私たちの研究グループでは、吃音のある成人の心理面について、その特徴を明らかにするとともに、支援法の開発研究を行なっています。 まず、吃音のある成人が示すことの多い心理的特徴として、社交不安があります。 当センター病院を受診した351名の吃音のある成人に対し、社交不安に関する質問紙への回答を依頼し、その回答を統計的に分析しました。 その結果、吃音のある成人の不安は、精神科で診断される不安症のある成人と比べて、電話場面での不安が非常に高いことが分かりました。また、「話す」という行為を含まない場面での不安は、不安症の成人より低い可能性があることが分かりました。 この結果から、吃音のある成人の社交場面での不安について支援を行う際には、特に電話場面に配慮する必要があることが示唆されました。 次に、日本医療研究開発機構の助成きんにて実施した、集団療法のプログラムの開発と効果検証についてご紹介します。 この集団療法は、吃音に注意が向きすぎないようにすることを意図した、心理面にアプローチする方法であり、1回2.5 から3時間、全5回のプログラムから構成されています。 この集団療法の効果検証を行なったところ、治療前に比べ、治療後と治療6ヶ月後において、電話場面を含む社交場面での全般的な不安や、吃音による生活困難度が低下することが示されました。 今後は、このような治療法が受けやすくなるように普及させていく必要があると考えています。