〔更生訓練所情報〕
就労支援地域ネットワークの整備にむけて
更生訓練所職能部長 田村 一


 当更生訓練所は、平成18年10月より障害者自立支援法に基づく「指定障害者支援施設」としての指定を埼玉県から受け、昼間実施サービスとして自立訓練(機能訓練)、同(生活訓練)、就労移行支援、同(養成施設)の4事業、及び夜間における居住支援としての施設入所支援サービスを提供することとなり、これまで以上に利用者のニーズに対応した質の高い障害福祉サービスの提供を目指して、継続的に体制の整備等を進めているところです。
 特に就労移行支援においては、指定基準にも明記されていることですが、就労支援の地域ネットワークを整備することを重点課題の一つとして位置づけておりまして、これまでの関係機関、事業所等との連携実績を踏まえ、新たなネットワークの構築に取り組んでいくこととしております。埼玉県内を中心とする近隣地域におけるネットワークはもちろんのことですが、利用者の方が全国各地域からきていただいていることを踏まえると全国規模での構築も検討しなければならないとも考えております。
 福祉施策における就労支援の強化は、障害者自立支援法のポイントの一つであり、働くことが身体の自立と尊厳の保持という福祉の目的を実現することに有効であるとする考えに基づくものでありましょう。このため、各自治体が作成する「障害福祉計画」においては、福祉担当部局が労働担当部局と連携の上、平成23年度中に福祉施設から一般就労に移行する者を現在の4倍以上とし、その達成のために、現在の福祉施設利用者のうち2割以上が就労移行支援事業を利用、福祉施設から一般就労へ移行する者について、全ての利用者がハローワーク、障害者就業・生活支援センターによる支援を受ける、などを数値目標として盛り込み、その実現に取り組むこととされているのです。
 施策の連携という面では福祉と雇用だけでなく、教育の分野も視野に入れたネットワークの構築が求められています。利用者にとってはライフステージのそれぞれの段階を通じて、必要な時期に、適切な就労に関する支援を受けることが可能であれば、安心感を持って、さまざまなステップにチャレンジでき、利用者個々のニーズにあった就労を実現することができるとする考えに基づくものです。
 こうした考えの中において、では就労移行支援が提供する支援サービスの内容がネットワークの中でどういう役割を果たすのか、ということになりますが、現段階では、「基礎訓練期」における適性や課題の把握、集中力、持続力等の習得、「実践的訓練期」及び「就労マッチング期」における職業習慣の確立、マナー、挨拶、身なり等の習得、職場見学、職場実習、求職活動、就職後の「フォロー期」における継続支援などが想定されており、それぞれの段階で雇用施策との連携が図られることが期待されています。
 ネットワークの意味するところは構築それ自体が目的ではなく、ネットワークを基盤として、利用者個々のニーズにあった各専門分野からのきめ細かい就労支援が一体的に効果的に統合されて提供されることが目的であることを明確に意識しておかなければなりません。そういう意味で、就労移行支援サービスを利用していただく際の「アセスメント」や「個別支援計画の作成」及び「モニタリング」「代償手段の獲得」などの事業所としての具体的取り組み場面で、ネットワークを形成している関係の支援機関、事業所等とともに、個々の利用者の意向、適性、取り組んできた学習や訓練、獲得された力などの情報の共有化と、効果的、効率的な訓練、生活支援サービスの提供に際しての役割分担が明らかにされることが重要なポイントとなるものと考えております。
 当更生訓練所のこうした取り組みに、あらためて利用者及びご家族の方、並びに関係の企業、各支援機関、事業所の皆様方のご理解とご協力をお願いいたします。



図1 雇用・福祉・教育のネットワーク(利用にとって)
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図2 都道府県・圏域における就労支援ネットワーク
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図3 就労移行支援事業と労働施策の連携
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