断端の長さについて 1. 義肢装具技術研究部では製作記録に基づく調査から義肢と切断者の情報発信をしています。今回は断端長の調査についてご紹介します。 2. 切断して残った脚の部分のことを断端と言います。断端は長い方が体重を支えたり、義足をコントロールするのに有利なため、切断時にはできるだけ長く残すべきと言われています。しかし、長すぎると外観が悪くなったり、部品が入るスペースがなかったりとデメリットもあります。 3. 実際のところ、切断者の断端はどのぐらいの長さなのでしょうか?国リハで義足製作を行った片側の下肢切断者のうち、下腿切断者164名、大腿切断者161名の計325名の断端長を調べてみました。 4. まず下腿切断者の断端長とその分布です。義足長に占める割合で30〜40%の長さが最も多く、平均断端長は35.9%、実際の長さでいうと14.6センチでした。 5. 教科書を見ますと、どこで切断すべきかと、いろいろな考えが書かれています。いくつかの教科書にはズバリ15cmという具体的数字が記載されています。我々の調査結果では14.6cmであり、この値とほぼ一致していました。下腿切断の切断部位は教科書に従って、おのずとこの付近に設定されるものと考えられました。 6. 次に大腿切断者の断端長とその分布です。大腿部の長さに占める割合が60〜70%が一番多く、平均は63.5%、実際の長さでいうと18.1センチでした。 7. 切断年月日をもとに、切断した年代ごとに平均断端長をまとめたのがこのグラフです。これを見ると下腿切断の断端長は昔も今も変わりません。一方、大腿切断の方は長くなる傾向にあります。断端は長い方がよいという考えが浸透してきていることがうかがえます。 8. 教科書を見ますと、大腿切断長について具体的な数値はありません。今回の調査結果の平均断端長18.1センチは、平均値として妥当と考えられました。しかし、2000年代の平均断端長は22.5センチであり膝上のスペースはより狭くなっています。義足製作の立場から見れば、部品の導入や義足の膝軸を健側の生理軸と一致させるにはある程度のスペースが膝関節の上に必要になります。したがって大腿切断者の断端長はもう十分な長さに達しているのではないかということがうかがえました。 9. 以上、断端の長さについてご紹介しました。ただし、義足歩行を獲得するには、断端の長さだけではなく、皮膚の強さや筋力なども大切で、それによりどんな義足形式が適するかが決まります。詳しい内容はこちらの文献をご覧ください。