高位頸髄損傷者の在宅支援システムの開発
−在宅支援システムにおける専門スタッフ関与の必要性−

病 院 第一機能回復訓練部 岩崎洋、中村優子、吉田由美子、金山まゆみ
医療相談開発部 佐久間肇
病院長 関寛之
研究所 補装具製作部 三田友記

【はじめに】

 高位頸髄損傷の人工呼吸器使用者が、在宅生活をするには適切な介助、機器の使用、 社会制度の活用等が必要である。経験のある病院では、在宅支援のアプローチは独自に すすめられているが、経験のない病院では、その場しのぎの暗中模索状態である。 そのため、退院して、在宅生活に移行するタイミングも逃がし、漫然と入院生活を余儀なく されている者もいる。現在、高位頸髄損傷者の在宅支援システムは地域から中央のリハビリ テーション病院、センターに転院してアプローチを受ける中央管理型(仮称)が多い。 今回、我々は、中央のリハビリテーション病院に移動する際の、本人と家族の身体・ 精神的・経済的負担を避け、地域が管理し、必要に応じて中央のリハビリテーション病院 ・センターからスタッフが派遣され、地域スタッフと協同してアプローチをする地域管理 型(仮称)を開発した。

【地域管理型システムの概要】

 システムは@評価:現状の把握(環境・身体能力等)、A検討会議:地域(医療・ 福祉)スタッフ・症例・家族・センタースタッフとのミーティングにて、問題点の抽出と 目標と対応を決定する。B対応:必要に応じて介助方法指導、機器の処方、製作、使用 方法等である。Cアフターフォロー:電話、メールにて定期的に情報交換、報告書作成等を行う。

【症例】

 2例で男女各1名、入院中であり、機能レベルは頸髄2番で人工呼吸器使用、評価の結果、 両親の高齢化や同居家族の療養のため、在宅は困難であった。しかし、近い将来施設入所が 考えられる。目標は入所しても病院と同程度の、褥瘡リスク管理と寝たきりにならない ような生活を確保する。さらに容易に外出ができることとした。問題点は2例ともベッド上 では褥瘡対策、車いすでは不適合のため不良姿勢、褥瘡のリスクであった。対応としては 接触圧測定装置によるベッド・車いす上での測定、その結果から指導、教育、そして車いす の改良、クッション調整、適切な車いすの処方、製作を施行した。

【まとめ】

 地域に適切なスタッフの導入、地域のスタッフとの協同により、短期間で症例に対して、 適切な褥瘡予防対策、車いすの改良、製作を施行した。その結果、入院生活において症例、 介助者の身体・精神的負担が軽減され、日常生活において容易に外出が可能となり、今後、 更なる活動範囲の拡大につながる事が可能となった。




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