〔巻頭言〕

平成25年 新年のご挨拶

総長 江藤 文夫


 新年明けましておめでとうございます。
新しい年が、国立障害者リハビリテーションセンターの新たなる発展の年となることを願っております。
 中国大陸に由来する東洋の暦では60年を一つの周期として、繰り返しながら進展していくとする事象のとらえ方があります。今年は「癸巳(みずのとみ)」という年回りですが、60年前のわが国は波乱含みの年でした。戦後の復興から発展に向かう変換点であったように思えます。
 一昨年の未曽有の大災害から、まもなく2年が経過しようとしていますが、今も被災地では多くの方々が復興への苦難の道を歩み続けておられます。被災地の方々だけでなく、日本列島に住む人々皆が、社会のあり様や国のあり様を改めて考え、新たな道を模索すべき季節を迎えているようにも感じられます。巳年の象徴である蛇は脱皮することから、復活と再生を連想させ、今年は新たに出発する重要な年となるはずです。
 21世紀にはいって、社会構造の変容に対応するべく私たちのセンターも創立25年を経た頃より変革の時代を迎えていることを改めて感じます。平成13年度よりスタートした高次脳機能障害支援モデル事業は、当センターの事業展開の在り方にとっても大きなモデルとなり、身体障害の合併症としての失語・失行・失認ではなく、精神の領域の障害を直接の対象として取り組んできたことで、私たちの取り組むべき障害は拡大されたことがイメージされ、発達障害に取り組むことでも自然に開始され、展開しつつあります。いずれも極めて困難で先駆的な取り組み課題でありましたが、センター全体での精力的な活動が引きだされ、全職員の活躍は誠に誇らしいものであります。
 私たちが関わる領域の拡大に伴い、各部門での活動にも広がりがみられます。サービスの実践はエビデンスに基づいてなされるべきであり、情報はセンター全体で共有されることが望まれます。昭和59年12月に第1回が開催された業績発表会は、年末の恒例行事として定着し、例年50題前後で推移してきた演題数は、喜ばしいことに一昨年73題、昨年は80題と急増しました。ナショナルセンターとして、常に開拓的、モデル的事業活動を求められることから、レベルはさまざまであっても絶えずエビデンスを意識して日ごろの活動に取り組み、結果を発表して欲しいものです。
 昨年は、本館と講堂の耐震化建て替え工事が完了しました。引き続き、旧建物を取り壊し、整地を行い、病院棟の建設が始まろうとしています。そしてこの3月末には塩原視力障害センターが長い活動の歴史に幕を下ろすことになります。昭和13年、東京の文理科大学(旧教育大学、現つくば大学の前身)の構内に発足した「失明傷痍軍人寮」に起源を有し、戦時中は宇奈月温泉に疎開していました。昭和21年に光明寮と改称されましたが、直後の宇奈月温泉大火で焼失し、暫時閉鎖状態にあったものを皇后陛下の温かいご理解により塩原御用邸の使用が許されたことで再開され、昭和22年には塩原光明寮として名称が改められました。この由緒ある施設の閉鎖は淋しいことでありますが、地元の皆さんの長年にわたるご理解とご支援に感謝するとともに、つつがなく幕を下ろし、国立障害者リハビリテーションセンターの新しい活力と事業展開につながることを願います。
 まずは健康に留意して、私たちセンターに課せられた使命と目標に向かって一歩一歩、力強く進んでまいりましょう。