〔特集〕
平成26年度運営方針
 

③研究所

 研究所では、センター中期目標5年計画の最終年度に当たり、以下の方針で目標達成に向けた研究を実施します。

1 リハビリテーション技術・福祉機器の研究開発
(1) 医療から福祉までの臨床、現場を有する特性を活かした研究課題(主要課題)
①脊髄損傷者の歩行機能に対するニューロリハビリテーションに関する研究
ロコマットを用いた歩行訓練実験のデータ総括を行い、その作用機序を明らかにします。また、昨年度より実施している痙縮の評価、バイオマーカーによる予後推定を応用し、亜急性期の脊髄損傷者に対する受動的歩行訓練研究を開始します。
②非侵襲脳機能計測法を用いたブレイン−マシン・インターフェイス(BMI)に関する研究
視覚刺激による脳波信号を用いた環境制御装置等を開発し、これらを用いて病院や患者の居宅での一か月程度の実証評価を行っています。実証評価を中心とした研究をさらに推し進め、得られたデータをフィードバックすることで、BMI機器の安定化や操作の容易化、さらには現場使用時のノウハウの蓄積等を進めます。
③視覚障害の遺伝子診断技術及びその臨床応用に関する研究開発
我々が見いだした日本人網膜色素変性症に特有なEYS遺伝子の変異について大規模なスクリーニングを続けます。また、新しく開発した独自技術を用いて網膜色素変性症患者由来の皮膚線維芽細胞を網膜細胞に変換し、得られた網膜細胞の遺伝子解析を行います。
④障害者の防災対策とまちづくりの総合的な推進のための研究
所沢市などのモデル自治体における障害者の災害時個人避難計画の策定事例集を作成するために、市内の当事者、支援者、行政などから構成される勉強会を継続すると共に、市の地域防災訓練における当事者参加のあり方を明らかにします。
⑤認知症者の自立生活を支援する情報支援機器の適合手法の研究
認知機能のうち自立生活の維持の基礎となる時間・日時の見当識障害、記憶障害、行為遂行機能障害と、支援機器(電子カレンダー、服薬支援機器)との適合を実証実験にて実施します。
⑥障害者スポーツ・運動用装具等の開発、普及
ゴールボールにおける外傷予防用プロテクターの改良、製作したアイススレッジホッケーのバケットの評価を行います。
(2) 産学官や地方公共団体の総合リハビリテーションセンター等研究機関との有機的連携による共同研究、研究交流の促進
①福祉機器適合支援リハセンターネットワークの構築
平成25年度までに構築したネットワークモデルを基に、協力リハセンターでの福祉機器適合データを収集し、データベースのプロトタイプを構築します。さらに、遠隔通信システムを用いた適合支援システムについて、利用可能性を検討します。
(3) 福祉機器の評価・認証機能の強化、国際基準の策定支援
①高度先端福祉機器の臨床評価機能の強化
これまでの各論的な開発機器の臨床評価研究で得られた知見を総括し、定量的なエンドポイントの取得・分析に必要な機能要素をまとめ、それらを満たす汎用的な臨床評価プラットフォームを開発します。様々な開発機器に実装できるセンサシステムを中心に、福祉機器を新規開発する企業が最低限の工数で臨床的評価を実施できるシステムの開発を目指します。
②座位保持装置の強度及び温湿度特性に関する国際規格(ISO)の策定に向けた研究成果の発信
平成25年度に提案した車椅子のキャスターアップ試験について、各国からの指摘事項への対応を行い、原案作成にむけて内容を精査します。
③福祉用具の用語と分類に関する国際規格の改訂
平成25年度に作成した作業原案を基にした投票結果をうけ、各国からの指摘事項への対応を行い、原案を作成します。

2 リハビリテーションに関する企画・立案
(1) 国の政策企画立案への協力
①障害関係分野におけるデータの利活用に関する研究
障害統計および障害に関係するデータの整備と利活用に関して、国内外の状況と実現可能な体制を整理します。
②障害認定のあり方に関する研究
肝炎、ぼうこう・排尿障害に関する認定のあり方および障害認定の全体像について政策提言を行う資料を整理します。
③難病のある人の福祉サービス活用による就労支援についての研究
現在の難病のある人の就労系福祉サービス利用の実態を、全国の難病相談・支援センター、当事者およびサービス提供機関を対象として調査することで、多面的な観点から現在の解決すべき課題を明らかにします。また、就労支援ニーズを求職者、休職者、就職者を対象に調査することで、難病のある人の多様な状況に応じた支援ニーズを明らかにします。