知る権利、情報アクセス権、プライバシー権、肖像権等があります。
 こうした権利義務の関係を判例、学説の概要から見てゆくとき、我々の身近な出来事の問題点の本質がふと見えてくることが多々あります。患者さんの権利や施術者の義務、医療過誤の法的問題に限らず、新聞等を教材とした最近の話題について、利用者の皆さんと話し合う時間を持つようにしています。時に情報障害ともいわれる視覚障害ですが、より広い視野に立ってこの社会への関心を持つようになっていただきたいと思います。




3 社会保障法
 社会保障法について、その歴史的経緯から解きほぐし社会保障の理念と目的を把握し、次に現在の社会保障法の概要を国家扶助、社会保険、社会福祉の各分野から障害をもつ人々に関係の深い内容について概観します。
 例年、利用者の関心が高いのは生活保護制度や公的年金制度です。紙幅の関係で授業内容のすべてをご紹介できませんが、ここでは障害者と人権について触れておきます。
 1990年代の社会保障構造改革、社会福祉基礎構造改革によって社会福祉の枠組みや福祉サービスが大きく変化したことはご承知の通りです。
 戦後の困窮時代に構築されたわが国の社会福祉は、サービス供給システムとして行政庁の職権で一方的に決定する措置制度が採用されました。そこに利用者本位、自己決定の尊重、選択の自由等の保障を目的に契約方式が導入され、2000年の介護保険法施行は実務上の契機となりました。
 契約自由の原則は近代私法の大原則の一つのはずでしたが、障害者に選択権、決定権、利用権を認めることはなかったのです。措置制度下のサービスの受け手の権利性は明確ではなく、単に行政処分に基づく反射的利益と考えられています。
 では、障害者の人権擁護だけが取り残されて来たかというと実はそうではありません。中学・高校時代に勉強した近代市民革命期以降の人権宣言等は、多くが非障害成人、特に男性の権利を保障するものでした。国際社会では、女性や児童の権利条約が20世紀後半に漸く用意、批准され、最後の人権問題ともいわれる障害者の権利条約は21世紀の今、わが国政府も批准に向けての準備を進めているところです。
 女性や児童、障害者や高齢者が社会の一員として対等で責任あるパートナーシップを実現できる経済社会はまだまだ未完成です。権利の行使には義務の履行が前提となることを意識しながら、障害者が保護や福祉の客体ではなく、権利の主体、社会の構成員として自尊心をもって行動することがますます大切になるでしょう。

最後に
 近時世界経済を席巻した新自由主義の思想、市場原理主義の過剰な勢いは一昨年秋の米国リーマン・ショック、昨年夏の衆院選後の政権交代により風向きが変わり始め、何かが変わった雰囲気が漂います。しかし、まだ先行きは見出せません。
 予見を許さない変化に富む時代だからこそ、歴史に学び、現代社会を謙虚に考えてゆく姿勢が大切です。その姿勢が、理療師として就業する後も自らを自律し、支える力になると思っています。

(文/太田浩之)



◎ あん摩マッサージ指圧基礎実習


1 はじめに
 あん摩マッサージ指圧基礎実習Ⅰとは、1年生が受ける「あん摩実技」の正式な科目名です。鍼や艾(もぐさ)を用いず、直接「手」を患者さんの身体に当てて行う「手技療法」のひとつです。


2 あん摩、マッサージ、指圧の違いとは
 あん摩は古代中国でおこり、奈良時代に日本に伝わりました。基本的には、全身的に、衣服の上から遠心性に(心臓から遠ざかるように)、撫でる、揉む、押す手技を進めていきます。
 マッサージはヨーロッパでおこり、明治時代に日本に輸入されました。基本的には、患部や局所に、直接皮膚の上から求心性に(心臓に向かって)、撫でる、揉む、震わせる手技を進めていきます。また、タルク(滑りやすくするパウダー)、オイル、クリーム等の滑剤を用いることもあります。
 指圧は、江戸時代に行われていた民間療法と、明治時代にアメリカから輸入された整体術等を組み合わせて、大正時代に体系化された日本独特のものです。基本的には、全身的に、衣服の上から、遠心性に手技を進めていきます。


3 あん摩の手技の数々
 基本手技には、軽擦(けいさつ)法(適度の力を加えて撫で擦る手技)、揉捏(じゅうねつ)法(筋(きん)を加圧または把握して縦横或いは輪状(りんじょう)に揉む手技)、圧迫法(適度な力を加えて押す手技)、震顫(しんせん)法(震わせその振動を伝える手技)、叩打(こうだ)法(手の種々な部分で速やかにリズミカルに叩く手技)、曲手(きょくで)(軽擦法や叩打法等の多くの手技を組み合わせた法)、運動法(生理的可動範囲内で動かす手技)の7つがあります。
 さらに、各基本手技には、手のどの部分を用いるかによって母指軽擦(ぼしけいさつ)、手掌軽擦(しゅしょうけいさつ)、2指揉捏(にしじゅうねつ)、手根揉捏(しゅこんじゅうねつ)、母指(ぼし)圧迫(あっぱく)、4指圧迫(ししあっぱく)、手掌震顫(しゅしょうしんせん)等の種類があります。また、揉捏(じゅうねつ)の中にも筋(きん)を直線的に揉む線状揉捏(せんじょうじゅうねつ)や、円を描くように揉む輪状揉捏(りんじょうじゅうねつ)、把握して揉む把握揉捏(はあくじゅうねつ)等の種類があります。1年生では、これらの手技に対応できる手をつくるのが第一の目標で、一通り、揉めるようになるには相応の努力が必要です。


教官の手の動きを手で確認する実技の授業


4 とにかく練習を

 「手当て」という言葉があります。私たちは身体のどこかに痛い部位があると無意識のうちに手をそこに持っていき、擦ったり揉んだりしています。あん摩は痛い部位を和らげるだけでなく、皮膚・筋肉・関節・消化器・血管・神経などの調子を整え、治療効果をあげることができます。
 実技の3K、即ち「基本」、「繰り返し」、「継続」をいつも肝に銘じ、時間があれば練習することです。リズム感と力の入れ具合を会得するには練習しかありません。
 そして、授業では「口をいくら動かしても、手は絶対に休ませないで動いていること」と伝えております。あん摩師は職人です。実技は、「習うより、慣れよ」です。誰にも負けない、誰よりも優れた職人になるのを目指して、手を鍛えていただきたいです。
 卒業生の皆さんも、このようにして技の研鑽を重ね、国家資格を得て、晴れて実社会で活躍されているのです。

5 おわりに―年間目標―
 理療教育のカリキュラムは、あはき師として必要なリベラル・アーツ(教養)と体力を養う基礎分野、西洋医学を中心とした専門基礎分野、そして東洋医学や技術を学ぶ専門分野の3つから構成されています。あん摩マッサージ指圧の実習は専門分野の中に位置づけられており、1年生は基礎実習、2年生は応用実習、3年生は外来患者さん(実技協力者)を対象とした臨床実習を学びます。このうち、あん摩マッサージ指圧基礎実習Ⅰは、年間で120時間、又は140時間を要しています。
 年間目標は、被術者(受け手)の姿勢が坐位、横臥位(おうがい)(横向き)、腹臥位(ふくがい)(うつ伏せ)の何れであっても対応できる基本的な術式を習得し、そして全身術式、すなわち一定の時間で全身を仕上げられるようになることです。

(文/南場榮二)


シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.5
自然科学概論/あん摩マッサージ指圧基礎実習Ⅱ

◎ 自然科学概論


1 はじめに
 自然科学概論の教育目標は「施術者として必要な諸分野の基礎的知識について学習し、物事を科学的に判断し、解決する能力と態度を習得する」です。
 私たちがより良く生き、次世代、ひいては人類の発展に結びつくことを願いつつ、自然界の真実を探求するのが、自然科学です。

2 自然科学概論の構成
 下図は、自然科学の構成を表します。この構成図を基に、他の科目との内容の重なりに配慮しながら、仮説検証の重要性を授業で説いています。


写真 自然科学の範囲

自然科学の範囲


3 授業風景
 授業では、原子の構造から、低分子、高分子化合物まで、又電解質と非電解質に関して、模型、実験、観察の方法を用いて理解を深めています。
 細胞の構造や細胞小器官の機能では、いろいろな陽イオンや陰イオンが関係しているので、原子はどのようにイオンになるのかを学びます。また、水や二酸化炭素などの簡単な分子からDNAまで、低分子が化学結合をしながら高分子化合物に合成されることを、理解していただく授業を展開しています。
 電流の流れをメロディーやモーターの回転で感じとったり、DVDなどのAV機器を用いることもあります。映像が見られない方にも、聞いて理解しやすい教材を選定することで、説明している状況をイメージできるようにしています。
 生物、地学、化学、物理、天文の各分野は互いに関係し合いながら科学的現象を作り上げています。各分野を関連させる必要があります。
 センターで学ばれる多くの方々は、社会経験が豊かです。その経験や体験を授業の中で周りの方々と共有できれば、お互いを刺激し合える授業になってゆくものと確信しています。
 たとえば、液体窒素を用いた実験では、バナナを凍らせて板に釘を打ちつけたり、液体窒素がマイナス196℃の世界を持つということの意味をお伝えしました。成人の方々であっても、実験中のドキドキする体験から得るものは大きいものです。水道工事の仕事や、飲食店でシャーベットを作る時に使った、又病院で治療に使った経験談も飛び出し、自然科学が生活と結びついていることを再確認いただいております。


金属のイオン化傾向の実験風景

 おわりに
 どの科目においても、社会で必要となる論理的な思考力と、思考の過程や結論を的確に表現できる能力、深い洞察力を身につけることが肝要だと思います。
 自然科学の学習も、諸分野と関連していることに配慮しながらできると良いなと思っています。

(文/本木宏恵 青島明男)

◎ あん摩マッサージ指圧基礎実習Ⅱ


1 マッサージとは
 基礎実習Ⅱは、マッサージ実技を習得する科目です。
 マッサージとお聞きになると、理髪店や美容院、あるいは健康ランドで体を揉みほぐすのを思われる方が多いのではないでしょうか。それもマッサージなのですが、ここでは、主に明治時代、ヨーロッパから紹介された手技療法を指しています。語源辞典によれば、マッサージは植民地支配をしていたフランス人がインドで使っていた言葉とされ、元はフランス語です。ヨーロッパに行かれて、現地の揉みほぐしの類を受けた皆さんは、どんなマッサージに出会われたでしょうか。たいていの場合、施術者はオイルを使い、皮膚に直接触れていたのではないでしょうか。その手技を日本の業界では軽く服を着た上で行う、伝統的な手技のあん摩と区別してマッサージと呼んでいます。


2 授業では
 現在のヨーロッパでは殆ど使われなくなったパウダー(ベビーパウダーのような物)を、滑りを良くするために用い、その容器を携えて授業を行っています。
 写真をご覧いただきますと、なんだか見たこと、受けたことのある光景ではないでしょうか。そう、足裏マッサージでよくやる手技です。足首から膝の方に向かって手を動かします。そうすると、酸素を手放した赤血球や乳酸のような老廃物を心臓に戻して体外への排泄を促します。授業ではこのような手技の訓練を腕にも背中にもします。
 さらに、節々の動きが鈍くなった場合に関節の窪みに施すマッサージや、顔の筋肉が動かなくなった場合の顔面マッサージのトレーニングも行っています。


3 実践で役に立つ施術を
 では、このような手技は、臨床の現場でどのように活用されてきたでしょう。例を紹介しますと、斜頚(先天的、後天的に首が曲がっていること)の赤ちゃんや、骨折後のむくみにマッサージが効果を挙げておりました。病院勤務のマッサージ師の中には、現在もその種の症状の改善を得意とする方々が、活躍されています。心臓の方に向かって水を流すという、この施術法の考え方は、きっと理教生の皆さんの役に立つはずです。
 今後、マッサージが他の医療分野に比べて効果を挙げる領域を拡げ、患者の皆さんのニーズに応える技として伝承されていくことが望まれています。
 今日も利用者の皆さんは切磋琢磨しながら、マッサージの授業に臨んでいます。

(文/松浦 武)


マッサージの基本手技の練習

シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.7

保健体育/あん摩マッサージ指圧実技Ⅲ

◎ 保健体育


1 保健体育とは
 保健体育の授業は、それぞれの競技の特性や楽しさを十分理解した上で、安全性を第一に考え、対象者の障害の状態に合わせた指導方法を組み立てて、実践しています。
 対象学年と時間数は、専門3年課程が1年生と2年生の週1時間、高等5年課程が1・2・4年生の週2時間、3年生と5年生の週1時間となっています。
 各クラスの方々の年齢は幅広く18歳から60歳代まで、様々な視力、視野を有した方々が一緒に授業を受けています。近年の傾向としては、高齢社会の影響からか、糖尿病性網膜症や緑内障によって視力を失っている方々が増加しています。
 授業内容は以下のとおりです。

授業内容

前期

後期

体力測定、ウォーキング、陸上、
水泳、筋力トレーニング
視覚障害者の球技 レクリエーションスポーツ トライスポーツ
サウンドテーブルテニス、フロアバレーボール、ゴールボール ターゲットバードゴルフ、
フリスビー
アーチェリー、吹き矢、
ビリヤード、タンデム自転車


2 授業では

 前期の授業では、これまで誰もが経験している身体運動を主に行っています。殆どの利用者が、見えづらくなってから体を動かしていないので、無理のない身体運動を心がけています。夏場は、水泳や水中ウォーキングなど、水中での身体運動を楽しんでいます。「何十年ぶりに泳いだ」という声もよく聞かれます。
 後期の授業では、視覚障害者の球技スポーツを行っています。サウンドテーブルテニスは、視覚に障害を受けた後のリハビリスポーツとして考案されました。音を聞き取って動作するという観点から、球技の導入種目として採用しています。レクリエーションスポーツやトライスポーツでは、一般に行われているスポーツの用具と方向や位置などを示す補助具を併用して、多くの種目にトライしています。

3 理療師を目指す皆さんには
 これから理療師を目指す皆さんには、「自らの身体を知る」、「身体の動かし方や楽しさを知る」をメインに、体育の授業を行って参ります。
 また、卒業後の余暇時間の過ごし方として、スポーツ等で仲間との時間や個々のリフレッシュに役立ててほしいと願っています。

(文/江黒 直樹)

水泳の授業風景


◎ あん摩マッサージ指圧基礎実技Ⅲ

1 はじめに
 あん摩マッサージ指圧基礎実技Ⅲは、いわゆる指圧実技のことです。指圧は、母指、手掌などを用いて押圧(おうあつ)することにより、疲れやコリをとって身体の調子を良くしたり、経穴などを押して疾病の治癒に役立てる施術です。
 指圧は、1920年頃に浪越徳次郎氏の手によってその原型が確立されたと言われています。「指圧の心は母心、押せば命の泉湧く」は、浪越氏の有名な言葉として知られています。「押す」動作によって、体を元気にする効果が得られることを表現しています。

2 垂直、持続、集中
 押圧操作の三原則に垂直、持続、集中があります。
 「垂直」は皮膚面に対して垂直に押すということです。これが意外と難しい。人の体は真っ平ではありません。しかし、垂直に押せないと患者さんに気持ちいいと思ってもらえないのです。たとえば、右手の母指(親指)で体のどこでも押してみて、圧を加えたまま、上下左右どの方向にでも動かしてみてください。皮膚が引っ張られてとても痛いですね。指圧というのは痛いものではなく「痛(いた)気持ちいい」ものです。そのためには、垂直に押すことがとても大事なのです。
 次に「持続」です。これは最初から最後まで同じ強さで押せるスタミナを持ちましょうということです。親御さんの肩を揉んでいて、数分で手が痛くなって揉むのを止めた記憶はありませんか。あん摩マッサージ指圧の施術時間はおよそ1時間です。少なくとも、これぐらいの時間は最後まで圧が弱くならずに押せるようにならなければいけません。
 最後に「集中」です。これは気持ちを集中させるという意味です。指圧では、治療を行いながら患者さんの体の状態を把握していきます。手掌(手のひら)や母指で患者さんの筋肉に硬結(硬くなっている所)や圧痛(押したときに他の部分より痛い所)がないかなど一回一回押しながら確認していきます。そして、患者さんも気づいていない身体の異変を見つけていきます。そのため、気持ちの集中が重要なのです。

3 授業では
 指圧実技の授業では、あん摩やマッサージとの違いを理解してから「母指圧迫」や「手掌圧迫」などの基本手技を練習します。母指や手掌に効率良く体重を乗せるためには姿勢が大事です。姿勢や動きというのは言葉ではなかなか伝わりにくいので、全盲の方には本当に手取り足取り指導します。繰り返し練習してスタミナをつけ、「持続」を身に付けていただきます。
 このように、指圧の基本がある程度できあがって、やっと指圧施術の流れに入っていきます。それに合わせて三原則の「垂直」と「集中」も学びます。利用者同士でペアを組み、垂直に押せているのかどうか、施術者役が筋の緊張があると感じたところを患者側の利用者はどう感じているかなどの意見を交換しつつ、施術の流れを覚えます。また、経絡経穴概論などの科目と関連させて、今押している経穴は腰痛に効くなどの臨床に役立つ情報も提供しています。
 最後に。あん摩マッサージ指圧は目ではなく指でみる技(わざ)です。そこに視覚障害というハンデは関係ありません。ぜひとも資格を取得し、自立へと役立てていただきたいと思います。

(文/岩本 稔)


シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.2

解剖学/東洋医学概論

◎ 解剖学


1 解剖学は人体の構造を学ぶ学問です
 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を目指す方は、人体諸器官の位置・形態・構造を理解し、これを施術に応用する能力と態度を修得することを目的として、解剖学を学びます。理療教育の学習は、この人体の構造を学ぶ解剖学が基礎となって広がっていきます。



2 問題数も授業数もナンバーワン
 あん摩鍼灸師の免許取得には、国家試験を受験しなければなりません。あマ指師試験が150問、鍼灸師試験が160問で、制限時間は各6時間です。両方受験する方は二日がかりとなります。
 解剖学はこのどちらの試験にも、約20問出題されます。また、解剖学は他の医学系科目の基礎となるため、授業数も多く、1年生の時間割にはほぼ毎日配当されています。



3 三次元的構造を理解する工夫
 皆さんは、初めて出かける場所の位置をどのように把握しますか。言葉や活字だけでは、なかなか理解できませんが、地図を見れば一目瞭然です。解剖学の教科書にも人体の構造を表す図や写真が多く載せられています。見えにくい利用者の皆さんは、この図を拡大読書器に大きく映したり、精密に作られた模型に触れながら学習しています。



4 授業の掟(おきて)
 構造や仕組みについて学習していると、つい「これは…」、「あっちが…」などと指示語を使ってしまいます。この指示語はセンターでは御法度です。こちらの示す指先や模型などの対象物が、視覚障害のある利用者の方には確認できにくいからです。模型を観察する際には、利用者の皆さんの手をとって一緒に触れながら学習しています。



写真 模型観察は、解剖学の授業には必須


5 他の科目との関連を大事にしています
 解剖学は、人体の隅々までを専門用語で学ぶ学問です。学名の暗記はよい成績に結びつきますが、単なる記憶力を強いる科目では退屈な科目となってしまいます。人体の仕組みの素晴らしさに気づき、また、諸器官の働きや病気との関連などにも触れながら授業を進めています。

6 リスク管理
 利用者の皆さんはやがてあん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師としてセンターを巣立っていきます。人体の構造を十分理解し、安全で事故のない施術者の育成に解剖学は欠くことのできない科目の一つになっています。

(文/木村 秀伯)



◎ 東洋医学概論

 あん摩や、鍼灸を使って患者さんを治療する時の根拠となる東洋医学を学習する科目です。

 専門課程では、1年生に東洋医学概論Ⅰが週2単位、2年生に東洋医学概論Ⅱが週3単位配当されています。同様に、高等課程では、1年生に週3単位、4年生に週3単位が配当されています。
 東洋医学は古代中国(漢代)の優れた民族医学が独自に発展したものです。そこには、「気」という独特のエネルギー概念があり、自然界や人体の様々な出来事は全て「気」の変動によると考えられています。
 その「気」が滞りなく人体の中を流れていれば人は健康で、ひとたび「気」の流れが悪くなると病気になると考えます。
 あん摩鍼灸は、その流れの悪くなった「気」の流れを回復させるため、「経穴(一般にツボと呼ばれる)」や気というエネルギーが人体を流れる通路である「経絡」に施術を施し、その人の自然治癒力を高め、健康を取り戻させようとします。
 しかし、そのためには東洋医学の考え方を十分に学習しておかねばなりません。東洋医学概論で学習する内容は大きく5つの項目です。

1 陰陽五行論
 古代中国の人々が自然界、森羅万象の全ての出来事が「気」の変動によって起こるとしており、その「気」の変動の法則を学びます。その法則は陰陽論と五行説というもので、それらの考え方を学ぶことは、自然界の一部である人体の「気」の流れの滞り、つまり病気の治療の基本となっています。

2 臓腑論(五臓六腑)
 久しぶりにお酒を飲むと、「五臓六腑にしみこむ」などと言うことがあります。五臓六腑とは、東洋医学が考える人体の内蔵のことで「臓腑」と呼ばれています。肝、心、脾、肺、腎など、現代医学の内臓と同じ漢字を使っていますが、東洋医学は人体の機能として捉えます。そしてそれぞれの臓腑の「気」の過不足によって身体に様々な影響を及ぼすことを学びます。



写真 拡大読書器には、「五行の色体(しきたい)表」


3 病因論
 どうして人体の「気」の流れが滞るのか、すなわち、なぜ病気になるのかを学びます。東洋医学では自然の気象因子が人体に悪影響を及ぼすだけではなく、ストレスやライフスタイルの乱れなども病因(病気の原因)になると考えます。
 つまり、患者さんの訴える症状だけでなく、その患者さんの内面やライフスタイル全体を観察する姿勢を学ぶのです。

4 病証論
 いわゆる「病の見立て」のことです。東洋医学では、「証(しょう)を立てる」といいます。「証」とは、病の本質を示し、治療の方針とするものです。患者さんの体質や身体の様々な症状を総合的なパターン(症候群)として証を立てます。それが出来れば、そのまま治療法が導き出せます。

5 四診法(診察法)
 東洋医学では診察法も現代医学とは違って、脉(みゃく)や舌を診て患者さんの体力を窺い、臓腑の状態を診ます。独特です。また、患者さんの声色も診察の対象となります。この東洋医学独特の診察法を「四診法」と言い、それにより証を正確に立てられるように学びます。
 このように東洋医学概論はあん摩はりきゅう師として、必要な東洋医学の専門知識を身につける為の重要な科目なのです。

(文/小泉 貴)



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.4
生理学/経絡経穴概論

◎ 生理学


1 生命の理(ことわり)
 基礎医学分野に該当する生理学は、広辞苑によりますと、「生体またはその器官・細胞などの機能を研究する学問である」と明記されています。こう書くと、難解なイメージの学問である感じをお持ちになると思います。
 少し言い換えますと、「なぜ生きているのか」という大きな疑問から「恋をすると胸がキュンとなるのはなぜ」というような疑問まで解き明かしてくれる学問が生理学です。すると、とても興味深い学問というイメージになるのではないでしょうか。つまり、生理学とは生きている理(ことわり)を学ぶ学問なのです。


2 調べられるものをいちいち覚える必要などない
 ノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者であるアインシュタイン博士の言葉です。
 よく利用者の方に、「どうやって覚えたらいいですか」と質問を受けることがあります。生理学の教科書は分厚く、内容は多岐に亘っています。実際問題として、国家試験にパスするには莫大な量の暗記を必要とするのも確かです。多くの方は、どうしても「暗記」が重点事項になり、「理解」は後回しになりがちです。私たち教官も、どうしても詰め込み式の教育になりがちです。
 生理学は単語を覚えるのではなく、「理」を理解する学問です。理解ができれば、それに付随する専門用語はやみくもに詰め込まなくとも大丈夫という解釈が成り立つのです。自己矛盾を感じます。だからこそ、博士の言葉を強く意識するのでしょう。学問に王道なし。


3 どのように記憶すればよいのか
 しかし、回り道であったとしても最短ルートは存在する筈です。意外にも、利用者の方が生理学の「理の理解」のステージに一歩でも早く進めるように、国家試験に必要な知識を効率的に「覚える」方法を見出す努力は、私たちの自己矛盾を解消する上でも重要なのです。
 とは申せ、科目内容を覚えるための作業方法は十人十色なので容易ではありません。私たちの経験則から記憶の方法を紹介することもできますが、それが利用者の方に適用するかどうかは正直なところ分かりません。
 そこで、現在の試みとして、大脳生理学的にみて最も合理的な記憶術、たとえば「暗記してからランニングすると、記憶力は上がる」などの研究報告を適宜紹介しています。これは記憶のベースとなる脳の土台作りですので、各人に適した学習方法と組合せていくことによって、より効率的になるのではないかと考えています。


4 生理学という山の頂に
 生理学担当教官は、私を含めて5名です。
 日々の授業では、利用者の方々の眼の状況に応じられるよう、分かりやすく、イメージしやすい教材作成を心がけています。加えて、将来医療現場で活用できる知識も網羅できるよう、医学の最新情報を織り込むべく、担当者間で連携中です。
 そして、当センターで学ぶ皆さんには、生理学本来の醍醐味である「どうしてなんだろう」 という、生きている「理」に対する疑問を紐解く面白さを学ぶところまで到達していただきたいと、強く願っております。

(文/森 一也)


写真 生理学の授業風景



◎ 経絡経穴概論


1 はじめに
 「経絡経穴概論」は、簡単に申しますと、「ツボ」に関する科目です。「ツボを押える」と言うように、患者さんの治療に必要不可欠な知識を勉強する科目です。
2 ツボとは
 「ツボ」すなわち経穴は、手指や鍼や灸を施す刺激点であり、痛みなどの反応を診る診察点です。数年前に世界保健機関によって名称や場所が標準化され、現在361を主要な経穴としています。経穴を連ねる通り道を「経絡(けいらく)」と言い、12の「経脈(けいみゃく)」に分類されます。また、経絡を「気血(きけつ)」という一種のエネルギーが通っています。
3 科目の概要
 さて、実際の授業では、先ず、経穴、経絡の概念と、その性質を理解します。ここでは「陰陽五行(いんようごぎょう)」という東洋思想に特有な考え方が前提となります。生体を含めた万物は陰陽五行に分けられ、経絡もその分類により区別されます。いわゆる五臓六腑と言われる内臓も、陰に属する六臓「肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓、心包」と陽に属する六腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)の12に分けられています。主な経穴は、このいずれかの臓腑に関連する12の経脈に属しており、それぞれの経脈は左右の手足を通っています。そのため12の経脈は「手の肺経(はいけい)」、「足の胃経(いけい)」などのように手足と臓腑の名前がついています。現在も、そのしくみは未知ですが、手の肺経にある経穴に施術をして呼吸を楽にする、足の胃経にある経穴に施術をしてお腹の調子が整った、という経験は数多く見られます。
 次に、気血の流れる順序である「流注(るちゅう)」、一つ一つの経穴の名称や位置、その取り方を学習します。たとえば、芭蕉『奥の細道』の「三里に灸すゆるより」の三里は「足三里」で、「足の胃経」の経穴です。体表上の位置は、「犢鼻(とくび)と解渓(かいけい)を結ぶ線上で、犢鼻穴の下3寸」と説明されています。「犢鼻」と「解渓」という二つの経穴の距離は骨度法という特別な基準により1尺6寸と定められており、その長さを四等分した長さを4寸とし、その四分の三に「足三里」を定めています。
 参考までに、膝の「犢鼻」の位置は「膝蓋靱帯外方の陥凹部」でいわゆる膝のお皿(膝蓋骨)の下にある膝を伸ばすとできる外側のくぼみです。また足首の「解渓」は「足関節前面中央の陥凹部で、長母指伸筋と長指伸筋の間」です。つま先を上げた時、足首前面にできる3本の筋の、最も外側と中央の筋の間です。
 授業では、利用者さん同士で経穴を探し、ここという箇所を押さえてどんな感じかを尋ね合い、赤や黄色の丸いシールを貼って位置を確認します。また、今年度からは経穴に専用のペンを当てると音声支援が受けられる経穴人形を導入して活用しております。
4 おわりに
 この科目の学習を通じ、東洋医学の素晴らしさを、身をもって体験していただければ幸いです。

(文/飯塚 尚人)

写真 足三里を理教生と経穴人形で確認



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.12

◎ あん摩マッサージ指圧理論はりきゅう理論

●温故知新

 人類は、太古の昔から身体に痛みや痺れなどの異常を感じた時、その場所に本能的に手を押し当てて撫でさすったり、暖めて冷えを取ることによって症状が和らぐことを知っていました。あん摩マッサージ指圧鍼灸(以下「あはき」と略す)が成立するずっと以前から経験的に外から生体に適度な刺激を加えることで、内なる知性が喚起され、結果的に回復メカニズムが機能して、苦痛の解消に役立つことが知られていたのです。やがてこのことは、学問の進歩、発展とともに体系化され、古代九鍼などの治療器具の飛躍的進歩もあって「あはき」の標準的治療として、広く行なわれるようになりました。このようにして、古くから、多くの人々の病苦からの解放に「あはき」が貢献してきたのです。あん摩マッサージ指圧理論、はりきゅう理論は、「あはき」の作用メカニズムに関して、まず先達の科学的研究について学ぶとともに、更なる医学的可能性を探求し、現代医療との調和を図る態度を養うことを目的とする科目です。従って、これらの科目の学習には、解剖学、生理学、病理学、衛生学などの基礎医学の知識が必須となります。

●痛みを和らげるオピオイドとは

 鍼の効果というと皆さんは、まず、何をイメージするでしょうか。鍼の重要な効果の一つに鎮痛があります。多くの研究者が鍼による鎮痛機構の解明に取り組み、多数の仮説が提唱されました。中でもオピオイドによる鎮痛が有名です。オピオイドとは、脳内麻薬のことです。鍼刺激によって脳内にモルヒネ様物質が産生され、下行性神経系を介して疼痛抑制に関与するというものです。オピオイドは、鎮痛に関わるだけでなく、その効果発現によって幸せな気分をもたらすのです。すばらしい鍼に巡りあって毎日を楽しく、健やかに過ごしたいものです。

(写真)古代九鍼

●あん摩マッサージ指圧鍼灸の応用

 現在、病院、産業分野、高齢者施設、スポーツ施設、一般家庭など多くの場所で「あはき」が人々の保健、健康増進に活用されています。医療の重要な一角を担っているのです。この流れをいっそう定着、発展させるには、「あはき」治療の特性をよく知り、治療の適否について正確に鑑別できる能力を養うことが重要になります。また、治療の標準化やリスク管理および衛生管理についても、よりきめ細かな知識が必要となります。あん摩マッサージ指圧理論、はりきゅう理論では、これらについても系統的に学習します。

(後書き)

 理論科目というと何か難解な固いイメージを持たれるかもしれません。また、国試の出題科目にもなっていますので、知識の詰め込みに陥る危険性も否定できません。授業では、できるだけあはき実技や臨床実習にも触れながら、利用者が興味を持てるように工夫しています。また、利用者が理解しやすいように、教科書に記載されている専門用語を中心に極力、漢字の説明をするよう心がけています。理論と実技は、車の両輪のようなもので、どちらが欠けても臨床家としてうまく力を発揮できないと思います。利用者が、自ら考え、判断して治療ができる自立した施術者に成長していくことを切に願う日々です。

(文/丸山 隆司)



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.14

◎ 東洋医学臨床論

1 はじめに 受験学年になると今まで学んだ科目の知識を実際の患者さんに応用するために総合的観点から知識を集約する科目があります。東洋医学臨床論と言います。按摩・マッサージ・指圧の治療法を中心に書いた教科は「保健理療臨床論」、鍼灸の治療法を中心に書いた教科は「理療臨床論」と言いますが、合わせて「東洋医学臨床論」と言います。

 解剖学で人体の構造を、生理学で人体の機能を、病理学で異常所見を、臨床医学で病気の発生機序や症状を学び、また、東洋医学で現象を検討してきました。東洋医学臨床論はそれらをもとに私たちが身につけた按摩・マッサージ・指圧、鍼、灸で治療できるかを検討し、やってきた患者さんの症状が緊急を要するものや重症のものは専門医療機関に紹介したり、私たちの力で有効と思われるものは精一杯治るようにお手伝いします。

 例えば、東洋医学では食欲不振を三つの原因から考えます。胃腸の冷えで起きる場合、胃下垂があるために起きる場合、胃に余分な水分がたまって起きる場合です。もちろん、食欲不振はかぜ、精神的ストレス、肝臓病、腎臓病などでも起きます。肝臓病や腎臓病によるものかどうかを判断する要点を整理するのが東洋医学臨床論です。

が、その場合は原因となる病気の治療を優先します。

 胃腸の冷えによる食欲不振は、冷たいビールの飲み過ぎ、生ものの食べ過ぎなどで胃腸が冷えると、胃腸の機能が低下したものです。また、足腰の冷えがだんだん胃に及ぶものもあります。このような場合は温かいものを摂ったり、手足や腹部を温めたりすることで早く治ります。

 つぼで治療する場合、足三里、脾兪、胃兪などを指圧か灸で刺激します。足三里に灸が特におすすめです。

 患者さんには脂っこいものを避け、原因に合わせダイコンを進めたり、繊維質の多い食べ物を勧めたりする生活指導についても学ぶものが東洋医学臨床論です。

(文/杉本 龍亮)



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.7

◎ 病理学概論

1 はじめに

 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格取得のために必要な科目に病理学概論という科目があります。

 病理学とは、疾病の原因を追究し、疾病の成り立ち・症状・経過・死の原因などを究明する学問です。端的に言うと、病の理(ことわり)、つまりは病気の原理を知る学問であります。



2 病理学の立ち位置
 正常な人体の構造や働きを学ぶ基礎科目、病気の名称、症状および治療法などを学ぶ応用科目が必修科目としてありますが、病理学は、基礎科目と応用科目の架け橋的な立ち位置であると思ってもらえば良いと思います。


3 分類することの大切さ
 病理学では、正確な病態把握をするために、様々な観点から病気の種類、原因、症状を分類するという前提があります。例え、ある病気があったとします。それが、産まれる前に生じたものなのか、あるいは、産まれてから生じたものなのか。いわゆる先天性か後天性かというように。すると、病理学は病気の分類をすればいいという理屈になってしまうのですが、残念ながらそうではありません。しかし、分類ができるということは、つまりその病気の本質を理解しているからこそ出来るという高度な技術なのです。このことが病理学という科目を敬遠してしまう利用者の方が多い一因になっているものと思われます。


4 終わりに
 病理学は直接、我々の臨床現場などにおいて残念ながらあまり必要を感じない科目かもしれませんが、病気で苦しむ患者さんを診る我々にとっては、その苦しみの根源を知ることは必要不可欠であると考え、病の理に迫れるよう授業を展開しています。

(文/岩本 稔)



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.6

衛生学・公衆衛生学/ 臨床取穴学

◎ 衛生学・公衆衛生学

1 衛生学・公衆衛生学とは

 「衛生学・公衆衛生学」を簡単に申しますと、生活をとりまく環境や保健について学ぶ学問です。以下、衛生学と称してご紹介します。
 歴史としては、19世紀のヨーロッパで、産業革命後の都市化による住環境の悪化などによる伝染病(感染症)の蔓延などに対応するなかで生まれてきた概念とされています。

 難しい学問だと思われがちなのですが、実は様々なところで日常的に実践されているものも多く、こんなことも衛生学なのだと思うことも多いのです。
 例えば、幼稚園や学校など、教育の場でも手を洗うように指導されています。食事の前や帰宅時に、もしくは風邪やインフルエンザ、食中毒の予防で手を洗うこと、そこで使われる水道水は様々な工程を経ていつもキレイであること、また、家庭で出たゴミがきちんと処理されていること…。周りを見渡せば、そこに衛生学があると言ってもいいですし、衛生学に囲まれて生活していると言っても過言ではない気がします。
 そんな親しみの深いものから、もっと細かい微生物のお話まで、衛生学は広く深い学問であるといえます。
 先にも申しましたとおり、衛生学は日常生活で活躍していますが、医療の現場では特に活躍しています。病院や施術所には、様々な病気の方が多数訪れるにも関わらず、その場所から感染が広がらないということは、衛生学の考えに基づいた予防策や取り組みがなされているからと言えるでしょう。
 医療に携わる者として、「医療の現場」を「病気の感染を広げる場」にしてしまってはなりません。我々、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師も同様に、この学問を学び、目に見えない病原体に対しての対抗手段を獲得する必要があります。

2 授業では

 医療技術や科学技術の進歩とともに、疾病対策の法律や統計など、衛生学で学ぶ内容は毎年新しい情報に変わっていきます。ですから、日々更新されていく、新しい情報に気をつけながら、またニュースなどで取り上げられている衛生学に関わる時事の情報なども交えながら講義をおこなっています。
 消毒と病原体についての内容は、特に力を入れて説明しています。病原体と言っても、ウイルス・細菌・真菌・原虫など多くの種類があり、感染経路も様々です。それらに対抗する消毒薬の種類もたくさんあります。医療人は感染を予防するために、病原体の特徴と、どの消毒薬にはどのような効果があるのかを知っておく必要があります。また、感染の道筋である感染経路を知ることも感染予防には重要です。つまり、感染経路を知ることにより、感染の道筋を途中で絶つことが可能となるわけです。
 衛生学で学ぶことは、将来、自らが臨床を行う際に、患者さんの安全を守るだけでなく、自らを守ることに繋がっています。授業はそれを意識して行っています。
 ここで学んだことが、患者さんに接する際の様々な場面での「清潔への意識」に繋がっていくようにと、切に願っています。

(文/波多野 朝香)


感染症の分類は語呂で覚えるのがコツ



◎ 臨床取穴学


 臨床取穴学は専門分野の総合領域に配当されている科目です。この総合領域とは、伝統医療として経験が重視される理療施術の教育において、様々な学習を総合的に捉え充実させるために設定されたもので、各学校がそれぞれの特色を発揮して教育を展開することとしています。
 臨床取穴学は、この教育目標に則って当センター独自に設定された学科科目で、視覚障害者が適切かつ効果的な施術を行うために配当された科目です。

2 取穴、選穴、配穴

 取穴というのは、被施術者の体表上において目的の場所を定めることをいいます。実技や臨床の場面では、「ツボを取る」といって、施術場所を手指で探り施術を行います。
 この取穴を的確に行うためには、主に実技や臨床の中で実習により体得されるため、臨床取穴学では実習と併せて授業を行い、方法論や手順などを含めて学習しています。
 しかし、単に取穴をすることだけが臨床取穴学の目的ではありません。施術を行うに当たっては、まず一定の論拠に基づいて施術効果があるツボを選定することから始めます。これを選穴といいます。
 この選穴によって効果的なツボが抽出されるわけですが、ツボにはそれぞれ特徴があり、併せて使用することで相乗効果を示すものもあれば、逆に効果を相殺してしまう組合せもあります。また、施術は体全体のバランスも考慮するため、いくら効果的なツボであっても、それらが同じような場所に限定されていると全体を調整できません。
 このことから、選穴されたツボ同士の関係性やバランスを考慮し、ツボの組合せ(処方)を決定する必要があります。これを配穴といいます。
 このように、選穴や配穴の方法を理解することによって最適な処方を決定し、処方されたツボを的確に取穴するまでを学習するのが臨床取穴学です。

3 臨床取穴の意義

 ツボというのは、理療臨床の施術を行う部位のことで、うまくツボに当たると抜群の効果を示してくれます。このツボの標準部位については、2006年にWHOによって制定されており、経絡経穴概論で学習することになります。
 しかし臨床における取穴では、教科書のままに標準部位を取穴するのではなく、被施術者個々の状況にあわせて体表を触察し、施術者の手指感覚によって反応を伺い変化を捉えることが重要となります。
 昭和のきゅう師で名人といわれた深谷伊三郎氏は、「成書の経穴部位は方角を示すのみ」と指摘しており、臨床取穴を行うには、視覚的概念によって教科書的な取穴を行うよりも、経験的に手指感覚によって反応・変化を探るほうが効果的であると解説しています。
 このことは視覚障害者にとって有効な手法であり、臨床において活用することができるものです。臨床取穴学では、標準部位を定規で測ったように取穴するのではなく、手指感覚によってツボを探り、スムーズに施術することができるように訓練しています。

(文/谷口 勝)


臨床取穴を応用した施灸の実習


シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.13

◎ 臨床医学総論

 理療教育の専門、高等課程の2学年に週3時間配当される「臨床医学総論」は、言葉通り臨床医学全体をまとめた科目です。
 この科目は臨床医学の現場において、患者さんをどのように診察しているかを学習するかに、多くの時間を割いており、かつては「診察概論」という名称でした。
 もちろん、医師になるわけではないのですが、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師と言えども現代医学の知識は、医療従事者として必要です。  まず、医療面接(問診)、視診、打診、聴診、触診、測定(身体計測など)、バイタルサイン、神経系の検査、運動機能検査を学びます。患者さんへの態度や医療従事者としての心構えなどは、最初の医療面接(問診)でしっかりと学びます。
 次に、臨床検査法について学習します。ここでは一般検査や生化学検査について、尿・便・血液検査を中心に学んでいきます。例えば健康診断の結果にある血糖値とか、コレステロール値、肝機能検査などについての知識です。
 また、レントゲン検査やMRI検査などの画像診断の概要についても学びます。それから、血圧の測り方、反射検査、関節の可動域の検査などの実技も授業の中に取り入れています。また、私たちは、レントゲン検査などは出来ませんから、徒手による検査法を学び、肩こりとか腰痛を起こしている原因についてのおおよその目安が付けられるような技術も身に付けます。そして、薬物療法、食事療法、理学療法などの治療法についても学びます。この科目の最後には、臨床心理もあり、患者の心理、カウンセリング、心理療法についても学びます。
 現代医学についての知識が充分に備わっているということは、患者さんにとっても心強いこととなるでしょう。
 このようにあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師も現代医学についてもしっかりと学習しているのです。

(文/小泉 貴)



シリーズ 理療教育の科目紹介 Vol.17

◎ リハビリテーション医学


 高齢社会の進展に伴い、リハビリテーションの知識や技術だけでなく、その考え方を学ぶ必要性や重要性は高まっています。特に障害者として鍼灸マッサージ師の資格を取得し、就労を目指す理療教育の利用者にとって意義のある科目と言えます。授業の初めには、鍼灸マッサージ師として学習するリハビリテーション医学の目標や学習内容、授業の進め方に加え、我々視覚障害者が当事者として、また就労にとっても重要な学習になっています。この数年の就労先として、従来からの特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の機能訓練指導員や、健康保険を利用した「訪問マッサージ」への就労が増加しています。

 授業では、リハビリテーションの理念や国際生活機能分類の考え方、医学的リハビリテーションの概要、運動学概論を前半に学習します。後半では、脳血管障害などの主な疾患別のリハビリテーションを学習します。授業では教室での座学に加え、実技室で機能訓練の基本実技などの指導を行います。特に毎年、当センター病院のリハビリテーション部の協力を得て、病院見学実習を実施しています。利用者が互いに片麻痺患者役や、対応する鍼灸マッサージ師となり、車いす操作、起居、ベッドへの移乗などの介助、平行棒や杖を用いた歩行訓練を実際に体験します。座学では得られない貴重な体験として、重要な実習です。病院見学実習で得た体験は、その後の学習にとどまらず、臨床実習や就職活動にも役立っています。このように資格取得に必要な一科目にとどまらず、今後の就労や施術、日常生活にも重要な科目が「リハビリテーション医学」になります。

(文/飯塚 尚人)



シリーズ 理療教育の科目紹介 Vol.15

◎ 臨床医学各論


 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を志す人は、患者さんを治療する上で必要な病気の知識を学びます。その中でも「臨床医学各論」は、現代医学の系統別疾患の診断及び治療に関する基礎的知識について学習し、適切な施術を行う能力を養うための科目です。臨床医学から、感染症、消化器疾患、肝・胆・膵疾患、呼吸器疾患、腎・尿器疾患、内分泌疾患、代謝・栄養疾患、循環器疾患、血液・造血器疾患、リウマチ性疾患・膠原病など幅広い範囲を学びます。今まで学習した、解剖学、生理学、病理学、臨床医学総論、理療臨床医学各論などの現代医学的な基礎的知識が必要になります。
 授業内容は、疾患名、概念、病態、症状、検査方法、治療および予後と項目が多く、豊富な知識が必要となります。しかしながら、患者さんを目の前にすると教科書をただ覚えただけの知識では、太刀打ちできません。そのため、病態把握や患者さんの体験談を紹介することで、臨床の知識に活用できるように工夫しています。また、指導上気をつけている点として、検査や治療法などは日進月歩で進化するため、教科書の情報が必ずしも新しいものではありません。正しい情報を教授するために最新の情報を取り入れるように努力しています。
 病気を学習するときには、身体の正常な状態の知識が必要になります。そのため、利用者の方々は、解剖学や生理学の知識などを復習して授業に臨んでいます。また、授業が進むにつれて、知人や家族の病気のことや自分の病気など、病気を身近に感じることで、より熱心に取り組まれるようになります。
 知識は施術者のためだけではなく、患者さんのためにもなります。病気の知識を増やすことで、あん摩マッサージ指圧、鍼灸治療の限界を見極めることは、施術対象でない患者様に、適切な治療を受けるための医療機関への受診を勧めることにも繋がります。

(文米田 裕和)


シリーズ理療教育の科目紹介 Vol.18

◎ 医療概論


 私たちは、病院や診療所に行くと医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師に出会います。歯科医院では、歯科医師や歯科衛生士に、高齢者施設では介護福祉士や社会福祉士など、身近な場所で様々な医療従事者に出会っています。

 医療概論では、施術者として必要な医療制度及び医療従事者の倫理の基礎的知識について学習し、これを施術に応用する能力と態度を修得することを目標としており、医学・医療とは何か、生命とは何か、医療の倫理とは何か、さらには最新の医療や医療制度などを学んでいくことによって、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が、医療の現状を踏まえながら、地域住民の健康の維持・増進に資するための基礎的な事項を学習する科目となっています。
 授業の内容は、医療の倫理、医療経済の動向、医療従事者の現状、高齢者医療や介護サービス、医療保障など多岐にわたります。
 具体的な内容を紹介しますと、医療の倫理では、「ヒポクラテスの誓い」から医療の担い手としてどうあるべきか、施術者として地域住民のQOLの向上にどのように関われるのかという医療従事者としての意識を高めつつ、インフォームドコンセントや守秘義務などの重要性について理解を深めていきます。
また、医療経済では、国民医療費から医療保険制度、高齢化社会や介護問題について学習し、さらに高齢者医療や介護サービスでは、高齢者医療制度や介護保険制度とともに、高齢者施設であん摩マッサージ指圧師が機能訓練指導員としてどのような役割を担えるかを考えていきます。
 近年の医療進歩は、素晴らしいものがあります。この中で、あはき師が、医療従事者として活躍していくためには医療に係る基礎力を身につけておかなければなりませんが、このことを達成するための科目が医療概論であるといえるのです。

(文/浮田 正貴)

写真 医療概論の講義の様子





シリーズ理療教育の科目紹介 Vol.21

◎ 関係法規

 社会における様々な制度は、憲法や法律を基にして作られています。我が国においては、憲法は一つですが、法律は約2 千、その他政令や省令を含む法令の総数は約8千といわれています。法令の成り立ちや内容について学ぶことは、社会の仕組みを知ることになるといえます。

 あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうを職業として行う場合には免許が必要です。法律(以下「あはき法」、注)で、国がこの職業に従事することを証明する国家資格だからです。
 関係法規は、国家試験受験科目の一つで、3年時に配当されています。週当たり1時間の授業で、施術者として必要な業務に関係する法令と、法に則した業務を行う能力と姿勢等を修得させることを目標に、あはき法から医療や社会福祉に関する法律について幅広く学びます。法律の原文は、独特な言い回しや難しい表現がありますが、成り立ちや背景、意図に気をつけながら内容をみていきます。
 あはき法では、免許取得の要件、業務の範囲、施術所の要件、罰則などを学びます。例えば、免許の取得要件では、学校・養成施設を卒業し、国家試験合格で取得でなく、さらに免許申請が必要なこと、施術所の看板に「マッサージ60分4 千円」、「腰痛に効果あり」といった内容は、法律違反で30 万円以下の罰金になり、法律で広告できる内容が規定されていることを理解していきます。法律があることは、法律内で適法に行うことが義務になり、一方で法律の規制を受けるということになります。もし法律に違反し、施術者として相応しくないと認められると、免許が取り消される場合があります。そのためにも法律を学ぶ必要があります。

注:正式名 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

(文/池田 和久)




シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.6

◎ 理療臨床医学各論


1 はじめに
 あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師を目指す人は患者さんの施術をする上で病気の知識を学ぶ必要があります。「理療臨床医学各論」は、施術者として必要な現代医学の立場からみた系統別疾患の診断及び治療に関する基礎的知識について学び、施術者として適切かつ効果的に施術を行う能力と態度を身に付けるための科目です。


2 理療臨床医学各論とは?
 「理療」という言葉は、あんま・マッサージ・指圧、はり、きゅうに特化した言葉として用いられています。「理療臨床医学各論」は、臨床医学の中から特に、あんま・マッサージ・指圧、はり、きゅうを施術する上で遭遇しやすい整形外科疾患、神経系疾患を中心に学ぶ科目として2年時に3単位配当されています。


3 授業の内容
 内容は、疾患名、概念、病態、症状、検査方法、治療および予後と項目が多く、豊富な知識が必要となります。しかしながら、いざ患者さんの治療を始めるにあたって教科書の知識だけでは到底太刀打ちできません。それを克服すべく、時には病態把握や治療の紹介を兼ねて実習を取り入れることで、机上の知識を臨床の知識に置き換える方策をとっています。また、指導上気をつけなければならない点として、医学は日進月歩で進化するため、教科書の情報が必ずしも新しいものではありません。正しい情報を教授するために教官自身も最新の情報を取り入れるように努力しているところでもあります。


4 他の科目との連携
 病気のことを知るためには解剖学や生理学の知識など、利用者は1年時に得た知識を活用して授業に望んでいます。基礎科目が苦手な利用者にとって最初は難しいと感じているようですが、授業に慣れるにつれて、「あ、この疾患知ってる」、「自分はこの病気です。」などと身近に感じることも多々見られた結果、熱心に取り組むようになり、1年時の基礎科目との関連性が生まれ、改めて基礎科目の重要性を感じる方も多くなります。


5 知識は施術者のためだけではなく、患者さんのためである
 個々の病気に対する知識を増やすことは、施術者自身の技術向上につながることは言うまでもありません。実は、知識を増やすことは、理療技術の限界を見極めることにもなります。このことは、理療施術対象外の患者さんに対して、適切な治療を行うための専門の医療機関の受診を勧めることができることにも繋がります。敢えて自分自身の限界を知った上で治療を行う事こそが、患者さんとの信頼を築く一つの大きな手段になっているといっても過言ではありません。国家試験合格のためには、寸暇も惜しんで莫大な病気の知識を学ばなければなりません。利用者達は患者さんにとってかけがえのない施術者になるべく日々真摯に勉学に取り組んでいます。

(文/高橋 忠庸)

写真 授業風景



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.14

◎ 東洋医学臨床論

 受験学年になると今まで学んだ科目の知識を実際の患者さんに応用するために総合的観点から知識を集約する科目があります。東洋医学臨床論と言います。按摩・マッサージ・指圧の治療法を中心に書いた教科は「保健理療臨床論」、鍼灸の治療法を中心に書いた教科は「理療臨床論」と言いますが、合わせて「東洋医学臨床論」と言います。

 解剖学で人体の構造を、生理学で人体の機能を、病理学で異常所見を、臨床医学で病気の発生機序や症状を学び、また、東洋医学で現象を検討してきました。東洋医学臨床論はそれらをもとに私たちが身につけた按摩・マッサージ・指圧、鍼、灸で治療できるかを検討し、やってきた患者さんの症状が緊急を要するものや重症のものは専門医療機関に紹介したり、私たちの力で有効と思われるものは精一杯治るようにお手伝いします。

 例えば、東洋医学では食欲不振を三つの原因から考えます。胃腸の冷えで起きる場合、胃下垂があるために起きる場合、胃に余分な水分がたまって起きる場合です。もちろん、食欲不振はかぜ、精神的ストレス、肝臓病、腎臓病などでも起きます。肝臓病や腎臓病によるものかどうかを判断する要点を整理するのが東洋医学臨床論です。

が、その場合は原因となる病気の治療を優先します。

 胃腸の冷えによる食欲不振は、冷たいビールの飲み過ぎ、生ものの食べ過ぎなどで胃腸が冷えると、胃腸の機能が低下したものです。また、足腰の冷えがだんだん胃に及ぶものもあります。このような場合は温かいものを摂ったり、手足や腹部を温めたりすることで早く治ります。

 つぼで治療する場合、足三里、脾兪、胃兪などを指圧か灸で刺激します。足三里に灸が特におすすめです。

 患者さんには脂っこいものを避け、原因に合わせダイコンを進めたり、繊維質の多い食べ物を勧めたりする生活指導についても学ぶものが東洋医学臨床論です。


(文/杉本 龍亮)



シリーズ 理療教育の科目紹介 Vol.19

◎ 地域理療と理療経営


 理療とは聞きなれない言葉ですが、視覚障害者の間で「鍼、灸、あん摩・マッサージ・指圧」を意味する用語として親しまれています。地域理療と理療経営では、鍼、灸、あん摩・マッサージ・指圧師が地域社会で開業、就労するのに必要な知識を学び、さらに治療院経営に関する知識を修得する科目です。

 近年は、障害者雇用の普及に伴い就労の場が広がり、ほとんどの卒業生が就職する傾向にあることから、授業では進路先に関する知識や現況を説明しています。

 就職先としては、特別養護老人ホームなどの施設やヘルスキーパー(企業内理療師)としての一般企業への就労のほか、訪問によるマッサージの求人が多くなっています。

 また、開業や就労の具体的な場面から、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に関係する種々の法律や国民皆保険制度、介護保険制度から、理療の位置付けを学習します。

 更に、経営に関しては、資金調達から納税に至る会計知識を修得します。特に、近年健康保険の療養費を利用した施術が広まっています。ほとんどの利用者が、鍼灸あん摩マッサージ指圧を健康保険で受けられることは知っていても、どんな場合に適応となるか、健康保険で請求できる施術料はいくらか、どんな手続きが必要かは知りません。この機会に正確に理解して、就労や開業のためだけでなく、一般の方々への理解を広めるのにも役立ててほしいと願っています。

 今後も授業を通じて理療の果たす役割を理解し、開業や就労を通じて地域社会の健康づくりに貢献して参ります。

(文/飯塚 尚人)




シリーズ 理療教育の科目紹介 Vol.16

◎ あん摩マッサージ指圧応用実習


 この科目は、2年次に週4時間配当されている、あん摩、マッサージ、指圧といった手技療法を習得する実技科目です。
  あん摩(按摩)の按は「おさえる」、摩は「なでる」を意味します。古代中国で生まれ、奈良時代に日本へ伝わりました。気血や経絡の変調を調整する手技療法で、衣服の上から遠心性(体の中心から手足に向かって)に施術するのが特徴です。
  マッサージ(Massage)という言葉のもとはフランス語ですが、その語源はギリシャ語の「揉む(マッシー)」とアラビア語の「押す(マス)」という意味です。ヨーロッパで発祥し、明治時代に日本へ輸入されました。オイルやパウダーを用いて、求心性(手足から体の中心に向かって)に皮膚を直接刺激していくのが特徴です。主に血液やリンパ液の流れを良くします。
  指圧は、日本で大正時代に成立され、衣服の上から、指や手掌(手のひら)等を用い、体表の一定部位を押します。生体の変調を矯正し、健康の維持増進を図り、特定の疾病治療に寄与する施術です。
  授業では、あん摩を中心に練習を行いますが、その他、腹部のマッサージやオイルマッサージ、指圧も取入れたりします。
  腹部のマッサージは、腸の働きを活発させ、便秘などに有効ですし、オイルマッサージは足のむくみなどに有効なので、これらを実践して学びます。
  1年次で身につけた基本的なあん摩マッサージ指圧の技術と、解剖学や身体診察法などの知識を活かしながら、3年次の臨床実習へ向けて、患者さんの状態に合わせた治療方針を組立てる力を養います。
科目の名称に「応用」とついているのはそのためです。
  このような科目を習得することにより、他人へ健康を提供する按摩マッサージ指圧師としての自覚を確立していくのです。

(文/牧 邦子)



シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.7

◎ はりきゅう基礎実習Ⅰ


 1.はじめに 
 この科目は専門1年生、および高等3年生に配当されている週3時間の実技科目です。科目名に「はりきゅう」とありますが、実際には「鍼(はり)」の実技を行っています。はりきゅうの実習には、基礎実習、応用実習(専門2年、高等4年)、臨床実習(専門3年、高等5年)の3つがあり、基礎実習では鍼の基本的な刺し方を身につけ、応用実習で症状や疾患に対する治療方法を学び、最後の臨床実習では外来の施術協力者の方々に教官の指導のもと施術を行います。

 2.到達目標 
 はりきゅう基礎実習Ⅰの到達目標は、長さ4cmおよび5cm、太さ0.18mmの髪の毛ほどの太さの鍼をまっすぐ刺入する技術を習得することです。注射の針とはまったく異なり、太さは1/10以下しかありませんので、注射のような痛みを感じることは基本的にありません。このような細い鍼を痛みなく曲げずに刺すためには、非常に繊細な手指の動きや力加減が必要になり、少しでも力が入りすぎたり、手や指のバランスが崩れたりすると、痛みが出たり、鍼が曲がってしまいます。そのためには、柔らかい指や手首を作る必要があります。利用者の皆さんは慣れない手指の細かい動きに最初はかなり戸惑います。教官による細かいチェックが入り、まさに手取り足取りの状態で修正を行っていきます。

 3.授業内容 
 授業の内容は、まず刺鍼練習器という布を丸めた道具を用い、それに鍼を刺して基本的な動作や手順を習います。次に自分の足に鍼を刺す練習に移り、授業開始2カ月後くらいから利用者同士でペアを組んで、お互いの体に鍼を刺す練習をしていきます。

ツボは全身にあり、実際の治療では症状に合わせて全身にあるツボから適宜選択して鍼を刺していきます。そのため全身のツボに鍼が刺せるように、ペアを組んでからの練習も足から始め、手・腕、腰・背中、首・肩、頭・顔、腹と全身のツボを使って練習をしていきます。 また視覚障害者が施術するために必要なスキルも重点的に練習します。見えなくてもワゴンの上に置いてある施術道具の位置をしっかり把握できる、患者さんに不快感を与えずに体に触れることができる、身だしなみをしっかりするなど施術に関連する所作などについても早い段階から徹底した教育をしています。

 4.おわりに 
 鍼灸施術は医療の1つとして位置づけられるようになりました。見えないからできない、見えないから仕方がない、という考えは通用しません。視覚障害者であっても安全かつ確実に、効果的な鍼灸施術ができる鍼灸師を養成するために必要な知識・技術を習得させることが我々の使命です。今日もどこかの実技室で教官による厳しいチェックが行われていることでしょう。

(文/加藤 麦)

写真 鍼灸施術




シリーズ 理療教育の科目紹介Vol.8

◎ はりきゅう基礎実習Ⅱ

 1.はりきゅう基礎実習Ⅱとは? 
 本科目は専門課程1年次あるいは高等課程3年次に週2時間配当されている、【灸(きゅう)】の実技科目です。年間約60時間をかけて、きゅう師に必要な基本的な施術技術や知識を学びます。医師以外の者で、灸を業とするには「きゅう師」免許が必要となっています。

 2.灸(きゅう)施術とは 
 灸施術は、松尾芭蕉の奥の細道に『三里に灸すゆるより』とあり、旅路での足の疲れを癒したり、また、吉田兼好の徒然草に「40歳以上の者は三里に灸をすると、のぼせ(高血圧)を引き下げる」というように、灸の効果というのは昔から伝えられてきています。
 実際に、灸施術を行うためには、蓬(よもぎ)から作られた艾(もぐさ)を円錐状に捻ること、大きさは親指大(母指頭大)の練習から始まり、米粒大の大きさまで捻る練習をします。また、隔物灸という塩やショウガなどを皮膚と艾の間に介在させて行う灸法も学びます。

 今まで火を見たことが無い、あるいは火を付けたことがない(ライターでの点火など)利用者にとっては、その作業自体がとても難しく、苦労しながらその取り扱いを含めて熱心に練習に取り組んでいます。

 3.おわりに 
 はり施術同様、灸施術もまた「見えないからできない。」「見えないから仕方がない。」という考えでは、きゅう師の資格を取得しても宝の持ち腐れになってしまいます。視覚に障害があっても灸施術を安全かつ積極的に行うためには、はりきゅう基礎実習Ⅱでの技術の習得、さらには日々の「おきゅう」への興味が重要となります。
 近年、お灸女子という言葉があるように、社会的に灸に対する認知度は上がってきています。利用者の方々に少しでも灸の有効性を体験してもらい、次年度のはりきゅう応用実習Ⅱ、さらには卒業学年時におけるはりきゅう臨床実習につなぎ、資格取得後に社会のニーズに応えることができるような「きゅう師」の育成を目指しています。

(文/佐取 幸枝)





シリーズ理療教育の科目紹介 Vol.20

◎ はりきゅう応用実習Ⅰ

はりきゅう応用実習Ⅰは、はりきゅう実習の2年目に配当され、1年目で行った「はり」と「きゅう」の基礎実習を3年目の臨床実習につなげるための実技科目です。
 基礎実習では、「はり」と「きゅう」を個別に指導していましたが、応用実習では両者を区分けせず、「はり」と「きゅう」を併せ、臨床を意識した実習を行っていきます。
 はりきゅうの臨床実習では、様々な症状に対して、現代医学的にアプローチする方法と東洋医学的にアプローチする方法があり、それぞれ確立された技術があることから、応用実習Ⅰとして現代医学的な技術、応用実習Ⅱとして東洋医学的な技術の修得を目標に指導しています。
 具体的な授業内容としては、「鍼を目的の方向に刺す」、「身体の各部へ安全に刺鍼する」といった基礎技術に加え、臨床を意識した刺鍼練習として、例えば、刺入した鍼に電極を付けて、鍼に微弱な電気を流すことで、筋を収縮させ、筋の緊張や痛みを軽減する鍼通電療法や、刺鍼した鍼の上に艾(もぐさ)を付け点火することで、鍼による刺激と艾の熱による刺激の両方により、患部の痛みを和らげる灸頭鍼療法などを行います。
 また、臨床入門として、問診、診察、検査等を行い、痛みの原因を追求するとともに、その痛みを軽減する方法や施術プランを検討し、問診から治療までの一連の流れを段階的に指導しています。
 さらに、はりきゅう応用実習Ⅱやあん摩・マッサージ・指圧の応用実習と連携し、利用者が次年度の臨床実習に円滑に移行し、「基礎」「応用」で身につけた技術を用いて、安全に施術できるよう実技訓練を行っています。

(文/米田 裕和)


写真 灸頭鍼の様子

灸頭鍼