〔更生訓練所情報〕
障害者自立支援法について
指導部指導課 主任生活指導専門職 三好 尉史



 障害のある人が地域で安心して生活できる社会を目指し、平成17年11月に障害者自立支 援法が公布されました。ここでは障害者自立支援法の概要と法施行により、国立身体障害 者リハビリテーションセンター更生訓練所がどのように変わるのかを説明いたします。


○ 障害者自立支援法について
  障害者自立支援法の基本となる考え方は図1のとおり、(1)障害の種別(身体、知的、 精神)にかかわらず必要とするサービスを利用できるように施設・事業を再編、(2)利用者 本位のサービス体系に再編、(3)雇用施策との連携による就労支援の抜本強化、(4)障害程度 区分により支給決定の透明化・明確化、(5)安定的な財源確保の5つのポイントで整理する ことができます。
  利用者負担の仕組みと障害に係る自立支援医療(公費負担医療)は平成18年4月、福 祉サービスの体系や補装具と日常生活用具等の制度は平成18年10月から変わることになっ ており、障害施策はこれまでにない大きな転換期を迎えようとしています。


図1 「障害者自立支援法」のポイント

○ 障害者自立支援法と更生訓練所
  今回の障害者自立支援法の大きな柱の一つに「利用者本位のサービス体系に再編」が あります。障害者自立支援法では、これまでの障害種別ごとに提供されてきた33種類の施 設、事業体系を、6つの日中活動と住まいの場に再編しています。更生訓練所の指導部・ 職能部が行う事業は、日中活動の自立訓練事業と就労移行支援事業、住まいの場の施設入 所支援を、理療教育部が行うあはき師の養成事業は、資格取得型の就労移行支援事業と施 設入所支援を提供する障害者支援施設として埼玉県の指定を受けて運営が行われることに なります(図2参照)。


図2 利用者本位のサービス体系

 障害者自立支援法により利用者負担の見直しが行われるこの4月から、新事業に円滑に移行できるように実施可能なサービスは試行的に行い、国立施設として先導的な役割を果たしたいと考えています。
 次に更生訓練所の新事業の内容と新事業に向けた取組の一部をご紹介します。先ず、理療教育部が行う資格取得型の就労移行支援事業(あはき師の養成事業)は、専修学校という性格もあることから大きく事業内容の変更は行われませんが、新事業の展開に当たっては良質なサービスの提供を主眼に置いています。
 指導部と職能部では、自立訓練事業と就労移行支援事業を有機的に組み合わせた支援体制を整え、重度かつ重複の障害のある方の就労が実現できるような質の高いサービスを目指します。これまでのように職業的な知識や技能の習得だけに着目するのではなく、基本的な労働習慣の確立や訓練終了後の地域生活でも主体的に生活できるようエンパワメントを高めることを目標に新事業のプログラムを準備しています。また、センター各部門の協力のもと、センター内職場体験実習を実施することになっており、センター全体での横断的な事業展開を目指しています。そして、新事業に向けた大幅な組織再編にも取り組むことにしています。事業体系がいくら変わっても、これまでどおりの縦割りの組織では根源的な問題は解決できず、将来を見据えた変化に即応できる体制作りは困難です。したがって、指導部と職能部は組織を一体化し、職務内容も固定化せず一人の職員が複数の役割を担う体制にすることで、柔軟かつ機動的な組織体制の確立を目指しています。
 最後に障害者自立支援法による新事業に向けた更生訓練所の取組は、まだ緒についたばかりです。障害のある方々に更生訓練所のサービスを選択してもらえるよう、引き続き訓練プログラム・支援方法の検討・充実を図り、その成果を全国に発信していきたいと考えています。