日本の切断者の数はおよそ15万人と報告されています。その割合は日本人口の約0.12%、850人に1人という計算になります。 実は国内においてこういった切断者に関する調査データというものは非常に少なく、より詳細な調査や長期間にわたる調査というものは一部の施設や自治体では行われているものの、まだまだ分かっていないことが多いというのが現状です。 私たち義し装具技術研究部では、義手と義足を製作・提供する臨床業務を日常的に行なっています。その中で、これまで対応を行なってきた切断者の情報をまとめてデータベース化し、切断者の現状把握と将来予測のための1資料として学会や学会誌で報告しています。 現在データベースには40年以上、1200名以上の切断者の情報が登録されています。 時代とともにどううつりかわっているかということに注目しますと、じょうし(手や腕)の切断原因は今も昔も外傷(ケガ)が多いのに対して、下肢(足や脚)の切断では外傷の割合が減り疾病(病気)が増えているということや、その中でも高齢、血管障害に関係する糖尿病などのかたが増えていることが調査で分かっています。高齢で血管障害などを有する切断者、となりますと切断した手足だけでなく全身状態の良し悪しもリハビリテーション治療の進行や予後に大きく関与してくるため、若い外傷による切断者が多かった過去と比べるとリハビリテーション治療の難易度が上がってきていると予測できます。 また、当センターには民間の義し製作施設では対応が難しい症例も集まりやすく、手足の2本以上を切断しているたし切断者が多いということも特徴の1つであると分かっています。そしてそのたし切断者にはいくつかのパターンが見られ、手や足のさらされるリスクと切断とのかんけい性も分かってきました。このように切断しの数や部位ごとの特徴が掴めてくると、そのケースに合った義しやリハビリテーション治療の検討をスムーズに行えるようになる可能性があります。 多くの切断者への対応を行なっている当センターとしては、今後もこうしたデータの収集と分析、発信を続けていくことが重要です。