発達障害のニーズにあった支援とは、具体的にどんなものがあるのでしょうか?
 発達障害の支援方法について学習していきます。

  • 環境を整えることの重要性
  • 視覚的な情報提示
  • ピア(仲間)による支援
  • 具体的・個別的なかかわり
  • 自己決定・自己選択

環境を整えることの重要性

 世界保健機関(WHO:World Health Organization)で採択された国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)では、障害は個人要因だけで生じるのではなく、環境要因との相互作用により生じるとしています。たとえば、車いす使用の人にはスロープが、視覚障害の人には盲導犬が社会参加の助けになるのと同じように、発達障害の人にも生活しやすい環境づくりが必要なのです。

 発達障害の人のための環境調整としては、さまざまなことが考えられます。書くことや計算が苦手な人のためにはパソコンなどの適切な機器、集団内の暗黙のルールを読み取りにくい人のためにはルールをきちんと説明すること、学校や職場などで混乱してしまったときには落ち着くためにひとりになれる居場所や時間が役立ちます。実際に困ったときにさりげなく助けてくれる人、相談できる場を準備しましょう。

視覚的な情報提示

 発達障害の人のなかでも広汎性発達障害の特性をもっている人の多くは聴覚的(ことばでいわれること)よりも視覚的(目で見てわかる)情報の方が理解しやすいといわれています。

 とくに作業や仕事の手順などを順番に番号を振って手順書に整理したり、カレンダーや予定表で先の見通しをもてるようにしたり、小黒板やボードに注意すべき点を書いておいたりという工夫が、支援する上で有効な場合が多いようです。いつもとちがった変更があるときも図のように視覚的に示すとわかりやすくなります。社会的な文脈やルール、「他者がなぜそのようにふるまったか?」などを文字やイラストにして示すことも有効です。

絵を用いた場合

絵を用いた場合の図

文字を用いた場合

文字を用いた場合の図

予定の変更を示す:同じ紙の上で修正する場合

予定の変更を同じ紙の上で修正した場合の図

予定の変更を示す:別の紙に新しく提示する場合

予定の変更を別の紙に新しく提示する場合の図

ピア(仲間)による支援

 学校や職場に適応するためには、教師や上司からの支援だけでは限界があります。仲間たちの理解や自然なサポートがプラスされることが大切です。学校生活で、クラスの友達がさりげなく手助けしてくれるようになるためには、教師がクラスの子どもたちに対して意識的な働きかけることが必要です。低年齢であればあるほど、その働きかけが重要な意味を持ちます。仲間に支えられている安心感があれば、不安にならずにすみますし、挑戦する気持ちが芽生え、失敗を減らすことにもつながるでしょう。 

具体的・個別的なかかわり

 発達障害の人は抽象的な指示や暗黙の了解、比喩的な表現や皮肉や冗談などの理解が困難な場合があります。集団のなかで誰かがある人に話しかけたことが自分にいわれているように感じてしまったり、逆に自分のことをいわれていてもわからないという人もいます。また何かに集中しているときに話しかけても注意が向けられないこともあります。

 指示や話しかける場合は注意がこちらに向いていることを確認して、できるだけ具体的な表現で伝えるようにします。

自己決定・自己選択

 あらゆる支援は、押しつけであっては意味がありません。本人が自己決定する機会を保障し、自己決定機会を設定していくことが支援の基本になります。自己決定は単にレストランで好きなメニューを選ぶというような単純なものから、複数の要素を考慮して選択しなければならないもの(たとえば、住まい選びの場合、家賃、広さ、清潔さ、駅からの距離、日当たり、周囲の環境など複数の要素が考慮に必要)まで、さまざまなレベルがあります。

 自己決定の力を育てるためには、困難場面に出会ったときに単にこちらから支援を提供するだけでなく、必要な支援を自分で選んだり、解決法の選択肢を提示して自己決定を行ったりする経験を積み重ねていくことが大切です。ただし、経験がない状態で、何もないところから、いきなり決定するよう言われても対応することは困難です。いくつか選択肢を設定し、その中から選ぶことから始めましょう。この場合も一つひとつの選択肢についての情報を本人にわかる形で伝えておく、たとえば、視覚的・具体的にメリットとリスクなどを明示しておくことは大切なことです。