カラー魚拓との出会い
元理療教育部理療指導室 室長 川政 勲


 函館では、自分で釣らなくても美味しい魚はすぐ手に入る。
 塩原に転勤して一番辛かったことは、自分で釣らなければ美味しい魚が食べられないこ とであった。従って福島まで片道3時間かけて釣りに行ったものである。
 しかし、しょっちゅう行ける訳ではないので「NHKの釣講座」で他人の釣っ ているのを見ているしかなかった。そのテキストにカラー魚拓の作品が載っていた。「き れいだなーやりたいなー」と羨ましく思っていた。
 伊東重度障害者センターに転勤し思いもかけず巡り会うことができた。
 市の広報誌に「カラー魚拓講座開催のお知らせ」を見つけ、真っ先に受講申し込みを行 い、カラー魚拓を始めることとなった。
 釣も伊東で名人と知り合いになれて、出勤前に出かけ、伊東湾内の鯛や烏賊、カマス、 メジナ等36種類もの魚を釣った。その中には「竜宮の使い」という真っ赤な魚もあった。 その時はまだ習っていなかったため捨ててしまった。今考えると惜しいことをした。
 伊東では約2年間しか学ばないうちに函館に転勤することとなり、函館の魚拓研究会に 加わったが半年で会が消滅し、一人でやらざるを得なくなった。
 魚拓を作るには材料の魚を釣らなければならない。食べるのが目的なら近くの魚屋へ行 けば新鮮な魚は手に入る。しかし、魚拓用の魚となると、新鮮で、きれいでしかも傷つい ていないことが条件となる。
 釣った魚が魚拓にしたいようなものであればその時から魚拓作りが始まる。
 傷つけないように、鱗がはがれないように濡れた新聞紙に丁寧に包み、クーラーボック スに入れる時にも気を使う。時に鮒や鯉等は鱗が1枚でも剥がれていれば商品価値はゼロ である。
 北海道や東北では淡水魚の方がきれいな魚が多い。
 岩魚、オショロコマ、山女魚、鮎、ウグイカジカ、泥鰌、鮒、鯉等がいる。
 岩魚は1時間も車で走れば30センチ以上の形が釣れる。しかし、大物が釣れるのは羆が 出るような危ない場所が多い。危険を顧みず大物を釣りたい欲求に負け何度も釣行し、40 センチを始め、35センチ位のものは何匹も釣り上げ、魚拓にして残している。
 羆にも2回遭遇した。1度は子連れの母熊と遭遇したが、幸い車に乗っていたので難を 逃れた。もう一度は河原へ降りた途端に20メートルほど先にぬっと現れ、慌てて車に戻っ て難を逃れた。いずれもタイミングがずれていればやられていたはずであった。
 展覧会を開くと「きれいだ」という声と「初めて見た」という声が多く聞かれる。別府 でも、所沢でもそうであった。
 北海道や東京、伊豆半島などではカラー魚拓をやる人はたくさん居て盛んであるが、ま だまだ未開地がたくさんあるようである。
 展覧会を開くたびに習いたいという希望者があり、5人以上の希望書があれば教室を開 いて来た。
 所沢では函館時代に教えていた方と同僚に教えていた。並木祭でも好評だった。
 魚だけではなく、貝やカニ、昆虫や植物も利用でき、女性でも釣りをしない人でも取り 組める魅力もある。
 たくさんの方に取り組んでみていただきたい趣味である。

ご自身の作品を前に微笑む川政氏