〔国際協力情報〕
ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業研修員紹介
管理部企画課


 

ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の研修員として5月7日(水)から5月30日(金)まで当センター学院の手話通訳学科で研修を受けたVu Thuy Linh(ヴゥ トゥイ リン)さんにお話を伺いましたのでご紹介いたします。
(写真1)ヴゥ トゥイ リンさん


(1)   まずは、自己紹介をお願いします。
 私の名前はVu Thuy Linh(ヴゥ トゥイ リン)と申します。出身は、ベトナムの首都ハノイで、1980年生まれです。1987年から1995年の9年間、Xa Dan聴覚障害者初等学校で学びそのあとしばらく家事手伝いなどをしていましたが、専門技術を学ぶためハノイにある専門学校Hoa Sua Schoolに入学して刺繍や洋裁の技術を習得しました。現在は当スクールの教師として、芸術や刺繍、ベトナム手話などを教えています。
(2)   リンさんは、聴覚障害者で普段手話でコミュニケーションをしていますね。手話はどのようにして覚えたのですか?
XaDan聴覚障害者初等学校では、口話での教育のため、手話を教えてくれませんでした。そのため学校の友人との会話を通して手話を習得しました。そのあと海外のろう者と知り合い、アメリカ手話や国際手話を覚えました。
(3)  リンさんは、日本手話もできますね。どこで覚えたのですか?
昨年9月にダスキン研修員として日本に来た時に3ヶ月間日本手話の研修を受け、そこで覚えました。日本の手話を使っているとよく日本の聾者と間違われるのですが、技術的にはまだまだです。
(4)  日本とベトナムの文化の違いなどを感じることがありますか?
そうですね。ベトナムでは魚介類はナマでは食べません。日本ではナマで食べるのでこれはカルチャーショックでした。日本の「寿司」はベトナムにはありません。
それとこれは文化の違いではありませんが、ベトナムでは雪が降りません。ですので、日本に来てはじめてスキーを体験して、これはとても楽しかったですね。
(5)  ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業に応募した理由を教えて下さい。
日本における聾教育のシステムやろう者に対する情報保障の現状、そして日本の手話通訳者の養成がどのように行われているのかについて学びたいと思ったからです。
(6)  学院での研修も2週間あまりが過ぎました。研修の成果はありましたか?
学院では、1年生と2年生の授業の流れを見させていただきましたが、きちんとカリキュラムが体系化され整備されていてすばらしいと思いました。ベトナムにはこのような手話通訳者養成システムはありませんので、本当にうらやましいと思います。
また、手話によるコミュニケーションの基本―表情とか身体の動かし方、聾者の言っていることを正確に伝えることの大切さ、通訳者の守らなければならないルール、マナーなども教えていただきました。これまでに手話を教える技術を学んだことがなかった私には、とても参考になっています。
(7)  研修の成果を今後どのように活かしていきたいと考えていますか?
この6月でアジア太平洋障害者リーダー育成事業の研修を終えベトナムに帰りますが、日本で勉強したことをベトナムの聾者に伝えたいです。
ベトナムには日本の聾唖連盟のような聾者の運動組織がありませんし、自動車の免許が取得できない、通訳者の養成システムがない、聾学校が非常に少ないなどなど改善すべき点がたくさんあります。またベトナムの聾者は、知識や情報の面でも非常に遅れています。
日本にいる間に東京の聾学校を見学させていただきましたが、先生が手話を使って授業をし、手話でのコミュニケーションが活発に行われているのを見てとても驚きました。また筑波技術大学で行われている「情報遠隔システム」は遠方でもインターネットでつながり手話通訳の画面が見られるというものでとても感動しました。
こうした日本の技術や聾教育、そしてセンター学院の手話通訳者養成システムのすばらしさなどは、是非ベトナムに戻ってから伝え、社会に広めていきたいと思います。
(8)  最後に何かメッセージがありましたらお願いします。
 このようなすばらしい研修の機会を設けていただいた日本障害者リハビリテーション協会並びに国立身体障害者リハビリテーションセンターの職員の皆様、そして熱心に手話の指導方法についてレクチャーをしていただいたセンター学院の教員の皆様に感謝したいです。本当にどうもありがとうございました。
 −こちらこそ研修期間中お忙しい中、どうもありがとうございました。今後のご活躍に期待しています。頑張って下さい。(このインタビューは、5月23日(金)に行いました。)

(写真2)ベトナム手話の模擬授業を行うリンさん (ベトナム手話の模擬授業を行うリンさん)