補装具の価格のはなし 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部 我澤《がさわ》賢之《けんじ》 研究の背景  補装具費支給制度という制度があります。  障害者に (a) 日常生活を送る上で必要な移動等の確保や (b) 就労場面における能率の向上すること、  障害児に (c) 将来、社会人として独立自活するための素地を育成助長 することを目的に、身体機能等を補完・代替する用具の購入等に公費(補装具費)を支給する制度です。  対象用具(種目)には、 (a) 義肢 (b) 装具 (c) 座位保持装置《ざいほじそうち》 (d) 視覚障害者安全つえ (e) 義眼 (f) 補聴器 (g) 車椅子 (h) 座位保持椅子《ざいほじいす》 (i) 重度障害者用意思伝達装置 (j) 眼鏡《がんきょう》 (k) 人工内耳(人工内耳用音声信号処理装置の修理のみ) (l) 電動車椅子 (m) 起立保持具 (n) 歩行器 (o) 頭部保持具 (p) 排便補助具 (q) 歩行補助つえ 計17種目があります。  原則、補装具の価格のうち9割は公費を補装具費として支給。1割は自己負担です。ただし所得に応じ、自己負担に上限が設定されています。  安定して補装具の供給を続けるには、価格設定が重要です。価格が、高すぎると、公費・自己の負担が過大に。低すぎると、供給事業者の採算が取れないことになります。  補装具の価格は、基本、厚生労働省による公定価格によっています。これを、どのように決めるかが問題です。 研究の内容  研究では、補装具の (a) 価格の根拠となるデータの調査 (b) 機能・仕様に関する調査・情報収集 (c) そのほか  をおこなっています。一部、共同研究者の担当分を含みます。  まず、価格の根拠となるデータの調査では、供給事業者などを対象に価格根拠調査をおこなっています。義肢・装具・座位保持装置《ざいほじそうち》については、価格の構成要素である作業人件費と素材費など。その他の種目については、用具の制度外での販売価格。以上について、調査方法の開発と実施をおこなってきました。  つづいて、機能・仕様に関する調査・情報収集では、適切な価格設定を行う前提となる、基準の補装具の(ものとしての)機能・仕様を明確化するよう検討します。  例えば車いすで言えば、機能とは、 移動する 方向転換 乗ることができる 体の各部を支える リクライニング・ティルト 等々  仕様とは、 大きさ 重さ こわれにくさ 可燃性 等々です。  そのほか、現行の形の公定価格制度に代わりうる価格制度の検討などをおこなっています。 おわりに  最後までご覧いただき、ありがとうございました。    本研究は、 (a) 平成25〜27年度 厚生労働科学研究費障害者対策総合研究事業「補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みの提案に関する研究」(研究代表者 井上剛伸《たけのぶ》) (b) 平成27〜29年度 厚生労働科学研究費障害者対策総合研究事業「補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定のあり方に関する調査研究」(研究代表者 白銀《しろがね》暁《さとし》) (c) 平成30〜令和2年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金「補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定に関する調査研究」(研究代表者 山ア《やまさき》伸也《のぶや》)  を受けて、進めております。