〔学院情報〕
平成16年度 言語聴覚士研修会を終えて
執筆:研修副担当責任者
学院 言語聴覚学科教官 阿部 晶子


 平成16年度言語聴覚士研修会を、12月1日(水)から3日(金)までの3日間にわたって 開催いたしました。本研修会は平成14年に「言語聴覚士研修会」としてスタートし、 毎回テーマを変えて行ってきました。今回、「高次脳機能障害のリハビリテーション」を テーマとした背景には、平成16年の年初に、高次脳機能障害の診断基準がはじめて示されたこと、 また、平成16年度の診療報酬改定において、言語聴覚療法の対象疾患である、急性発症した 脳血管疾患等の中に、高次脳機能障害が加えられたことがあります。 今後、高次脳機能障害者の支援は、言語聴覚士の職域として、これまで以上に重要な位置を 占めることは間違いありません。このような時期に、本テーマの研修会を行うことは、 非常に意義があると考えました。
 そこで、今回の研修では、高次脳機能障害学の分野で、中心的な役割を果たしておられる 外来講師の先生をお迎えして、高次脳機能障害概論、痴呆、右半球損傷による高次脳機能障害 についてご講義いただきました。また、本センターの先生方にも内部講師としてご協力いただき、 高次脳機能障害支援モデル事業と取り組みの実際をご紹介いただきました。 講師の先生方のお話は、いずれも豊富な資料をもとにした具体的な内容でした。 質疑応答も、時間を十分に取ったこともあり、積極的に行われ、充実した研修会になりました。 時機を得たテーマ・内容であった研修会に対して、多くの方々から感謝と今後への期待の言葉を いただくことができました。
 今回の研修会の参加者は117名で、定員を大幅に上回り、この分野に対する関心の高さを 認識いたしました。参加者は、経験年数5年未満の言語聴覚士が全体の67%と3分の2を占め、 そのなかでも経験年数1年未満の言語聴覚士が21%と非常に多く、若い方々の研修に対する ニーズの高さが推測されました。同時に、経験10年以上の参加者も22%と多く、この分野に 関する研修の重要性を改めて認識しました。一方、研修会終了後のアンケートでは、 基礎から学べて良かったという意見と、基礎よりもアプローチの実際をもっと聞きたかったとする 意見の両方をいただきました。これらの意見の違いは、経験の短い言語聴覚士と、長い言語聴覚士 とで、希望する内容が異なることを反映しているのではないかと推測されました。 今後、経験の短い言語聴覚士を対象とするのか、経験のある言語聴覚士を対象とするのか、 より対象を明確にした研修会を企画する必要性を感じました。
 最後に、3日間の研修会を、たくさんの方々のご指導とご協力をいただき、無事に終えることが できましたことを、心より御礼申し上げます。また、受講生の皆様方が、それぞれの職場で、 ますますご活躍されますことを祈念いたします。



「平成16年度 言語聴覚士研修会」の様子


 
平成16年度 言語聴覚士研修会日程表
 

テーマ:高次脳機能障害のリハビリテーション
月日 午前 午後
12月
1日
(水)
開講式・オリエンテーション
(9:00〜9:30)
 
(1) 高次脳機能障害概論
(9:30〜12:00)
 東京都神経科学総合研究所
 リハビリテーション研究部門
  部門長          石合 純夫
(2) 痴呆
(13:30〜15:00)
 国立精神・神経センター 武蔵病院
  室長          高山 豊
(3) 痴呆によるコミュニケーション障害
(15:15〜16:45)
 国立精神・神経センター 武蔵病院
  言語聴覚士         植田 恵
2日
(木)
(4) 高次脳機能障害支援モデル事業について
(9:30〜10:30)
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
感覚機能系障害研究部長    中島 八十一
 
(5) 高次脳機能障害者に対する言語療法
 〜コミニュケーションの問題を中心に〜
(10:45〜12:15)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
  第二機能回復訓練部
言語聴覚士        餅田 亜希子
(6) 外傷性脳損傷者の医学的管理とリハビリテーション
(13:30〜14:30)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
診療部 神経内科      三輪 隆子
(7) 高次脳機能障害者への作業療法
(14:45〜15:45)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
  第一機能回復訓練部
作業療法士長        森田 稲子
(8) 脳損傷者の記憶障害に対するアプローチ
(16:00〜17:00)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
  医療相談開発部
主任心理判定専門職    四ノ宮 美恵子
3日
(金)
(9) 右半球損傷による高次脳機能障害
(9:00〜10:30)
 神戸大学 医学部 保健学科
教授          関 啓子
 
(10) 右半球損傷によるコミュニケーション障害
(10:45〜12:15)
 財団法人脳神経疾患研究所附属
  総合南東北病院 神経心理学研究部門
科長          佐藤 睦子
(11) コミュニケーション障害の評価法について
(13:30〜14:00)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
言語聴覚学科 教官       阿部 晶子
(12) 高次脳機能障害に対するチームアプローチ
〜国立身体障害者リハビリテーションセンター
病院におけるアプローチの実際〜
(14:15〜16:45)
 
 (事例報告と質疑応答)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
言語聴覚士         餅田 亜希子
言語聴覚士         三刀屋 由華
 (司会)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
教官          阿部 晶子
 
閉講式
(16:50〜17:00)