幼児の吃音の支援について
感覚機能系障害研究部の酒井奈緒美が紹介させていただきます。
　吃音とは幼児期に多く見られる発話の障害で、ことばの最初の音を繰り返す、引きのばす、また最初の音が出てこないという三つが主な症状です。この症状は出たり消えたりと波があり、幼児期のうちに消えてしまうことも多くあります。そのため、相談に行くと「様子を見ましょう」と言われることも多いのですが、保護者としては「このままでいいのかな？」「できることはないのかな？」などと悩むことがあるというのが日本の現状です。そこで、いつまで様子を見ればよいのか、どのような場合に治りやすいのか、幼児期に行うべき支援は何か、などについて明らかにするために研究を進めています。
　これらの研究の一つが疫学調査です。何歳くらいに、どのくらいの子どもが吃音の症状を示すのか、どのような子どもがどのような時期に治って行くのか、などの基礎情報を明らかにするための研究です。２０１８年２月までにおこなった調査では、３歳時点で吃音らしい症状がある子どもは６．５％、また３歳までに吃音を経験した子どもは９．０％であることが示されました。今後は、治りやすい時期、治る子どもの割合や特徴を明らかにしていく予定です。
　もう一つは支援に関する実態調査です。吃音が始まった子の保護者は、どのように支援を求め、どのような支援を提供されているかを調べています。結果は、多くの保護者が子の吃音が始まってから１年以内に地域で支援を求めていますが、提供される支援は十分とは言えないこと、また、より専門的な支援を求める際には保護者がインターネットなどで個人的に調べて受診先の情報を得ていることが示されました。これらの結果をもとに、支援体制づくりを検討しています。