モデル事業の報告書
報告書の概要
【はじめに】
○ 高次脳機能障害とは、外傷性脳損傷、脳血管障害などの器質性脳病変の後遺症として、
- 記憶障害
- 注意障害(注1)
- 遂行機能障害(注2)
- 社会的行動障害(注3)
などの認知障害等を呈するものであり、
○ これにより、日常生活や社会復帰に困難を来す者が少なくない。
○ したがって、これらの者を支援するためのサービス提供のあり方について、知見を集積する必要がある。
【現状】
○ 高次脳機能障害の症状は、 一見して認識することが困難。
そのため、「ひとが変わった」、「なまけものになった」等の誤解を受けるケースもある。
○ 当事者及び家族においては、相談や対応に関する情報が不十分な状況。
○ 医療・福祉関係者においては、「高次脳機能障害」への共通認識、サービス提供の指針がなく、高次脳機能障害の特性に着目したサービス提供がなされているとは言い難い。
行政関係者、医療・福祉関係者など各方面の関係者による幅広い取組みが必要。
【調査概要】
国立障害者リハビリテーションセンター、12自治体の地方拠点病院等において、高次脳機能障害を有することにより、支援の必要性が高いと判断された者に対し、試行的に訓練や支援等を実施しながら、基礎的データを収集・分析。
○ 調査期間 平成13年8月24日平成15年1月14日
○ 対象者数 324名(うち、訓練対象者173名、支援対象者168名 重複あり)
○ 全登録者の状況
- 平均年齢 33.0歳(20歳代:38.3%、30歳代:24.7%)
- 性別 男性:78%、女性:22%
- 障害者手帳所持 50%(身体:46%、精神:10%、療育:2% 重複含む)
- 原因となる疾患等 外傷性脳損傷:80%(20歳代に多い)・脳血管障害:14%(50歳代に多い)
- 身体機能の障害 あり:64%
○ 高次脳機能障害の状況
- 症状 記憶障害:88%、注意障害:78%、遂行機能障害:74%、いわゆる社会的行動障害などの認知障害に属するもの:約50%
- 検査 画像検査により、原因となる脳病変が明らかなもの:92%(神経心理学的検査については、統一的に行われている検査法はなかった。)
○ 訓練(リハビリテーション)の状況
- 主に利用する機関 病院:62%、身体障害者更生援護施設:26%ほか
- 効果 注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害等は、5~10(調査期間中)%の者が改善。記憶障害等は、大きな改善はみられず。
- 多くの職種が関わっている。
○ 地域生活における支援の状況
- 主に利用する機関 病院:38%、身体障害者更生援護施設:28%、身体障害者福祉センターA型:9%、小規模作業所:9%、身体障害者通所授産所:8%ほか
- 当事者のニーズ 身体介助:27%、社会復帰支援:28%
- 主に支援している機関 身体障害者更生援護施設:20%、病院:19%、身体障害者授産施設:14%、小規模作業所:14%ほか
- 支援の調整機関 病院:43%、身体障害者更生援護施設:38%ほか
- 支援計画 平均4名が、30分~1時間をかけ作成
- 支援の内容施設利用、在宅支援、就学・就労等、多岐にわたる
【今後の予定】
平成15年度においては、引き続き、試行的に訓練や支援等を実施することにより、さらに知見を集積する。
以下の現時点における課題について、さらに検討を進める。
<今後の課題>
1.対応の体系化
受傷・発症から地域生活に至るまで、それぞれの時期における状態とニーズ等を踏まえた対応について、一連の流れとして整理する。
2.医療サービスに関する対応
- 原因疾患等の受傷・発症時(急性期)の対応
- 回復期の対応
- 高次脳機能障害の有無の診断
3.福祉サービス等に関する対応
- 社会福祉施設等における対応
- 地域における対応
- 就業・就学
- 権利擁護
4.適切な情報の提供
- 国民の啓発
- 行政、医療、福祉等の関係者への対応
参考:高次脳機能障害支援モデル事業 参加自治体、地方拠点病院等
- 北海道・札幌市(北海道大学医学部附属病院)
- 宮城県(東北厚生年金病院)
- 埼玉県(埼玉県総合リハビリテーションセンター)
- 千葉県(千葉県千葉リハビリテーションセンター)
- 神奈川県(神奈川総合リハビリテーションセンター)
- 岐阜県(木沢記念病院)
- 三重県(松阪中央総合病院・藤田保健衛生大学七栗サナトリウムリハビリテーションセンター)
- 大阪府(大阪府立身体障害者福祉センター)
- 岡山県(川崎医科大学医学部附属病院)
- 広島県(広島県身体障害者リハビリテーションセンター)
- 福岡県・北九州市・福岡市(久留米大学医学部附属病院)
- 名古屋市(名古屋市総合リハビリテーションセンター)
(注1)注意障害:ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりする。ふたつのことを同時にしようとすると混乱する。
(注2)遂行機能障害:自分で計画を立ててものごとを実行することができない。人に指示してもらわないと何もできない。いきあたりばったりの行動をする。
(注3)社会的行動障害:本中間報告書では、以下のようなものを指して社会的行動障害という。
- 依存性・退行:すぐに他人を頼るようなそぶりを示したり、子供っぽくなったりすること。
- 欲求コントロール低下:我慢ができなくて、何でも無制限に欲しがること。好きなものを食べたり、飲んだりすることばかりでなく、お金を無制限に遣ってしまうことにもみられる。
- 感情コントロール低下:場違いの場面で怒ったり、笑ったりすること。ひどい場合には、大した理由もなく、突然感情を爆発させて暴れることもある。
- 対人技能拙劣:相手の立場や気持ちを思いやることができなくなり、良い人間関係をつくることが難しいこと。
- 固執性:一つのものごとにこだわって、容易に変えられないこと。いつまでも同じことを続けることもある。
- 意欲・発動性の低下:自分では何もしようとはしないで、他人に言われないと物事ができないようなボーとした状態。
- 抑うつ:ゆううつな状態が続いて、何もできないでいること。良く尋ねれば、何をするかは分かっている。 など
報告書
- 平成13年度~平成15年度のまとめ(PDF:116KB)
- 中間報告書(平成13年度~平成15年度)(PDF:152KB)
- 平成16年度高次脳機能障害支援モデル事業実施報告
- 平成17年度高次脳機能障害支援モデル事業実施報告