コーパスに基づいた自閉傾向と言語運用の研究 鈴木あすみ 言語学を通して自閉スペクトラム症の方々の困りごとを解決するための基礎研究として、会話データベースの構築についてご紹介します。 対人的・情緒的関係の障害、強いこだわり、感覚過敏等で特徴づけられる自閉スペクトラム症 (ASD) の方々は、話し相手の意図を掴めない、冗談が分からないなど、日常的なコミュニケーションに困難を抱えることがあります。これを語用論障害といいます。社会生活における言語の役割は大きく、語用論障害は生活全体の質に影響します。適切な支援のためにはまず、ASDの方々の言語運用の実態を明らかにする必要があります。 そのためには、「コーパス」と呼ばれる大規模な言語データベースの分析が有用です。コーパスは、人々が話したり書いたりした言葉を大量に集めて研究用の情報を付けて作ります。言語学てきな特徴を分析する研究に加え、AIの学習データとしても役立てられています。国外では複数のASDコーパスが構築・公開されていますが、日本語を母語とするASDの方々の公開コーパスはまだ存在しません。 そこで本研究では、大規模公開コーパスを構築するための準備として、ASDと定型発達のかたそれぞれ5名の会話データを収集してコーパスを構築します。 会話の書きおこし、音声、映像を合わせて公開することで、音声的な特徴や表情・ジェスチャーといった非言語情報の分析も可能にします。 また、ASD特性にかかわる心理指標・生理指標も測定し、言語運用の特徴との関係を検討します。 コーパスは国立国語研究所から公開する予定です。 本コーパスが完成すれば、言語学、医学、情報工学などた領域の研究者に利用できる公開コーパスとして本研究が完成すれば、日本語 語用論研究に裏付けられた診断ツールや支援方法の開発につながると期待できます。本研究にご興味のある方は、こちらの連絡先にお気軽にお問い合わせください。 1