〔巻頭言〕

平成25年度を迎えるにあたって

総長 中村 耕三



 この度、江藤文夫前総長の後任として国立障害者リハビリテーションセンター総長に就任いたしました。歴代の総長、そして諸先輩方の方々が築いてきた当センターの業績を考えますと身が引き締まる思いです。
 センターは今年34年目を迎えます。記録集「草創 国立リハの誕生と生いたち」(昭和59年発行)に当時のセンター全景写真(添付写真)があり、赤茶けた大地に真っ白な本館、訓練棟、宿舎棟が建ち荒涼とした感じですが、内部では熱気あふれる活動があったことが記録されています。センター構想から、予算折衝、建物さらには駅のエレベーターや点字ブロックなど環境整備についても、前例がなく大きな困難がありました。しかし、そこに一貫して流れているものは、日本における新しいリハビリテーション構築への並々ならぬ熱意です。現在、多くの駅にエレベーターが、道路に点字ブロックが設置されており、緑豊かなセンターの景観どこを見ても先人の努力を思わざるをえません。
 一方、30年余の間にセンターを取り巻く環境が大きく変わりました。平成15年には、措置制度から支援費制度が導入され、契約によりサービスを利用する契約制度に変更されました。また、平成18年の自立支援法の施行により、障害の種別(身体障害・知的障害・精神障害)にかかわらず必要とするサービスを利用できるよう、サービスの仕組みの一元化が行われました。平成25年4月からの総合福祉法の施行では、障害者の定義に難病等が追加されます。
 こうした状況に対し、当センターは先導的役割が求められており、平成20年に国立障害者リハビリテーションセンターに名称を変更し、発達障害情報センター、高次脳機能障害情報センターを設置するなど対応してきております。
 また、超高齢社会を迎えた今、障害者の属性、特性は大きく変わってきており、障害者の高齢化、高齢者の障害化は極めて大きな課題となっています。この状況は人類史上初めてのことで、健康増進センター(正式変更名称に変更)での障害者の健康管理への取り組みや、日常的に必要な障害に対する評価や標準的プログラム等は、これまでの知識、技法に加えられるべき新たな発展型です。これらを利用できる形として社会に還元することは、それ自体先導的取組といえます。
 当センターは、「共生社会、すなわち障害の有無にかかわらず、安心して暮らせる地域社会の実現」という目標に向かって、リハビリテーションと福祉サービスの提供、専門職の人材の養成、リハビリテーション機器開発と研究、国際貢献、そして、障害に関する情報の収集と発信等にその役割を果たすことが求められています。センターをあげてこれらに取り組んでまいります。


昭和54年12月15日 開所式(「創立十周年記念誌」より)