聴覚障害の病態解明に関する研究 感覚機能系障害研究部・感覚認知障害研究室 鷹合 秀輝《たかごう ひでき》  こんにちは、感覚機能系障害研究部・感覚認知障害研究室の鷹合です。私たちの研究室では、聴覚障害の病態解明に関する研究をおこなっています。私たちの研究内容についての説明に先立ち、「きこえ」のしくみからお話しさせて頂きます。  「きこえ」のしくみですが、音は外耳から入って鼓膜を振動させ、中耳の・耳小骨《じしょうこつ》を介して、内耳の蝸牛《かぎゅう》へと伝わります。蝸牛《かぎゅう》には音波を電気信号に変える有毛細胞《ゆうもうさいぼう》があり、蝸牛神経とシナプスで繋がれています。この電気信号は最終的に大脳に到達し、「きこえ」として知覚されます。聴覚系のいずれの部位に異常が生じても、難聴になります。  私たちの研究室の研究内容です。年齢とともに聴こえづらくなる加齢性《かれいせい》の難聴などで、蝸牛《かぎゅう》の有毛細胞《ゆうもうさいぼう》と蝸牛《かぎゅう》神経のつなぎ目であるシナプスの異常が指摘されています。蝸牛《かぎゅう》や蝸牛《かぎゅう》神経などの異常で生じる感音難聴には特効薬が無いため、なぜ難聴になるのかという原因を明らかにした上で、新しい薬を創ったり、補聴器や人工内耳などのリハビリテーション機器の開発を進める必要があります。具体的には、難聴モデルマウスの蝸牛から取り出した神経細胞から、小さなガラスの電極を使って活動を記録するなどしています。上段の正常な聴力をもつ野生型マウスのシナプスでは、刺激に対してたくさんの応答が見られますが、下段の難聴マウスのシナプスでは刺激しても応答が見られません。  このような形で、神経生理学的な手法による聴覚障害の病態解明研究を進めていて、将来的に私たちの持っている技術を耳鼻科臨床に応用することを目標にしています。