変化する断端 私たちぎし装具士は義足の適合を本業としていますが、実際の義足の適合は簡単ではありません。人体の一部である断端は太くなったり、細くなったりして変化するのに対し、義足ソケットの多くはプラスチック製で形が変わらないというのがその理由です。この両者を痛くないように、かつ十分に力が伝わるようにフィッティングさせるのが難しい作業です。 断端は義足を装着し、体重をかけて歩行すると大きく変化します。ここに示した写真は、義足歩行訓練前と、義足歩行獲得後の断端の写真です。断端がどのように変わっていくのか、断端の何が変わって行くのかを知ることは義足の適合を良い状態に保つうえで大事な情報です。 そこで、我々はぎそく歩行に伴う断端なん部組織の変化について、大腿切断者の下肢のMRI画像をもとにその変化の様子を調べています。 まず、病院に入院した大腿切断者を対象に、義足歩行訓練をする前と義足であるけるようになった後で、その違いを調べてみました。その結果、断端は細くなるものの、きんの量は変わりませんでした。さらにきんの構成比が変わっていることがわかりました。きんの構成が変化することは、断端の形も変わることを意味しています。故にソケットの適合も変わるので、歩行訓練中はソケット適合の変化に十分注意を払う必要があることがわかりました。 つぎに日常的に義足歩行をしている切断者の健そくと断端の比較を行いました。断端の方が断面積は小さく、断端は細くなって萎縮していることがわかりました。また、このグラフに示すように断端のきんのいしゅく率と年齢には有意な負の相関が見られました。 切断そくと健そくそれぞれに占めるきんの割合を示したのがこの円グラフです。上の写真を見ておわかりのように、切断そくにおいては大腿しとうきんをはじめとするぜんがいそく部のきんの割合が大きく減少しています。その代わり、ないてんきん群の割合が相対的に高くなっています。このように切断しと非切断しではきんの構成が大きく異なるということがここでも示されました。 このように、よりよい義足のフィッティングにつなげるために断端を知ることはとても大事です。今回ご紹介した内容の詳細はここに示した論文をご覧ください。