〔トピックス〕
本当に必要なものって?? ニーズ&アイデアフォーラム(Needs & Idea Forum (NIF))
研究所長 小野 栄一

 素晴らしい道具・機器などは、とても役立ちます。適切な支援機器は、障害のある人にとって、自立して暮らしやすくするもの、生活や社会参加する上で、時には欠かせない必要なものです。車いすは、車いす利用者にとって、移動するために欠かせない道具の1つで、たくさんの配慮がなされています。
 ニーズ&アイデア フォーラム(NIF)を始めたきっかけとして、障害のある人のみでなく多くの人に支援機器の有効性を知っていただきたいことと、優れた技術を持つ企業が、障害のある人に喜ばれる支援機器・普及を目的に製品開発を目指しているにもかかわらず、必ずしもスムーズにものができないことが挙げられます。
 役立つものができない理由として①試作品の適切な評価ができる体制が不十分であるケース、②ニーズの把握が不十分であるケースがあげられます。①については、障害者自立支援機器等開発促進事業が試作中の支援機器の評価を手伝う事業として平成22年度より厚生労働省にて実施されています。②については、福祉用具ニーズ情報収集・提供システム(※1)、福祉工学カフェ(※2)などありますが、様々な課題があり、「本当に必要なもの」を創るためのニーズを適切に知る機会は多くありません。
 こうしたことから、医療・福祉系、デザイン系、工学系の学生さんの混成チームが、福祉をテーマに支援機器のユーザ側の人々や医療・福祉専門職等のアドバイスを得ながら、利用者のニーズの把握とそれを解決するアイデアを考え、それらを多くの人々に知っていただくという、福祉分野の人材育成の一手段としてニーズ&アイデアプロジェクトを始めることになりました。

図 最初に考えた「本当に必要なもの」を学び、
アイデアを創る人材育成のプロジェクトイメージ
頚随損傷者のための長座位車いす 車いすタイヤクリーナー 車いすのための直進補助具
体幹用床ずれ防止クッション ふんどし型オムツカバー 組紐尿取りパッド
片麻痺者のための把持リハビリ用品 音を利用したリハビリ用品 低体力者のためのレクレーションツール
 平成26年度は、国立障害者リハビリテーションセンター(国リハ)の自立支援局が中心となり、国リハの職員と、医療・福祉系は、社会医学技術学院理学療法学科、デザイン系は、千葉大学工学部デザイン学科、工学系は、東京電機大学未来科学部ロボット・メカトロニクス学科、埼玉大学工学部機械工学科の先生がアドバイザーとなり、各学校の学生よりなる混成チームが、様々な障害を持った人たちのニーズを学ぶことから始めました。学生のアイデアは、現場のニーズを知ることで変わっていきました。その結果(上図)は、平成27年3月にNIFとして、特別講演と共に公開しました。NIFの目的は多くの人々の福祉分野の情報共有や関係者の連携が促進され、必要なものが手に入りやすく、楽しく優しく自立できる支援機器開発の促進につなげることとしています。プロジェクトとNIFの概要は冊子にまとめ配布しています。(※3)
 平成27年度は、先に書いた学校に加え、東京学芸大学特別支援科学講座、首都大学東京作業療法学科、千葉県立保健医療大学作業療法学専攻、東京工業高等専門学校電子工学科の先生と学生、および横浜市総合リハビリテーションセンターの職員のご協力を得てプロジェクトを実施中です。
 なお、本事業は、平成26年度より3年計画で厚生労働省の研究委託費(障害者対策総合研究事業)「支援機器イノベーション創出のための情報基盤構築に関する研究」(研究代表者:加藤誠志研究所所長、現在、顧問)の一部として、障害のある人の支援機器関係のもの作りに関する人材育成に関して実施しています。

※1:http://www.techno-needs.net/
※2:http://www.rehab.go.jp/ri/event/at_cafe2010/top.html
※3:http://www.rehab.go.jp/ri/event/NIF2015/top.html