神戸視力障害センターの2年間を振り返って。 〜前所長からのメッセージ〜。 神戸視力障害センターで2年間お世話になりました所長の村上です。センターだよりに投稿するのはこれが初めてです。 しかもこのセンターだよりが発行されるのが29年の夏ですので前所長になりますが、私が神戸センターにいた2年間で感じたことをお話しして総括としたいと思います。 約10年前になりますが、私は厚生労働省の老健局というところで課長補佐をしていました。 そこで初めて、「高齢者の尊厳」、という言葉に触れ、尊厳ある生活を高齢者施設で送っていただけるための実行部隊の最前線におりました。 そしてユニットケアという新しいケアの手法が生まれ、その推進役として東奔西走したのを今でも鮮明に覚えています。 「高齢者が地域での暮らしから施設での生活へと移行するとき、3つの『苦難』を体験し、さまざまな『落差』を感じることになる。」、と指摘した、 故外山義先生の著書にショックを感じ得ませんでした。第1の苦難は、施設に入る原因そのものによる苦難です。 第2の苦難は、みずからコントロールしてきた居住空間システムの喪失です。 第3の苦難は、施設という非日常空間に移ることにより味わうさまざまな「落差」です。 この、「落差」、とは、「空間」、「時間」、「規則」、「言葉」、の落差で、最大の落差は役割の喪失です。 これらのさまざまな落差を埋め、利用者が、「自分」、を取り戻すことができる一つの方法がユニットケアであったのです。 このシステムは新しい概念でもあり、当時は賛否両論で推進派の村上は施設廃止論者の危険人物などと言われたり、 2chで話題になったこともありましたが、今やユニットケアは当たり前、多症室の高齢者施設でも病院でもどんどん取り入れられています。 そんな老健局時代を過ごし、いろいろと経由して2年前に神戸視力障害センターに着任しました。 そこで感じたのは???です。高齢者の施設と障害者の施設のすべてがイコールでないことは理解しています。 しかし、センターの基本理念には、「私たちは、利用者の基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしいサービスを提供します。」、とあります。 職員一人ひとりがこの「利用者の尊厳」ということを改めて考え、センターのさまざまな落差を埋めていく努力が必要だと痛感しました。 はなし足りないのですが紙面の関係でもはやここまでです。この2年間の総括が多くの利用者や職員の目にとまり、皆さんの「気づき」があって、 そして何より利用者にとって利用してよかったと思われるようなセンターに変わっていただくことを切に願っております。2年間お世話になりました。 平成29年3月31日。  村上 洋二。