〔特集〕 |
平成27年度運営方針 研究所 |
研究所長 小野 栄一 |
(1) | 新しいリハビリテーション技術の開発 |
① | 中枢神経疾患の運動器リハビリテーションに関する研究 損傷神経・組織の解剖学的な再建を実現するための分子生物学的アプローチと繰り返しの神経入力による機能回復を実現するための行動科学・神経生理学的アプローチを進める。 |
② | メカニカルストレスと運動器機能維持に関する研究 骨、関節、靱帯、骨格筋において特異的にメカノセンサー分子の発現を欠失する遺伝子改変マウスを用いて、メカニカルストレス負荷・脱負荷又は不動化の実験を行い、運動器の組織の恒常性や機能への影響を解析する。 |
③ | 吃音の評価法・支援法に関する研究 ビデオセルフモデリングの臨床治験、ICFに基づく日本人吃音成人の質問紙の有用性の検証、シャドーイング(追唱)訓練による効果の評価、聴覚帰還による音声の制御特性や脳機能測定による吃音の病態解明、地域の保育園、幼稚園の調査などを進める。 |
④ | 新しい義肢装具・リハビリテーション手法の開発と応用 臨床業務として義肢装具の製作・修理を行う中で、ニード発掘や問題点の把握を行い、必要とされる義肢装具の開発や製作技術向上へ繋げる。また、利用者へ客観的データを分かりやすくフィードバックすることでリハビリテーションの質の向上へ繋げるよう努める。 |
(2) | 新しい診断・治療技術の開発 |
① | 発達障害の認知特性の解明と支援法開発に向けた研究 広く発達障害者と定型発達者を対象に、多感覚統合や身体表象の変容など発達障害に関連した認知行動特性を調べ、動物モデル等との比較を行うことで、個人差の背景にある神経基盤を明らかにしていく。 |
② | 脳内ネットワーク評価と再構成に関する研究 課題遂行中の脳活動を計測、解析する基礎技術を開発し、さらにデコーディッドニューロフィードバックなどを用いた科学的な脳内ネットワーク再構成誘導手法を開発する。 |
③ | 失語症の病態解明とリハビリテーションに関する研究 文理解の脳メカニズムを解明することを目指して、認知神経科学的研究を行う。また、構音のリハビリテーションにおける口形提示の有用さに対するエヴィデンスを求める認知神経科学的研究を行う。 |
④ | 障害者の二次障害予防に関する研究 ①シーティングクリニック基本型では対応困難であった治療難易度の高い下肢切断、股関節離断の褥瘡への対処方法開発への解析を進める。②遠隔地での褥瘡再発予防シーティングクリニックに関して、新規の地域拠点病院におけるe-learning手法を構築する。 |
⑤ | 視覚障害の遺伝子診断技術とその臨床応用に関する研究 体細胞を網膜細胞に変換する新技術の開発をさらに進めるとともに、網膜色素変性症患者由来の皮膚線維芽細胞を変性網膜細胞に変換し、遺伝子・蛋白レベルで解析を行う。 |
⑥ | 聴覚障害の病態解明と聴覚補償に関する研究 神経生理学的な手法を用いて聴覚障害の病態解明および新しい方式の人工内耳・補聴器開発に関する研究を行う。 |
(3) | 部門横断的研究プロジェクトの推進 |
① | 部門横断によるSIG(スペシャル・インタレスト・グループ)を設置 部門横断によるSIG(スペシャル・インタレスト・グループ)を設置にむけ、関係部署との調整及び、SIGの設置要綱案を作成する。 |
(1) | 先端技術を導入した支援機器の開発 |
① | ブレイン−マシン・インターフェイス(BMI)技術の実用化研究 実証評価を中心とした研究をさらに推し進める。また、環境制御装置や上肢アシストスーツ等のBMI被制御機器の改良を進める。 |
② | 盲ろう者の生活支援に関する研究 点字が使えない盲ろう者の情報補償を目的として、触指文字を表示できるロボットの開発を進める。 |
③ | 利用者の特性に適合する超ユニバーサール化福祉機器の開発 重度肢体不自由者を対象とした制御モデル構築を目指し、運動計測を行う。超多品種極少量生産製品である福祉機器に対する、新奇な製造技術を用いた設計手法の検討を行う。 |
④ | 効果的な支援機器臨床評価手法に関する研究 支援機器の臨床評価に関する文献調査を行って情報の収集を行い、その結果をデータベース化して、機器の種別や目的による効果的な臨床評価の手法を整理する。 |
⑤ | 支援機器用要素技術の開発 BMIに用いる脳波測定用電極の実用化に向けた実証評価研究を続ける。せん断力センサについては、さらに改良を試み、義肢装具製作分野への応用を図る。 |
(2) | 当事者参加型研究の推進 |
① | 当事者参加型の情報創発基盤の構築 ソーシャルネットワークとの連動に焦点を置き、プラットフォームの運営を重ねながら、基本的な利活用モデルを構築する。 |
② | 精神障害者の意向・実践知に即した機器による支援モデルの構築 精神障害者と協働で、日常生活の実践知に即し、開発や改良が期待される道具について話し合い、ニーズの掘り起こしを行う。 |
(3) | 支援技術・支援機器の普及に関する研究 |
① | 軽度認知症者を支援する福祉機器の利活用モデルの構築 機器利用者への人的支援手法、認知機能特性に適した情報伝達形態の適合手法、機器活用効果を示す臨床評価手法を体系化し、個別特性に応じた機器の利活用モデルを構築する。 |
② | 高次脳機能障害者の生活・移動を支援する機器の実用化と普及 スマートフォンアプリならびに試作した外出時の支援アプリの改良と情報発信を行う。 |
③ | プリントディスアビリティを支援する機器の普及 プリントディスアビリティのある者を対象とした災害対策教材を用いた教育プログラムを介して、支援機器の普及効果を明らかにする。 |
④ | 福祉機器の標準化の推進 車載用座位保持装置について、これまでに実施したスレッド試験や国外情報調査等の成果を踏まえて規格化を目指す。 |
⑤ | 障害者のスポーツ・運動用装具等の開発と普及 障害者スポーツの種目特性に応じたデバイスおよび保護具の試作とその改良、競技用バケットシートの適合に関する定量的評価手法の提案を目指す。これらの機器の供給を円滑に進めるための製作技術の検討を行う。 |
(1) | 行政データの解析 |
① | 障害関係データの利活用に関する研究 平成23年度に実施した「生活のしづらさなどに関する調査」の詳細統計作成を継続する。 |
② | 障害者福祉サービスの整備状況と利便性向上に関する研究 事業所のサービス提供圏域の算出を行うとともに自治体に協力いただき分析結果と現状との差異について検討を行う。 |
(2) | 施策立案への提言 |
① | 障害認定の在り方に関する研究 身体障害認定の指定医の基準と研修に関する調査を行い、指定医の質の確保方法を明らかにする。 |
② | 福祉機器等の価格制度の整備・改良に関する研究 限られた財源を有効に活かすため個々の補装具補装具等価格を最適に設定するため、原価計算・採算状況等の情報の調査および整理を行う。 |
③ | 災害時の障害者支援の在り方に関する研究 災害対策に関する教材を実習するプログラムを開発し効果を評価する。 |
④ | 完成用部品指定申請/事前審査システムの開発 安全かつ十分な機能を有した補装具の審査に向けて、完成用部品指定申請/事前審査システムを整備する。 |
(1) | 重度・重複障害者を対象としたきめの細かい福祉機器適合サービスの体制を整備し実施する。 |
病院において独力で座位を保てない重度・重複障害者を対象として行われるシーティングクリニックに参加し、理学療法士らと協力してきめ細かな適合サービスの提供を行う。 |
(1) | 利用者のニーズに応じた情報の発信 |
@ | 開発事例DB、開発相談DB、補装具支給・修理状況DB、支援機器選択・選定DB、支援機器利用効果DB、臨床評価DBのデータ構造を決定し、データ収集を行う。 |
(2) | 全国の支援拠点機関の中核センター機能の発揮 |
@ | 全国リハビリテーションセンター間ネットワークを構築し、リハセンター間の補装具支給・修理状況データベースの構築を約10箇所の拠点リハセンターの協力を得て実施する。 |
(1) | 福祉機器の国際標準化への協力 |
ISO/TC173/SC2にて福祉用具の分類と用語の国際原案を作成する。また、ISO/TC173/WG10にて認知機能を支援する機器のガイドライン案を作成する。 |