〔特集〕
高次脳機能障害者の移動に関する研究
研究所 障害工学研究部 中山 剛

  研究所障害工学研究部では平成14年度から高次脳機能障害など認知機能に障害のある人の支援研究を行っています。高次脳機能障害の移動支援に関する研究も行っており、本稿ではそのうちの2件について紹介します。

1.高次脳機能障害者が電車を利用する際の困難さに関する調査研究

  センター外部の有識者ならびにセンター内部の関連部署、特に自立支援局自立訓練部生活訓練課と共同して、高次脳機能障害者・家族に対するヒアリングとアンケート調査(回答数;684通)を実施しました。その結果、相当数の高次脳機能障害者が電車を利用する際に困難を抱えており、交通バリアフリーに対して多くの要望を抱えている現状が明らかとなりました。また、高次脳機能障害者の外出時の観察と携帯電話による介入評価も行い、携帯電話の機能が高次脳機能障害者の外出や公共交通機関の利用時に有用なケースを確認しました。これまで交通バリアフリーの観点からの高次脳機能障害者に対する支援のアプローチは殆ど行われておらず、高次脳機能障害者にとっても、今後は少しでも利用しやすい公共交通機関になるよう期待したいところです。
 なお、本研究は(公財)交通エコロジー・モビリティ財団の助成を受けて実施しており、研究成果の概要は同財団のホームページで公開されています。また、同財団では高齢者・障害者等の公共交通機関不便さデーターベースも公開していますが、2014年5月から高次脳機能障害が検索キーワードに加わりました。
http://www.ecomo.or.jp/barrierfree/bfjyosei/2011/bfjyosei_2011result_237-4-2.html
http://153.150.114.64/rsn/index.html

2.高次脳機能障害者の移動を支援する機器に関する研究

  芝浦工業大学等の外部機関ならびに自立支援局生活訓練課等の内部の関連部署と共同して、携帯電話やスマートフォン等のナビゲーションやGPS等の機能を活用した高次脳機能障害者の移動支援に関する研究を行っています。実際、汎用のナビアプリを活用することで、単独で外出できるようになった地誌的障害のある高次脳機能障害者もいます。また、試作したGPSナビアプリを対象とした基礎的な評価も行っています(図1)。
写真1:試作したナビアプリの画面の例 写真2:試作したナビアプリの画面の例
図1 試作したナビアプリの画面の例