〔平成22年度重点事項② 部門間連携事業〕 |
健康増進センターについて |
〔背景〕 |
心身の良好な健康状態は、障害のあるなしに係わらず人々の社会参加を支える基盤である。障害を持つ人々にとって、健康増進、体力向上、疾病の予防は、疾患の治療、機能の回復と同等に重要であり、リハビリテーション医療、社会生活技能、職業技能の修得の過程を終了し、社会生活を営むようになってからの機能維持、向上には、日常的に身体活動を行う必要がある。 スポーツは、体力向上、機能の維持、健康増進など日常生活の機能的な安定に貢献する。更に、スポーツ、娯楽の機会は、生活を豊かにし、QOLの向上にも寄与する。 近年、パラリンピックなどにおける障害者アスリートの活躍が、障害者のみならず広く社会の関心を集め、障害者の持つ可能性に対し賞賛の目が注がれている。 このような活躍は、障害者を勇気づけるだけでなく、健常者に対しても障害者の持つ可能性に対し注目を集め、その活躍を期待する気持ちを喚起している。しかし、愛好家からトップアスリートまで、障害者がスポーツや運動を行った場合のトレーニングやコーチング理論に活かされる情報や方法論は確立されたものは少なく、現行の理論や手法はそれぞれが独自性の強いものであり、多くの障害者に活用できるものではない。また、健康に関する運動やスポーツの関連性、その効果など医科学的見地からの取り組みは限られた機関・組織で行われているに過ぎない。 障害者スポーツにおいても、その競技力を高める研究開発が求められ、その結果が、多くのスポーツを愛好する障害者および指導者に還元できる先見的なモデル事業やそれを組織的・専門的に行うことが必要とされている。 このようなことから、センターが障害を持つ人々の健康増進のための保健・医療・体育プログラムの開発、スポーツの場の開拓、人材育成事業を通して、障害者スポーツ活動の浸透を図ることは共生社会の構築に貢献するものと考えられる。 このような社会背景の認識に立って、健康づくり事業を国立障害者リハビリテーションセンターが取り組むべき主要な事業と位置付けることとした。 |
〔目的〕 |
草の根レベルからトップアスリートレベルまで、幅広く障害者スポーツに関する研究開発、活動支援を行い、健康増進から競技力向上まで、障害者の可能性を最大限に追求することにより、障害者のQOLの向上とそれをコーチングする人材の育成および指導技術者の養成を図ることである。 |
〔事業の概要〕 |
病院に新設される健康増進センターを拠点に、関係部署が連携して健康増進事業とスポーツ支援事業を推進し、障害者の健康づくり、QOLの向上に貢献する各種プログラムの研究・開発を行う。 |
1 | 障害者健康増進支援 | ||
(1) | 目的 | ||
障害者の生活習慣病の実態を把握し、その予防、生活習慣改善プログラムを開発し、当事者の積極的参加を促し、健康づくりの環境整備を促進する。 | |||
(2) | 事業内容 | ||
① | 自立支援局利用者の健康管理および健康づくり支援 | ||
② | 障害者の健康診断、各種人間ドック、特定検診・保健指導の実施と二次障害予防プログラムの開発 | ||
③ | 障害者の健康づくり支援プログラムの開発 | ||
* | 栄養・食生活の改善、身体活動・運動習慣の定着、心の健康、たばこ・アルコール対策、代謝・循環器疾患対策 | ||
④ | 障害者の健康増進に関する啓蒙 | ||
* | 健康教室の開催(運動・栄養・休養) | ||
⑤ | 障害者の生活習慣病に関する調査・研究 | ||
⑥ | 介護者のための介護負担軽減プログラムおよびケアシステムの開発 | ||
* | 腰痛予防プログラム、介護技術の講習 | ||
(3) | 対象者 | ||
* | 自立支援局利用者 | ||
* | 病院外来および入院患者 | ||
* | その他 | ||
(4) | 運営体制 | ||
健康増進センター医師、看護師、運動療法士、研究所研究者を中心にチームを編成し運営。 | |||
(5) | 平成22年度事業計画 | ||
① | 自立支援局利用者への健康増進サービスの提供 | ||
* | 入所時健康診断の受託、健康管理指導、メタボリックシンドローム対策の実施 | ||
② | 健康教室を充実させ、健康増進に関する啓蒙活動を実施 | ||
③ | 「健康・スポーツ外来」を開設し、診療体制を整備 | ||
④ | 在宅障害者の健康づくり支援プログラムの試行 | ||
⑤ | 障害者の健康管理における基礎的なエビデンスを集積 | ||
* | 研究所運動機能系障害研究部と連携 | ||
2 | 障害者スポーツ支援 | ||
(1) | 概要 | ||
障害者スポーツの普及、障害者スポーツ振興、競技力向上のための活動を通して、障害者の社会参加を支援する。 | |||
(2) | 事業目的 | ||
障害者スポーツプログラム提供環境の整備、障害特性を生かしたプログラムの開発を通して障害者の健康づくり環境の整備を図るとともに、障害者スポーツ競技力の向上のための科学的トレーニング環境(障害者スポーツ科学トレーニングセンター(仮称))の整備を目指す。 | |||
(3) | 事業 | ||
① | 障害者スポーツに関わるメディカルサポート | ||
* | メディカルチェック、コンディショニング、リコンディショニング等の支援 | ||
* | 障害者アスレチックリハビリテーションプログラムの提供 | ||
* | 大会・遠征等へのメディカルスタッフの派遣協力 | ||
② | トレーニング環境の提供及び整備 | ||
③ | 障害者スポーツ支援プログラムの開発 | ||
* | 科学的トレーニング方法、測定・評価方法など | ||
④ | 障害者スポーツに関する情報収集と提供 | ||
* | 関連団体との協力のもと行う。 | ||
⑤ | 障害者スポーツに関する調査・研究 | ||
⑥ | 障害者スポーツ医科学に関する人材の養成およびスキルアップ | ||
(4) | 対象者 | ||
* | 障害者スポーツ選手および愛好家 | ||
* | 障害者スポーツ指導者および興味のあるもの | ||
* | 医療関係者 | ||
* | その他 | ||
(5) | 運営体制 | ||
* | 健康増進センター、運動療法士、研究所、学院職員が参加したチーム | ||
(6) | 平成22年度事業計画 | ||
① | 「健康・スポーツ外来」開設 | ||
* | メディカルチェック、 | ||
* | スポーツ障害、障害診療 | ||
* | スポーツ復帰リハビリテーション | ||
② | 障害者スポーツ支援事業 | ||
* | 練習・合宿施設の提供 | ||
③ | 関連団体との関係強化 | ||
* | 厚生労働省(自立支援振興室、施設管理室)、日本障害者スポーツ協会および日本パラリンピック委員会(JPC)との情報交換 | ||
(岩谷 力) |