音声コードをご存知ですか? この「センターだより」、各ページの角にモザイク模様のようなものが付いています。 携帯電話やスマートフォンのカメラで読み取る二次元コード(QRコード)に似ていますが、 それとはちょっと形が違うようです。そしてその模様の脇を見ると、紙の端はパンチ穴で切りかき状になっています。これはいったい何なのでしょう。 これは、「音声コード」と呼ばれる、印刷物の内容を収録したデジタルデータです。 郵便切手程度の大きさの音声コード1個に約800文字、すなわち原稿用紙2枚分程度の文字が収録されています。 これを専用の「活字文書読上げ装置」で読み取ると、印刷物の内容を音声で読み上げてくれるという仕組みになっています。紙の端の切りかきは、 視覚障害者が手で触ることにより、その場所に音声コードがあることを知らせる役割があるのです。 視覚障害者は、印刷物の内容を読み取ることが困難であったり不可能であったりするので、音声コードが普及すればより容易に情報を収集することが可能になり、 情報へのアクセシビリティ向上に役立つこととなります。具体的には、各種パンフレットや自治体広報など広く配布される印刷物のほか、 日本年金機構の「ねんきん定期便」などに音声コードが添付されていることが知られています。先進的な取り組みとしては、医療機関における薬の情報提供、 金融機関における商品等の情報提供などに音声コードが活用されている事例があるそうです。 活字文書読上げ装置は平成15年に「障害者日常生活用具」の給付対象として認定され、視覚障害者がこれを購入する際に代金の9割を自治体が補助する仕組みとなっています。 具体的な商品名としては、株式会社廣済堂の「スピーチオ」及びその後継機種、日本福祉サービス株式会社の「テルミー」などが知られています。 なお、株式会社廣済堂は音声コードのことを「SPコード」という商標名で呼んでいるようです。 なお、当センターの「センターだより」には採用していませんが、特定非営利活動法人日本視覚障がい情報普及支援協会という団体が、 近年に「Uni-Voice」という新規格の音声コードを開発しています。こちらは従来の音声コードとは異なり、専用装置ではなく、携帯電話やスマートフォンなど、 カメラ付き汎用端末での読み取りを前提として開発されたコードで、一部の携帯電話には読み上げソフトウェアが内蔵されているほか、 スマートフォン向けの読み取りソフトウェアが提供されています。平成28年7月現在、Android用、iOS用の読み取りソフトウェアが無償で提供されています。 近年では社会保障・税番号(マイナンバー)制度の「通知カード」に、「Uni-Voice」規格の音声コードが添付されました。 障害者基本法第1条には、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、 相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ことが理念として掲げられています。当センターは、国が運営する障害者支援施設として、 この音声コードのように障害者のアクセシビリティの向上に資する技術の普及を率先して図り、共生社会の実現を目指していきたいと考えております。