〔学院情報〕
養成部門の紹介③
秩父学園附属保護指導職員養成所


 国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局秩父学園には、保護指導職員養成所が附属されています。養成所は、昭和38年に開設され、養成部と研修部の2部で構成されます。今年、養成部では48期生17名を迎え、医療・福祉・教育現場において、知的障害、発達障害のある児(者)の支援に携わる専門職を1年間で養成していきます。
 知的障害、発達障害の現場では、ご本人が自分自身のニーズを上手く表現できないことがあります。そのため、アセスメントを重ね、計画→実行→評価を繰り返し、利用者のQOLの向上に寄与できる専門性が求められます。その授業や実習、生活の一端をご紹介いたします。


秩父学園附属保護指導職員養成所紹介

児童指導員科 清水あかね


  写真は5人が仲良く並んでいる様子
   

 養成所の夏休みも終わり、1年間の養成所生活もいよいよ後半にさしかかってきました。4月の入学当初は、まだまだお互い遠慮し合っていましたが、養成所生全員での寮生活を通し、共に過ごしていると、家族のような温かい雰囲気になってきています。くだらないことで笑いあったり、日本の福祉について、自分たちの将来についてなど、真面目に話し合ったりすることができる良い仲間たちです。
 私たちは、秩父学園養成所で、知的障害者の支援について学んでいます。授業では、具体的な支援方法についてから、現在障害者が置かれている社会的状況、歴史的背景など様々なことを、現場で活躍されている各専門の先生方が教えて下さります。また、1年間で計3ヶ月ほど行われる園内、園外実習では障がい者施設や、児童相談所、福祉事務所などで実際の現場に入り、現場を知ることで、就職した際にすぐに役に立つような実践的な力を身につけています。特に、園内実習では、一人の園生さんに付きっきりになり、試行錯誤しながらプランを立て実行しています。じっくりと、一人の園生さんに向き合うことができる1ヶ月間は、非常に貴重な時間であり、自分の力になるものであると思います。
 他にも、秩父学園では、わかば祭や、夏祭り、レクレーション大会、クリスマス会など、様々な園内イベントが開催されます。園内イベントでは、養成所生による出し物の時間が設けられています。園生さんと一緒に楽しむということをコンセプトに置いて、皆で意見を出し合い、発表内容を自分達で考え、練習します。これは、養成所生の団結力を高める、皆で達成感を味わうことができる、ということもありますが、園生の方々の特徴を考えながら皆が楽しめるような出し物を考えるという経験は、就職した際にも役にたつものであるでしょう。
 養成所の交流としては、同じ国立の養成所である武蔵野学院との交流会が年2回開催され、お互いの養成所を訪問しあっています。武蔵野学院では少年非行について、秩父学園では知的障害についてと、学んでいることは異なるものです。しかし、お互いで情報を交換し合ってみると、全く異なる部分があったり、両者で共通した部分があるということが知ることができました。このような機会は、お互いの分野について学ぶことができる良い機会となっており、他分野、他職種の理解を深めるということに繋がっていると思います。
 狭い分野に精通していても、周りのことが見えず、多角的に物事を考えることができなければ、面白みのない職員になってしまうでしょう。養成所では実習などを通して具体的な支援方法などを知り、徹底して利用者と向き合うことを学びます。また、授業や交流を通して様々な分野や、職種について、利用者が置かれている社会的状況、歴史的背景などについても広く学ぶことができます。そして、寮生活の中で他の養成所生と、事あるごとに話し合い、意見を交わすことで、他者がどのように考えているか、自分と他者の考え方の違いや、どのようにすれば自分の想いをうまく伝えることができるのかということを意識して話したりと、お互いの良い部分を吸収し合っています。そのような広い視野や関心を持ち、多くのことに対してアンテナを張りながら、仲間と切磋琢磨していくことで、多角的に物事をとらえることができるようになり、考え方に厚みのある人間になることができると思います。
 秩父学園養成所での1年間の中で、以上のように仲間と共に成長していきたいと思います。職員になった暁には、「利用者本人のため」にということを追求し、本人の力を世に知らしめ、地域を変え、日本を変えるそんな人間になりたいと思います。


秩父学園附属保護指導職員養成所紹介

児童指導員科 寺澤大和


  写真は大勢がジャングルジムに登ったり、ぶら下がったりして記念撮影をしている様子
   

 秩父学園養成所養成部に入学してから早くも5カ月もの期間が過ぎました。
 この養成所には、大学生の時に「社会福祉学」や「心理学」など専攻して、もっと「知的障害者福祉について理論や技術を学びたい」と思って入学した人もいれば、ボランティアなど何らかのきっかけがあって法学部や経営学部など「福祉」とは関係ない学部を卒業して、「障害者福祉」を改めて学び、福祉に携わる人間になりたいという志の高い人たちもいます。また、一度社会の荒波に揉まれ、サラリーマンを経て養成所に入学した者などさまざまな経歴を持った人たちが養成所の隣にある寮で一つ屋根の下で共同生活しています。
 養成所に入学したての4月頃は、緊張と不安の連続でした。私自身「福祉」を全く学んだ事はなく、授業についていく事が出来るかとても心配でした。共同生活もなかなか最初は慣れませんでした。でも、共同生活をしていくうちに、「自分がどうして秩父学園に入って来たか」、「福祉に対して自分の抱いている思い」そして他愛もないくだらない話など、お酒を通して毎晩熱く語り合い、そしてすぐに打ち解け合う事が出来ました。そして授業で分からなかった部分は、授業後に今まで「福祉」を学んできた人に教えてもらい、共に理解を深め合うようになりました。そこで自分の緊張や不安はなくなり、5カ月を過ぎた今では全員がまるで「家族」のような存在になることができ、とても楽しく生活しています。
 一番印象に残った授業は「社会福祉概論」の中で「障害を持っている人たちの自立」についてクラスのみんなでディスカッションをしたことです。
 私を含め、今まで福祉以外の学部で勉強していた人たちは「自立」とは「親の経済的の支援を受けずにひとりで生活できる事」だと考えている人たちが多く、障害を持っていたとしても「自分でお金を稼げるようになり、一人で暮らせる」という事を自立と考えている人たちが多かったのに対して、ある程度福祉を学んできている人たちは「利用できる限りの公的・私的サービスを利用しながら自分で生活しようと努力する事」自体が既に自立であるという意見の人が多かったのです。
 何を以ってして「自立」と為すか、それを全く違った経歴を持った人たちが「自立」という一つのテーマについてお互いの価値観や考え方をぶつけ合う事で、明確な答えは出ないというのはわかっているのですが、自分は「こう考えている」という事を共有し合う事ができてとても為になった授業でした。
 そして座学だけでなく、7月の1か月を使って知的障害を持った人たちの能力を引き伸ばし、将来的な「自立」に繋げられるようになるための「総合実習」を経験しました。
 「総合実習」では養成所生1人1人が担当する園生1人の歯磨きや手洗いあるいは食事などの日常生活を観察します。そしてその人はその中で「何が出来て、何が出来ないか」を理解して、出来なかった部分を支援して出来るようにする支援、またほとんど出来ているのだけれども、時々ミスをしてしまう事があるのでそのミスを少なくしていくといった支援を実際に行いました。
 そこで私たちは、手洗いや歯磨きなど自分たちが無意識のうちに出来ている事はさまざまな構成要素で出来ていて、それを自分たちの支援によって理解してもらう事の難しさを知りました。また、1人1人持っている障害に特性があって、その人に合うだろう支援方法を実際に支援しながら模索していく作業はとても大変だという事を知りました。
 けれども苦労して考えに考えた支援を園生が受け入れてくれた時、そしてその支援によってミスが少なくなった時の嬉しさは言葉では言い表せないほどのものでした。また、支援を行っている自分たちの相談に親身になって乗ってくださり、さまざまなアドバイスをくださる職員さん、そして1日の実習終了後に支援の出来不出来について話し合いどうすればよくなるのかを一緒に考え、話し合うことの出来た仲間の大切さを改めて感じました。総合実習は自分が将来福祉の仕事をどのようにやって行けばいいのか考えていく一つのきっかけになりました。
 これから秩父学園以外で知的障害児・者施設で実習を行う「園外実習」や児童相談所や福祉事務所などで行政の福祉の仕事を学ぶ「機関実習」があります。いままでの経験を生かしてこれらに取り組んで行き、卒業する3月まで秩父学園48期生協力して一歩ずつ成長して行きたいと思います。そして1年後には全員が福祉の現場で即戦力として活躍できるようにこれからも養成所生一丸となって精進していきたいです。