ロービジョンケアおよび視覚リハビリテーション実施状況調査と
中間型アウトリーチ支援に関する意向調査

病院ロービジョン訓練 西脇友紀

 このたびは第29回業績発表会での「ロービジョンケアおよび視覚リハビリテーション実施状況調査と中間型アウトリーチ支援に関する意向調査」の発表に対し優秀賞をいただき、ありがとうございました。本研究は、仲泊第二診療部長が平成22年度から研究代表者として行っている厚生労働科学研究費補助金事業「総合的視覚リハビリテーションシステムプログラムの開発」の一環として行われた調査の結果をまとめたものです。

 人は視覚から得る情報に依存する割合が高いため、視覚に障害を負うと何もできなくなってしまうと考えられがちですが、保有視機能を活用し、さらに他の感覚で視覚を代行することにより、視覚障害を補い、生活を再構築することは可能です。しかし、自分はもう何もできなくなってしまったと考え、何年も家に閉じこもってしまう場合も少なくありません。
 人は見え方に異変を感じた場合、まず眼科を受診します。そのため、治療により疾病が治癒するのも、治療の甲斐なく視覚障害の受障が確定するのも眼科といえます。このことは、眼科で適切な情報提供が行われれば、前述のように家に閉じこもることなく視覚リハビリテーションを始めることができるということでもあります。
 そこで一部の眼科では、保有視機能を活用するロービジョンケアを行い、必要な場合には視覚リハビリテーションに関する情報等を提供しています。眼科領域では2000年に日本ロービジョン学会が設立され、ロービジョンケアの普及が推進されています。しかし、設立後十余年を経ても、実施している眼科はまだ一部に過ぎず地域格差も指摘されています。一方、視覚リハビリテーション施設でのサービスは、法制度の変遷に伴い、その内容や提供形態の変更を余儀なくされ、実施状況が外部から分かりにくくなっています。
 そのため今回私たちは、眼科医療施設で行われているロービジョンケアおよび視覚リハビリテーション施設で行われている視覚リハビリテーションサービスの実施状況を調査しました。またこれらの調査と同時に「中間型アウトリーチ支援」に関する意向調査も行いました。

 「中間型アウトリーチ支援」とは、前述の研究で推奨しているもので、視覚リハビリテーション専門職などの支援者が、視覚障害当事者が日常よく訪れる場所(眼科など)に出向いて、視覚リハビリテーションに関する相談や情報提供を行うことを指しています。図に、支援者と眼科などの仲介施設、視覚障害当事者の関係を示しました。


 図の左側は、従来のアウトリーチの形で、支援者がニーズを持つ視覚障害当事者の自宅を訪れて、何らかのサービスを提供する形です。この形は効率的でないこともあり、これまであまり積極的に行われていません。右側は、視覚障害当事者が、支援者がいる視覚リハビリテーション施設に行き、支援を受ける形です。支援者側は、施設に訪れる視覚障害者を待つ形のため、ニーズを潜在的に持つ視覚障害者と接触することができません。
 中央に示したのが、中間型アウトリーチです。この形態では視覚障害当事者の行き慣れた場所に支援者が出向く形なので、視覚障害当事者は負担が少なくて済み、眼科など仲介施設および支援者側は、視覚障害を受障した患者に対して機を逃さず相談・情報提供を行うことができるという利点があります。このような取り組みを既に実施している医療機関および視覚リハビリテーション施設はありますが、まだごく一部に限られており一般的ではありません。今回実施した調査により、各々の施設が抱える諸問題も明らかになりました。

 今後は、中間型アウトリーチ支援の拠点をどこに置き、どのように支援を開始しシステムとして定着させていくか、医療と福祉双方の事情を勘案しながら調整していく必要があります。システム化実現にあたり、解決しなくてはならない問題は山積していますが、視覚障害を負った方がどこに住んでいても、適切な時期に視覚リハビリテーションを始められるように眼科・ロービジョン訓練スタッフ一同、さらなる課題に取り組んでいく所存です。今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

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