【シリーズ理療教育の科目紹介 Vol.7】
はりきゅう基礎実習Ⅰ
理療教育・就労支援部 理療教育課

 1.はじめに 
 この科目は専門1年生、および高等3年生に配当されている週3時間の実技科目です。科目名に「はりきゅう」とありますが、実際には「鍼(はり)」の実技を行っています。はりきゅうの実習には、基礎実習、応用実習(専門2年、高等4年)、臨床実習(専門3年、高等5年)の3つがあり、基礎実習では鍼の基本的な刺し方を身につけ、応用実習で症状や疾患に対する治療方法を学び、最後の臨床実習では外来の施術協力者の方々に教官の指導のもと施術を行います。

 2.到達目標 
 はりきゅう基礎実習Tの到達目標は、長さ4cmおよび5cm、太さ0.18mmの髪の毛ほどの太さの鍼をまっすぐ刺入する技術を習得することです。注射の針とはまったく異なり、太さは1/10以下しかありませんので、注射のような痛みを感じることは基本的にありません。このような細い鍼を痛みなく曲げずに刺すためには、非常に繊細な手指の動きや力加減が必要になり、少しでも力が入りすぎたり、手や指のバランスが崩れたりすると、痛みが出たり、鍼が曲がってしまいます。そのためには、柔らかい指や手首を作る必要があります。利用者の皆さんは慣れない手指の細かい動きに最初はかなり戸惑います。教官による細かいチェックが入り、まさに手取り足取りの状態で修正を行っていきます。

 3.授業内容 
 授業の内容は、まず刺鍼練習器という布を丸めた道具を用い、それに鍼を刺して基本的な動作や手順を習います。次に自分の足に鍼を刺す練習に移り、授業開始2カ月後くらいから利用者同士でペアを組んで、お互いの体に鍼を刺す練習をしていきます。

ツボは全身にあり、実際の治療では症状に合わせて全身にあるツボから適宜選択して鍼を刺していきます。そのため全身のツボに鍼が刺せるように、ペアを組んでからの練習も足から始め、手・腕、腰・背中、首・肩、頭・顔、腹と全身のツボを使って練習をしていきます。  また視覚障害者が施術するために必要なスキルも重点的に練習します。見えなくてもワゴンの上に置いてある施術道具の位置をしっかり把握できる、患者さんに不快感を与えずに体に触れることができる、身だしなみをしっかりするなど施術に関連する所作などについても早い段階から徹底した教育をしています。

 4.おわりに 
 鍼灸施術は医療の1つとして位置づけられるようになりました。見えないからできない、見えないから仕方がない、という考えは通用しません。視覚障害者であっても安全かつ確実に、効果的な鍼灸施術ができる鍼灸師を養成するために必要な知識・技術を習得させることが我々の使命です。今日もどこかの実技室で教官による厳しいチェックが行われていることでしょう。(文責 加藤 麦)

写真:鍼灸施術