突然ですが、義手を想像してくださいと言われると皆さんどのようなものを思い浮かべるでしょうか。 実は、現在使用されている義手には様々なバリエーションがあり、これらは使用目的・操作方式・支給制度などによって大きく種類が分けられています。 さらにこれらの義手は、それぞれの手首から先を取り外して他のパーツと交換することができます。この手首から先のパーツは「手先具」という名前で、これにもまた様々な種類が存在しています。 義手やそのパーツにこうしたバリエーションがあることは、裏を返すと人間の手のような1本で何でもこなせる万能な義手はまだ存在しない、ということを表しているとも言えます。 人によってライフスタイルや価値観が異なり、状況によっても手に求められるものはことなります。義手のユーザーの方々は場面に応じてこうした様々な義手を付け替える、あるいは手先具だけを付け替えるという「使い分け」によって日々の生活の中で工夫しながら義手という道具を活用しています。この動画では能動式義手と作業用義手の手先具をご紹介します。 能動式義手は、ハーネスやケーブルを介したからだの動きによって手先具の閉じ開きなどを操作することが可能な義手です。一般的には能動フックと呼ばれる金属製のかぎづめ型の手先具と、能動ハンドと呼ばれる手の形をした手先具があり、どちらも閉じ開きを操作することができます。能動フックは、現在日本で普及しているものに限定するとその種類は絞られ、標準的なタイプ(Model5)とそのサイズやカラー、材質違いのものが大部分をしめます。他にはハードな使用に適した能動フック(Model7)もあり、こちらは様々な太さの棒状の物を掴んだり、紐などを引っ掛けて引っ張ったりすることが得意な手先具です。 能動ハンドは複数のメーカーから販売されています。全体として細かい動作においては能動フックに劣ると言えますが、見かけと機能性を兼ね備えている手先具として外出時や人目を気にする時に使用されているユーザーのかたも少なくありません。 作業用義手は、基本的にはケーブルなどは存在せず、よりシンプルに目的に合うように作られています。手先具には様々な形状をしたものがあり、目的とする作業によって付け替えて使用できます。鍬や鎌、機械など操作する道具に合わせて様々な選択肢があり、古くから農作業や重作業を行うユーザーの方々のなりわいを支えています。既製ひんが無い物など、ときには改造をして専用の手先具が作られることもあります。 各メーカーからはスポーツや楽器演奏など様々なアクテビティに対応した多種多彩な手先具が販売されており、大人用だけでなく子供用においても実に広い範囲がカバーされるようになってきています。日本の小学校のカリキュラムに含まれるマット運動や跳び箱、鉄棒用の手先具は近年のニーズの高まりに応じて公的な支給制度の対象となり、国産メーカーにおいても開発・商品化が行われるほどになりました。 以上のように、義手には、ユーザーの年齢、職業や趣味の幅に応じて様々な機能が求められます。時代ごとのライフスタイルや社会の価値かんの変化によっても義手の果たす役割は変わります。人間の手のような万能な義手が開発されることは理想的ですが、それが叶うまでは、義手は便利な道具・問題解決の手段として多様なバリエーション、多様なアプローチによってユーザーのニーズに対応していくべきものと考えられます。今、そしてこれからの義手にはどのような機能が求められ、義手や手先具はその姿をどのように変えていくのでしょうか。