〔更生訓練所情報〕 |
平成16年度理療教育課程第25回入所式 |
理療教育部教官 乙川 利夫 |
4月13日は、各地で夏日を記録した前日のなごりで暖かいというよりは暑さを感じる
ほどの陽気だった。その日、第25回理療教育課程入所式が行われた。今年度の新入所者は、
専門課程31名、高等課程9名の計40名であった。ここ何年か入所者数は減少傾向にある。
その原因が医療の進歩や現職復帰の増加であれば、同じ視覚障害をもつ者としては喜ば
しい限りである。
氏名点呼に対して返事をする声に、未知のことに臨もうとする不安と緊張が感じられた。
しかし、新入所者代表は力強く理療教育課程で学習する決意を述べていた。
式辞の中で、所長は次の3点を強調された。「自らの健康管理をしてほしい。」
「新しい学習手段を探してほしい。」「お互いに支えあい、思いを職員に話してほしい。」
理療教育部に所属する私は、これらすべてに大きくうなずいていた。そして、その入所者
とともに学習し、話し相手になるのは誰でもない自分であることを再確認した。
理療の技術と知識を持って国民の健康を維持することは誇らしい仕事である。しかし、
まず自身の健康管理ができなくては他人の健康を守ることもできない。入所者の中には
糖尿病など、自身の健康のコントロールに困難を有する者も多い。センターでは「健康
管理手帳」を配布し、入所者の自覚を促そうとしている。紺屋の白袴にならぬよう
お互いに注意したい。
これまで100%視覚に頼ってきた者が、視覚障害を負えば従来の方法では学習ができない。
点字を習得し、録音教材を利用し、ハイテク機器を活用するなど、新たな学習手段を身に
付けなければならない。自分に適した方策を探せるかどうかが学習の鍵を握る。
昨年入所者自治会の機関誌に「理療を学ぶことが目的なのだから、そのために時間を
とられるのは当然だ」という趣旨のことを書いたことがある。とは言え、学ぶということ
は苦しく、様々なストレスを受けるものである。将来に対する不安を抱いたり、ままならぬ
日々の学習に悩んだりすることもあるだろう。そのとき助けになるのは友人や先輩と話す
ことである。話してみれば不安や悩みをもつのは自分だけではないことがわかり、良い
アドバイスをもらえることもある。職員にも思いを話してほしい。話すことによって
それまで心をとらえていたことが消え去ってしまうことは多い。どんなことでも遠慮せず
話してほしい。
理療教育部では、これまで実施してきた学習手段の確立のための調査を発展継続する。
これは更生訓練所運営方針にうたわれた「学ぶ力の向上」にあたる。さらに、今年度から
は「教える体制の見直し」として、習熟度別学級編制も試行することとなった。いずれも
入所者個人個人の能力に応じた環境の整備を目的とするものである。もちろん、これらは
一朝一夕に達成されるものではない。しかし、1歩ずつ良い方向へ前進すべく部全体として
取り組もうとしているところである。
3年後あるいは5年後に笑って巣立てるよう、送り出せるよう、今年度の授業を始めたい。