【シリーズ理療教育の科目紹介 Vol.12】
あん摩マッサージ指圧理論、はりきゅう理論
理療教育・就労支援部 理療教育課

●温故知新
 人類は、太古の昔から身体に痛みや痺れなどの異常を感じた時、その場所に本能的に手を押し当てて撫でさすったり、暖めて冷えを取ることによって症状が和らぐことを知っていました。あん摩マッサージ指圧鍼灸(以下「あはき」と略す)が成立するずっと以前から経験的に外から生体に適度な刺激を加えることで、内なる知性が喚起され、結果的に回復メカニズムが機能して、苦痛の解消に役立つことが知られていたのです。やがてこのことは、学問の進歩、発展とともに体系化され、古代九鍼などの治療器具の飛躍的進歩もあって「あはき」の標準的治療として、広く行なわれるようになりました。このようにして、古くから、多くの人々の病苦からの解放に「あはき」が貢献してきたのです。あん摩マッサージ指圧理論、はりきゅう理論は、「あはき」の作用メカニズムに関して、まず先達の科学的研究について学ぶとともに、更なる医学的可能性を探求し、現代医療との調和を図る態度を養うことを目的とする科目です。従って、これらの科目の学習には、解剖学、生理学、病理学、衛生学などの基礎医学の知識が必須となります。


●痛みを和らげるオピオイドとは
 鍼の効果というと皆さんは、まず、何をイメージするでしょうか。鍼の重要な効果の一つに鎮痛があります。多くの研究者が鍼による鎮痛機構の解明に取り組み、多数の仮説が提唱されました。中でもオピオイドによる鎮痛が有名です。オピオイドとは、脳内麻薬のことです。鍼刺激によって脳内にモルヒネ様物質が産生され、下行性神経系を介して疼痛抑制に関与するというものです。オピオイドは、鎮痛に関わるだけでなく、その効果発現によって幸せな気分をもたらすのです。すばらしい鍼に巡りあって毎日を楽しく、健やかに過ごしたいものです。

写真:古代九鍼
(写真)古代九鍼

●あん摩マッサージ指圧鍼灸の応用
 現在、病院、産業分野、高齢者施設、スポーツ施設、一般家庭など多くの場所で「あはき」が人々の保健、健康増進に活用されています。医療の重要な一角を担っているのです。この流れをいっそう定着、発展させるには、「あはき」治療の特性をよく知り、治療の適否について正確に鑑別できる能力を養うことが重要になります。また、治療の標準化やリスク管理および衛生管理についても、よりきめ細かな知識が必要となります。あん摩マッサージ指圧理論、はりきゅう理論では、これらについても系統的に学習します。


(後書き)
 理論科目というと何か難解な固いイメージを持たれるかもしれません。また、国試の出題科目にもなっていますので、知識の詰め込みに陥る危険性も否定できません。授業では、できるだけあはき実技や臨床実習にも触れながら、利用者が興味を持てるように工夫しています。また、利用者が理解しやすいように、教科書に記載されている専門用語を中心に極力、漢字の説明をするよう心がけています。理論と実技は、車の両輪のようなもので、どちらが欠けても臨床家としてうまく力を発揮できないと思います。利用者が、自ら考え、判断して治療ができる自立した施術者に成長していくことを切に願う日々です。

(文/丸山 隆司)