〔特集:平成24年度運営方針@〕
研究所
 


Ⅰ. 平成24年度の全般的運営方針


   「医療から福祉までの臨床現場を有する特性を活かし、 障害全体を視野に入れた総合的リハビリテーション技術および福祉機器の研究開発」を
    中心課題とする研究所の中期目標達成に向けて研究を実施します。
    基本方針は、機関評価委員会においても強く要請された 「国リハでしか出来ない研究」を推進することです。そのために、
    ①臨床現場との連携
    ②先端技術の導入
    ③対象障害の拡大
    ④海外研究機関との連携
    ⑤政策提言につながる研究を重点的に進めます。
   また、様々な手段を活用して成果の情報発信に努めるとともに、開発した機器や手法については実用化や普及を目指します。

 

Ⅱ. 平成24年度の運営方針

 

  1.リハビリテーション技術・福祉機器の研究開発


  (1) 医療から福祉までの臨床、現場を有する特性を活かした研究課題の設定

   ①独自性の高い基礎的・応用的研究

 

    ・脊髄損傷者の歩行機能に対するニューロリハビリテーションに関する研究
      脊髄不全損傷者の歩行機能再獲得のための歩行トレーニング実験を引き続き実施します。
      また、血中神経損傷バイオマーカーpNF-Hの有用性を多施設によって実証する研究を開始します。

    ・ブレイン−マシン・インターフェイス(BMI)に関する研究
      BMIシステムにおける生体信号入力部の機能拡張、着脱が容易で連続使用可能である電極開発等を行っていきます。

    ・高次脳機能障害者に向けた標準的認知リハビリテーションに関する研究   
      前年度までに全国の高次脳機能障害支援拠点機関とともに収集した、約100例分の訓練内容と1年後の社会的帰結について集約分析します。

    ・視覚障害の遺伝子診断技術及びその臨床応用に関する研究開発
      昨年度発見した日本人網膜色素変性症に特有なEYS遺伝子の変異について大規模なスクリーニングを行います。

    ・社会科学、情報科学を駆使した障害者の情報コミュニケーション支援に関する研究
      北海道浦河町における精神障害者の防災活動への先進的取組事例を全国に紹介するため、過去の記録及び文献のデータベース化等を進めます。

    ・切断者のリハビリテーションに関する研究
      昨年度実施したQOL調査の解析を進め、高齢下肢切断者における問題点を明確化します。
      また昨年度収集した切断者の断端周径変化の調査データに基づき、変化の要因を明らかにします。

   ②障害全体を視野に入れた支援技術や福祉機器等の開発、実用化及び普及

 

    ・軽度認知症者を対象とした情報支援機器の開発と実用化及び適合手法の確立
      昨年度までの介入評価の結果を基に、機器の効果、適用範囲、適切な介入方法を明らかにし、支援手法マニュアルを作成します。

       ・既存の障害種別に含まれない障害者を対象とした支援技術・支援機器の開発
          吃音の発生メカニズム解明並びに発話訓練方法の開発を続けるとともに、病院・学院と協力し、吃音研究センター構築の準備を行います。

       ・切断者の感覚入力の取込みを可能とするソケット、即時装着試用評価可能義足ソケット等のリハビリテーション機器の開発
          被験者評価を通して義足ソケット内加圧方向分布測定センサの改良を行います。

        ・発達障害の青年期、成人期における職業生活を含めた地域生活支援に関する福祉サービス手法の開発
          地域と障害者支援施設をつなぐ医療-福祉連携による相談窓口の体制について検討、提言します。

       ・その他
          高次脳機能障害者の日常生活・就労支援のための携帯電話実装アプリケーションと外出を支援する機器の研究開発を実施します。

       ③「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づく第三者による研究課題評価と結果を研究業務への反映

         研究課題について、第三者による事前・中間・事後評価を実施し、その評価結果を研究に反映します。

      (2) 産学官や地方公共団体の総合リハビリテーションセンター等研究機関との有機的連携による共同研究、研究交流の促進

       ①社会環境の変化に伴う新たな公的要請に即応できる研究開発体制を保持し、試行的取組みに積極的に参加する

         運動機能系障害研究部に分子病態研究室を創設し、リハビリテーションに薬剤等を併用する治療法の開発を行います。

         平成23年度に完成した障害者ライフモデルルームにて、障害者支援の福祉用具・生活環境等に関して機器等の体験や評価、訓練の一部などを実施します。

      (3)福祉機器の評価・認証機能の強化、国際基準の策定支援

       ①高度先端福祉機器の臨床評価機能の強化

         ロボティックベッド並びに電動車いす片流れ防止システムの臨床評価を継続し、問題点の明確化と有用性の検証を行います。


     2.リハビリテーションに関する情報収集及び提供

      (1)対象者に応じた情報発信機能の強化

         発達障害情報・支援センターウェブサイトの情報の内容を拡大するとともに、高次脳機能障害情報・支援センターの情報発信サイトを構築します。

      (2)全国の発達障害支援センター等の中核センター機能の発揮

       ①発達障害情報・支援センター

        発達障害者支援センターとの情報共有について更に連携を深め、情報データベース(年間実績、事業実績等)の完成を目指します。

       ②高次脳機能障害情報・支援センター

        高次脳機能障害支援普及事業を円滑に推進し、関係機関との連携を図ります。


     3.リハビリテーションに関する企画・立案

      ○国の政策企画立案への協力

        「福祉機器の利活用のあり方に関する研究」、「持続可能な障害福祉制度の整備に関する研究」などを通して、国の施策に資する提言を行います。