自閉スペクトラム症者の表情認知の問題とそれを緩和するための研究開発 脳機能系障害研究部 発達障害研究室 和田 まこと 自閉症スペクトラム症(ASD)のかたでは、社会的コミュニケーションの障害や行動の反復・興味の偏りなどが障害の中核とされています。 一方、ASDのかたでは、視覚・聴覚・触覚などの感覚が定型発達者とは異なるやりかたで処理されることがわかってきました。このことが、定型発達者との間で生じるコミュニケーション障害の原因になっているのかもしれません。 コミュニケーションにとって、顔の表情から、相手の感情状態を推定することはとても大切です。自閉スペクトラム症のかたは、表情の読み取りが苦手といわれますが、どのような場面でどういった苦手が生じるのか、はっきりとは、わかっていません。 そこで、脳機能系障害研究部 発達障害研究室では「表情変化をどのように感じるか」について、その顔のどこをみていたかなど視線や瞳孔の大きさを計測しながら、どのような印象を受けたかについて研究しています。これまでの実験で、定型発達者では、表情の表示された時間の長さに応じた感情の強さの見積もりができることが分かりました。一方、ASD者では、怒り表情の度合いの見積もりが苦手である可能性がわかってきました。 例えば、話し手と聞き手の間で表情の印象が等しくなるようにリアルタイムで調整を行うデバイスなど、研究成果をもとに、表情認知を支援する技術を開発し自閉スペクトラム者のコミュニケーションの支援を目指していきます。