研究所オープンハウスを開催しました

高次脳機能障害情報・支援センター 西川浩一
 10月27日(土曜日)に当センター研究所を会場に開催された「研究所オープンハウス(一般公開)」について報告させていただきます。

 研究所オープンハウスは日頃研究所で行われている医学、工学、心理学、社会科学などを基盤とした各分野の研究について広く知っていただくことを目的として開催されており、例年は12月の障害者週間に合わせて開催されていましたが、第7回目となる今年は「リハ並木祭」と併せて10月27日(土曜日)に開催されました。今年はリハ並木祭との相加効果により、400名を超える方々にご来場いただきました。主な内訳は、医療福祉関連の専門職や専門職を志す学生、会社員、ご本人やご家族が障害を抱える方々などでしたが、各展示会場で、研究担当者の説明に熱心に聞き入ったりメモをとったりまた実際に体験したりしておられました。また来場された方々から、たくさんのご意見、ご質問をいただき、関心の高さを窺い知ることができました。さらに今年も情報保障として、当日配布資料について点字版やマルチメディア・DASY(デイジー)版のCD-Rを用意したほか手話通訳の職員の配置や筆談器の用意も行いました。

 今年は、「体験、体感、実感! リハビリテーションの最新研究」をキャッチフレーズに「活動と社会参加を支える技術の開発」、「生活を支える社会環境整備の提案」、「心身機能の解明による回復・向上の研究」3つのキーワードの中に12のテーマを据え、テーマに沿った形で研究棟、障害者用モデル住宅、障害者ライフモデルルームにおいて研究所各部門を横断した展示がなされました。また体験型ゾーンと展示型ゾーンを分けてご来場者の皆様にわかりやすい展示を心がけました。

○ 活動と社会参加を支える技術の開発
 このキーワードでは、①「日常生活・就労」②「安全・健康」③「移動・歩行」④「学習、情報取得、コミュニケーション」の4つのテーマに沿って展示が行われました。
①「日常生活・就労」では障害者ライフモデルルームを会場に認知機能に障害のある方を支援する携帯電話アプリケーションの紹介や模擬筋電義手の体験、ロボテックベッド(移動と移乗を支援する機器)の展示や体験、ブレインーマシン・インターフェイス(BMI)(脳が発する信号を読み取って、手足が不自由な方でも身体を動かすことなく家庭の電化製品などの機械を操作(生活環境を制御)することのできる技術)を用いた環境制御システムについての展示や体験が行われました。

②「安全・健康」では義肢装置や座位保持装置(座位のとれない方が用いる(車)いす)の試験評価、車いす搭載型うつ熱予防システム、車いすのキャスターアップ試験の開発、安全装置を搭載した電動車いすの展示がなされ、実際に開発・試験中の車いすに乗ってもらいながらの説明がされました。
また障害者が自立した生活を送るうえで、排泄にまつわる様々な課題を解決するための「排泄問題ワークショップの紹介、電動ベッドのシーツの一部の摩擦を小さくした低摩擦シートの体験、障害者支援機器・評価機器のための生体インターフェースの研究開発などが展示されました。

③「移動、歩行」では、研究棟会場で電動車いすシュミレーターの体験が行われたほか、義肢に関する研究成果(下肢切断における最近の傾向、運動における義肢の有効性、陰圧粒子パック式評価訓練用義足の開発)の展示と共に過去・現在・未来の義肢が年表と併せて展示されました。

④「学習、情報取得、コミュニケーション」では、マルチメディアな電子図書の国際規格であるDAISY(デイジー)や視覚障害者向け6点入力式メモ装置などの紹介や生活支援ロボット(パペロ)や盲ろう者支援のための指文字用触手手話ロボットも展示されました。

〇 生活を支える社会環境整備の提案
 このキーワードでは、①「情報共有」②「サービス、制度、政策」③「社会」④「家族」の4つのテーマに沿って展示が行われました。
①「情報共有」では高次脳機能障害や発達障害への情報発信をパネルにより紹介したほか、発達障害に関する書籍の展示やVTRの上映も行われました。障害者ライフモデルルーム(誰もが使いやすい福祉機器と部屋環境を考えるために、多目的空間とトイレと風呂を常設した施設)の紹介も行われました。また障害者用モデルルーム会場では「認知症のある人への福祉機器展」として数多くの福祉機器を展示いたしました。

②「サービス、制度、政策」では盲ろう者への支援(宿泊型盲ろう者生活訓練等モデル事業に伴走する研究)や働きたいという希望をかなえるために必要な支援・施策(就労移行期における障害者支援のあり方に関する研究)、義肢や装具・座位保持装置に作る費用についてパネルにより紹介されました。

③「社会」では 障害を持つ方が着たい服を手に入れやすい衣服環境への取り組み、ハンセン病にかかった人が地域で暮らしていけるようにすることについての研究や利用者ニーズに応じた制度横断的なケア提供体制の構築障害者に自立支援促進に関する総合研究などがパネルにより紹介されました。

④「家族」では 特殊なニーズのある子供のきょうだいに対する支援に関する研究がパネルにより紹介されました。

〇 心身機能の解明による回復・向上の研究
 このキーワードでは、①「運動機能、細胞機能」②「感覚機能、脳機能」の2つのテーマに沿って展示が行われました。
①「運動機能、細胞機能」では、ヒトの立位・歩行の制御機序の解明を目指したヒトを対象とした研究、脊椎損傷後の歩行リハビリテーションや再生医療、褥瘡(じょくそう:床ずれ)の予防についてパネルにより紹介されました。

②「感覚機能、脳機能」では吃音(言葉がつっかえて、どもってしまうこと)の起きる仕組と治療への取り組み、網膜色素変性症の遺伝子診断・治療を目指す網膜の変性と再生に関する研究などがパネルにより紹介されました。 また 難聴の病態解明と新しい原理の人工内耳の開発や発達障害の客観的評価・診断研究についてパネルにより紹介されました。

 
(図1) 認知症のある人の福祉機器展 (図2) 「生活を支える社会環境整備の提案」展示
図1 認知症のある人の福祉機器展
障害者用モデル住宅会場
図2 「生活を支える社会環境整備の提案」展示
研究棟会場

(図3) 電動車いすシュミレーターの体験 (図4) 「活動と社会参加を支える技術の開発」展示
図3 電動車いすシュミレーターの体験
研究棟会場
図4 「活動と社会参加を支える技術の開発」展示
障害者モデルルーム会場

(図5) 義肢に関する研究成果の展示 (図6) 「心身機能の解明による回復・向上の研究」展示
図5 義肢に関する研究成果の展示
研究棟会場
図6 「心身機能の解明による回復・向上の研究」展示
研究棟会場

(図7) オープンハウス看板 (図8) 障害者ライフモデルルーム会場入口
図7 オープンハウス看板 図8 障害者ライフモデルルーム会場入口
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