国リハコレクション2012 〜気楽におしゃれ、始めませんか〜 開催報告

看護部長 粟生田友子
障害工学研究部長 小野栄一

 2012年12月19日(水)に国リハコレクション2012を行いました。国リハコレクションは、事故や病気、または加齢などで体が不自由になった方々の衣服に関する課題があることを知って頂き、おしゃれを楽しめる環境促進の一助として開催しており、2回目となる今回は、ファッションショーと展示を行いました。
 ファッションショーと衣料の作成は、文化服装学院のご協力を得ました。また、情報提供の一環として、趣旨にご賛同いただいた21機関にご協力を得て出展・展示を行いました。参加者は261名以上(数字は受付で記載された人数)で、テレビ局、繊維や障害関連の新聞、雑誌、メールマガジンの取材がありました。
 国リハコレクションおよび関連情報は、以下のURLで情報発信していく予定です。
 http://www.rehab.go.jp/ri/event/fashion/top.html
 
【ファッションショーの紹介】
 リフォーム(4名)、オーダー服(5名)とミニおしゃれ講座にて、〔普段着のおしゃれ〕をご覧に入れました。衣服は、ご協力いただいたモデルさん等の気持ちとおしゃれに重点をおきながら、衣服の着脱のしやすさ、衣生活や普段の行動での課題を解決する工夫がされています。ファションショーの終了後、集合写真を撮り、モデルさん等と参加者と交流する時間を持ちました。ファッションショーも交流の時間も好評でした。活き活きとしたモデルさん達をご覧下さい。
 
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【出展・展示の紹介】
 企業、病院、公的研究機関、教育機関、ボランティアから出展・展示のご協力があり、製品や試作品、取組などをご紹介いただきました。北海道から岡山まで遠方の方々も出展してくださいました。

  • ①企業からは、おしゃれな服、かわいい子供服、靴下、靴、おしゃれな転倒骨折軽減用下着、おしゃれステッキ、超撥水性の車いす用ポンチョ、スウェーデンの元看護師さんがデザインした服、ネクタイなど、既製品からオーダーまで、
  • ②病院(長良医療センター)からは、重症心身障害者の機能的でおしゃれな衣類製作企画の取り組みを
  • ③公的研究機関からは、着やすくてシルエットの美しい衣服や姿勢保持グッズ(あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター)、座位姿勢の人の3次元体形計測とバーチャル着装シミュレーション(産業技術総合研究所サービス工学研究センター)、共用品(共用品推進機構)の紹介
  • ④教育機関からは、委託職業訓練3か月コースでユニバーサルファッション講座を実施している学校より、身体の不自由な方や高齢者の方に体に優しくお洒落な衣服(専門学校浜西ファッションアカデミー/認定職業能力開発校埼玉ファッションアカデミー)を、3次元計測から3D-CADに取り込んでオーダーメイドスーツを設計するシステムと試作されたスーツ(京都女子大学家政学部生活造形学科渡邊研究室)の紹介
  • ⑤ボランティアからは、ジャケット&スカートという洋服感覚の新しいデザインの晴れ着。障害者向けの改良着物ではなく「みんなが着たい!」共用品着物(福・服プロジェクト)の紹介がありました。展示の一端をご紹介します。(あいうえお順)


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●あいち産業技術総合研究センター尾張繊維技術センター
  • ※企業、関連機関との共同開発によって培われた福祉衣料作りのノウハウを融合し作製された「着やすくてシルエットが美しい衣服」と「姿勢保持グッズ」などが展示されました。


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朝倉染布株式会社
  • ※超撥水(撥じかれた水が水玉となって表面を転がる)加工された車椅子用ポンチョ3点セット(ポンチョ、アームカバー、フットカバー)とパンフレットの展示がありました。ポンチョは200g、アームカバー20g×2、フットカバー30g×2と軽量で通気性があります。国際福祉機器展で拝見した「水を撥じき水玉になってコロコロ転がるデモ」はとても印象的でした。


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アソシエCHACO 販売サイト 教育分野サイト
  • ※「身体が不自由になっても、T・P・Oに合わせて自分らしさを表現できる装いの普及」をコンセプトに、服飾教育に携わりながらボランティア活動の中から現状を把握し、「着脱しやすく・おしゃれな服」を提案して20年です。
     簡単に直す方法や作り方を発表しながら、誰もが必要とする時すぐ手に入れられるシステムとしてショップを立ち上げています。
     川崎市福祉製品として認証された開発衣服のほか、モニターさんのご意見を伺いオリジナルなユニバーサルファッションや介護服の商品化と個人対応のオーダーもお受けするショップです。


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M&Rる〜む :ケープ、レインフード、スイミングスーツ、シューズなど
  • ※「こんな物があったら便利、面倒にならずに簡単に使える、思わず誰かに見せたくなるようにオシャレに」のコンセプトに基づき、自身の経験と母親の方々の要望で開発・販売されています。


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岡本株式会社
  • ※岡本株式会社は、紳士・婦人から子供用までのスポーツソックス、ファッションソックス、パンティストッキング、タイツなど靴下類全般を製造販売し、国内靴下製造卸業績ランキング1位の靴下専業メーカーです。研究開発機構を独自に持ち、糸をはじめとする素材から靴下、編機の開発まで靴下に関わる様々な研究を行っています。高い技術力によって作られた医療用ソックスや、消臭効果の高いソックスなどをご紹介いただきました。また、シニア用に歩行をサポートするソックスや水中ウォーキング用など、機能性を持たせた靴下の展示もありました。
     その他、無農薬畑の綿花からできた手紡ぎ糸で編まれた、肌にも環境にもやさしいソックスなど、素材や技術も含めて様々な商品のご紹介がありました。


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株式会社誠や(まことや)
  • ※スウェーデンの元准看護師さんがデザインした障害を配慮した服を扱っています。今回は2012年秋冬コレクションの一部をご紹介してくださいました。機能的でエレガントなおしゃれな服です。


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株式会社ワールドワーク:ボタン・ホック・肌着・パジャマ・カーディガンなど
  • ※磁石ボタンを商品化しました。近づけるだけで、自然にボタンが留まり、洋服の脱ぎ着が片手でもできます。洗濯に耐え、高校の家庭科の教科書(大修館書店)に紹介されました。今回のファッションショーの片麻痺のモデルさんの服にも磁石ボタンが利用されています。


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川崎市地域雇用創造推進協議会 かわさきJプロジェクト
  • ※障害や高齢の方も着やすいユニバーサルデザインのファッションに関連する企業さんたちで集まって、よりよい製品の開発や販売について考えることを計画しています。


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京都女子大学 家政学部 生活造形学科 渡邊研究室
  • ※車いす利用者の体を3次元計測し、3D-CADに取り込んで個人の体の形に合わせたスーツを設計することで、試着補正の手間、コストやユーザーの負担を減らしたオーダーメイドのシステム構築に係わる研究のポスター紹介と試作したスーツの展示がありました。


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倉敷スクールタイガー縫製株式会社
  • ※障害のある方に向けた衣類を既製品&パターンオーダーを提供しています。既製服は、車いす利用者のスーツ、ジーンズ、カーゴパンツ、スカート、およびユニバーサル水着の紹介がありました。


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公益法人 共用品推進機構
  • ※共用品推進機構は、障害の有無、年齢の高低等に関わりなく共に使いやすい製品(共用品)、サービス(共用サービス)の普及活動を行っている機関です。普及のために、障害のある人たちの日常生活における不便さ調査、配慮点の標準化、そして展示会、シンポジウムなどを行っています。共用品を知っていただくために作った冊子「共用品ってなんだろう?」を配布しました。


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●工房ゆいまぁる
  • ※オシャレで自由な手織りの小物(マフラー、ベスト等)が個性的な表現をしています。着やすく使いやすいデザインでした。国立障害者リハビリテーションセンターの売店にて展示されています。


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国立障害者リハビリテーションセンター 参考出品
  • ※上肢に障害があり、ゴムを通した布を握ることが難しい方でも、ゴムの両端につけたリングを引っ張ることができれば髪を結ぶことができるシュシュ。外来に通院されている方が使用しており教えていただきました。元は山野美容芸術短期大学の学生さん作製とのことです。右図はこの「しゅしゅ」をする方法です。


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サンビーム株式会社/ステッキのチャップリン
  • ※日本初、唯一の「おしゃれステッキ」専門店&メーカー。オリジナル長さ調整式や折りたたみ、高級天然木など、1500種類のステッキを取りそろえているとのこと。そのほんの一部ですが、様々なステッキをご紹介いただきました。大丸東京店10階にもショップを展開されています。


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浜西ファッションアカデミー/認定職業能力開発校埼玉ファッションアカデミー
  • ※目の覚めるような素敵なカクテルドレス(全国総合技能展で平成12年会長奨励賞(写真中央)、平成13年度厚生労働省職業開発能力局長奨励賞(写真右))の展示がありました。2つは、車いすの利用者のためのドレスです。出展は、埼玉県委託職業訓練3か月コースでユニバーサルファッション講座を実施しており、身体の不自由な方や高齢者の方に、体に優しくお洒落な衣服作りを教えているファッションの専門学校です。


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●国立病院機構 長良医療センター :重度心身障害者の機能的でお洒落な衣服製作の取組
  • ※平成22年より名古屋服飾専門学校の協力のもと、機能的でおしゃれな外出着、普段着作りをしています。写真は、その中心メンバーの林沙織さん(児童指導員)。


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独立行政法人 産業技術総合研究所 サービス工学研究センター
  • ※国リハと共同研究で「障害者の座位姿勢における衣服作製のための3次元計測とバーチャル着装(H24-26)」を進めており、RGB-Dセンサを用いた身体計測やAR着装シミュレーションについてポスターとビデオで研究紹介がありました。研究担当者の蔵田武志行動観測・提示技術研究チーム長(左端の方)が説明している様子です。


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●福・服プロジェクト ボランティア
  • ※ジャケット&スカートという洋服感覚の新しいデザインの晴れ着。障害者向けの改良着物ではなく「みんなが着たい!」共用品着物が紹介され、当日いらした車いす利用者さんが成人式に着たいとのことでお貸しすることになったそうです。


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北海道トンボ株式会社
  • ※車いす生活の方や腕や足に緊張がある方に、脱ぎ着が簡単でカッコ良いオーダーメイド型のフォーマルウエアや、チノパン、シャツ、ネクタイ、および靴などが展示されました。右の写真の男性用スーツには工夫している箇所を矢印で示し丸い紙に説明が書かれています。


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ムージョンジョン・バリアフリー子供服
  • ※寝たきりの重度障害児の為の既製服(見た目は一般のお洋服と変わらず、でも機能的に工夫されたお洋服)を提供しており、たくさんのかわいい洋服の中から選べ、毎年、新商品が展開されています。


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有限会社とみ:転倒時の骨折を軽減するお洒落な下着(大腿骨頸部骨折軽減用下着)
  • ※お洒落感と快適装着、ラクラク着脱に人気があるとのこと。



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●夢色工房
  • ※手織りの布や洋服地で創作した「車椅子に乗った状態で便利な服」や、トールペイントで絵付した衣服や、布製の小物等の作品が展示されました。国立障害者リハビリテーションセンターの売店等でも展示されています。