成人吃音の社交不安の特徴 感覚機能系障害研究部・聴覚言語機能障害研究室・灰谷知純《ともすみ》 「社交不安」は、「他の人から見られるかもしれない場面での不安」を指しており、例えば、人前で話す、雑談する場面での不安などを指します。 社交不安が高いと、社交不安症という精神疾患であると診断されることがあります。 吃音のある人は、社交不安を抱える場合が多く、社交不安症を併発しやすいことが知られています。 具体的には、治療を求める吃音のある成人では、22%から60%の割合で、社交不安症を併発するとされています。 この研究では、吃音のある成人の社交不安の特徴を調べることを目的とします。 まず一つ目に、吃音のある人が社交不安を感じる場面は、どのように分類されるかを明らかにします。 次に、その分類された場面での不安の強さによって、吃音のある成人がどのようなタイプに分けられるのかを明らかにします。 これらの検証を行うことで、吃音のある成人の特徴に合わせた心理的支援の提案につながると考えています。 この研究では、リーボヴィッツ社交不安尺度と呼ばれる心理検査を使用しました。 これは、24の社交場面での恐怖感や不安感の程度について尋ねるもので、例えば、「人前で電話をかける」、「強引なセールスマンの誘いに抵抗する」などといった項目が含まれます。それぞれの項目に対して、「0 まったく感じない」、から「3 非常に強く感じる」、の4段階で回答していただきます。 この352名分の回答を分析したところ、社交不安を感じる場面は5つに分類されました。 1つ目は「飲食・パーティー場面」、2つ目は「電話場面」、3つ目は「発話しない場面」、4つ目は「知らない人と交流する場面」、5つ目は「人前で話す場面」でした。 この中では、「発話しない場面」や、「飲食・パーティー場面」では不安が低い一方で、発話する場面、特に「電話場面」で不安がとても高いことがわかりました。 また、それぞれの場面での不安の強さによって、吃音のある人を6つのグループに分けることができました。 そして、そのうちの半分の人が含まれる3つのグループで、電話場面で特に高い不安を感じていることがわかりました。 これらのことから、吃音のある成人の支援を行う際は、電話不安を始め、社交不安のプロフィールを考慮する必要があると考えられます。