〔巻頭言〕

国立障害者リハビリテーションセンター
研究所について

研究所 企画調整官 堤 裕俊



 私は、昨年4月から国立障害者リハビリテーションセンター研究所に配属され、1年と数ヶ月経ちました。その間に研究所で感じた事及び研究所の紹介をしたいと思います。まず、最初に感じた事は、研究職と事務職との考え方が基本的に違っている事でした。
 具体的には、研究は個人が中心となって行うものであり、事務は組織的に行うものと基本的な考え方が異なっています。また、事務は決められた規則等で仕事をしますが、研究は、自由な発想に基づくものでないと、より良い研究とはならない面があり、決まったルールに基づく業務とは、ある意味、正反対な面もあると感じました。
 次に、各研究部門でどのような研究を行っているのか、簡単に紹介します。


運動機能系障害研究部
   身体障害者の運動機能障害に関して、リハビリテーション技術、障害者の障害予防の研究を行っています。具体的には、①損傷後の神経の機能回復の促進に関する研究、②神経の再生の研究等を行っています。歩行トレーニング装置を活用した研究から動物実験による神経再生まで、幅広く研究を行っています。
感覚機能系障害研究部
   感覚器障害と感覚認知障害に関して、早期発見・評価方法、コミュニケーションや社会参加する方法の研究を行っています。具体的には、①マスコミにも取り上げられている、脳波の読み取り、機器の操作、コミュニケーションを行う研究、②吃音の病態解明と治療法の研究等を行っています。fMRI等を活用して、脳の活動状況を覗き、研究を行っています。
福祉機器開発部
   障害者が必要とする福祉機器の研究開発、試験評価の研究を行っています。 具体的には、①規格が規定されてない義肢装具部品の試験評価の方法を開発する研究、②認知症者の記憶等を補う情報呈示装置の開発研究等を行っています。
障害工学研究部
   センサー工学、遺伝子工学、ロボット工学などの先端技術をリハビリテーション領域に導入し、機能障害の代替、補償、回復の基礎技術の開発研究を行っています。具体的には、①脳波測定器に使用する電極(頭皮に接触する部分)の研究、②網膜色素変性症の遺伝子の解析を行い先天性視覚障害の遺伝子診断法の研究等を行っています。
障害福祉研究部
   社会科学・行動科学・情報科学等の学際的な取組みにより、環境や制度が人の意識や行動に及ぼす影響に関する研究を行っています。具体的には、①塩原視力障害センターで実用化されたパソコン訓練のためのマルチメディアを活用した視覚障害者用教育訓練システムの研究、②障害者福祉を経済学的な観点から障害者、事業者、国民それぞれが経済的に破綻しないようにする制度の研究等を行っています。
義肢装具技術研究部(旧補装具製作部)
   義肢と装具の製作・修理のための研究開発を行っています。具体的には、①義肢装具のニーズの把握及び技術向上のための研究、②大腿義足で階段を交互歩行で上がる人の動作を解析し、大腿義足使用者の訓練方法を見直す等の義足の階段歩行に関する研究等を行っています。
発達障害情報センター
   発達障害に関する情報を収集し発達障害のある人・家族等に対して、発達障害に関する信頼できる情報提供を行っています。


 以上、研究所の各部門の紹介でした。研究の方法等はそれぞれ違いますが、障害者の社会復帰、社会参加のためのリハビリテーションにおける問題を解決することを目的に研究開発を行っています。
 これからも、研究所へのご理解とご協力をお願いいたします。