【シリーズ理療教育の科目紹介 Vol.14】
東洋医学臨床論
理療教育・就労支援部 理療教育課

 受験学年になると今まで学んだ科目の知識を実際の患者さんに応用するために総合的観点から知識を集約する科目があります。東洋医学臨床論と言います。按摩・マッサージ・指圧の治療法を中心に書いた教科は「保健理療臨床論」、鍼灸の治療法を中心に書いた教科は「理療臨床論」と言いますが、合わせて「東洋医学臨床論」と言います。
 解剖学で人体の構造を、生理学で人体の機能を、病理学で異常所見を、臨床医学で病気の発生機序や症状を学び、また、東洋医学で現象を検討してきました。東洋医学臨床論はそれらをもとに私たちが身につけた按摩・マッサージ・指圧、鍼、灸で治療できるかを検討し、やってきた患者さんの症状が緊急を要するものや重症のものは専門医療機関に紹介したり、私たちの力で有効と思われるものは精一杯治るようにお手伝いします。
 例えば、東洋医学では食欲不振を三つの原因から考えます。胃腸の冷えで起きる場合、胃下垂があるために起きる場合、胃に余分な水分がたまって起きる場合です。もちろん、食欲不振はかぜ、精神的ストレス、肝臓病、腎臓病などでも起きます。肝臓病や腎臓病によるものかどうかを判断する要点を整理するのが東洋医学臨床論です。
が、その場合は原因となる病気の治療を優先します。
 胃腸の冷えによる食欲不振は、冷たいビールの飲み過ぎ、生ものの食べ過ぎなどで胃腸が冷えると、胃腸の機能が低下したものです。また、足腰の冷えがだんだん胃に及ぶものもあります。このような場合は温かいものを摂ったり、手足や腹部を温めたりすることで早く治ります。
 つぼで治療する場合、足三里、脾兪、胃兪などを指圧か灸で刺激します。足三里に灸が特におすすめです。
 患者さんには脂っこいものを避け、原因に合わせダイコンを進めたり、繊維質の多い食べ物を勧めたりする生活指導についても学ぶものが東洋医学臨床論です。

文責:杉本龍亮