〔魚拓シリーズ35〕
「ノコギリザメ」
元更生訓練所理療指導室長 川政 勲


 ノコギリザメはノコギリザメ科の魚。北海道から沖縄諸島に分布し、沿岸の砂泥質海底付近に生息する。
 体は平らで、吻は剣状に長く突出し、平らで、その両側に大小の棘が一列に並び、のこぎり状である。吻のほぼ中央部に左右一対の長いひげがある。
 のこぎり状の吻部を使って、海底に生息する小型魚類、甲殻類、軟体類などを主に捕食している。胎生種で、胎子数は12尾程度。底引網、底刺網、底延縄などにより、100〜800メートルの海底付近で漁獲される。延縄漁は冬がシーズン。
 伊東では冬になると超高級魚のアラ釣りのシーズンを迎える。まだ週休2日制の無かった頃、休みの土曜日の朝、乗合船でアラ釣りに挑戦した。同僚のI氏の竿が大きく曲がり、船中の皆の羨望の視線を集め、私も期待に胸を弾ませた。しかし期待に反し上がってきたのはノコギリザメであった。
 当時魚拓を習い始めて1年しか経っておらず、1メートル以上もあるノコギリザメは手に負えるはずもなく、ご丁重にご辞退申し上げた。
 作品の魚は、釣りの師匠が、釣ったものを2回も函館まで送って下さったものである。
 私の魚拓は和紙を使って作っているので破れたりするため硬くて大きな鰭があり全体は取れない。そのためノコギリの部分だけを取った作品である。
 釣りの師匠に「総理大臣でも食べられない、釣った漁師だけの特権 サメの心臓の刺身を食べさせてやるぞ」と誘われご馳走になったことがあったが、どんな味だったかは忘れてしまった。十年以上前の話である。

鮫裂いて立てばこぼるる天の川  雨汀


(写真)ノコギリザメ