「第1回 補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みに関する研究会」の
開催について
                研究所障害福祉研究部 我澤賢之

平成26年2月22日(土)当センター学院にて、「第1回 補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みに関する研究会」が当センター研究所の主催で開催されました。この公開研究会は、厚生労働科学研究費補助金研究プロジェクト「補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みの提案に関する研究」(研究代表者 国立障害者リハビリテーションセンター研究所福祉機器開発部長 井上剛伸。研究予定期間 平成25〜27年度)の一環として行われました。

・厚生労働科学研究費補助金研究プロジェクト「補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みの提案に関する研究」について
 障害福祉制度における補装具費支給制度は、身体障害者の自立と社会参加を支えるうえで重要な役割を担っています。必要とする人がより適切な補装具を使えるようにしていくためには、利用者の機能、補装具の機能、価格が適切にマッチすることが望ましいと考えられます。
 適切な補装具費支給を行っていくためには、全国の更生相談所の補装具判定における基準解釈を平準化し、地域格差をなくして公平・公正な判定の考え方を理解する必要があると考えられます。また補装具のなかでも義肢・装具・座位保持装置については、その機能を規定するうえで重要な役割を果たす完成用部品(厚生労働省により認可されたモジュール化された部品)の機能の違いなどが必ずしも明瞭でなく、どのような利用者にどのような部品が適しているのか分かりにくい部分があるという課題があります。義肢等の支給判定をより分かりやすいものにし、これと併せてその価格の妥当性を考えるうえで、完成用部品の機能を整理することは一つの課題といえます。
 こうした問題を解決するために、本研究では国立障害者リハビリテーションセンター研究所、宮城県リハビリテーション支援センター、ナブテスコ株式会社による研究班を構成し、厚生労働省の自立支援振興室と情報交換をしながら、次の4つの課題について取り組んでいます。

 課題1.完成用部品の機能区分について
 課題2.義肢・装具・座位保持装置の製作費用の把握と価格設定について
 課題3.補装具費支給判定基準マニュアルの作成について
 課題4.完成用部品申請手続きの整備について

・研究会について
 第1回となる今回の補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みに関する研究会では、更生相談所関係の方、補装具製作事業者の方、完成用部品供給事業者の方、障害当事者の方など多くの方にお越しいただき、研究班関係者と併せて合計98人の方にお集まりいただきました。上記の4つの研究課題のうち、主に課題1〜3について話されました。
 開会にあたり当センター 中村耕三総長の挨拶がありました。続いて研究班のメンバーからの3つの報告が行われました。まず研究の概要について、研究代表者である当センター研究所 井上剛伸福祉機器開発部長から報告がありました。「完成用部品の機能にかかる課題と米国保険制度における機能区分」の報告では、ナブテスコ株式会社の児玉義弘氏から報告があり、米国保険制度におけるL codeによる義肢・装具の機能区分について紹介され、同制度での機能区分とユーザーの機能、価格を結びつきについて報告されました。「更生相談所からみた補装具費支給制度の課題」の報告では、宮城県リハビリテーション支援センターの樫本修所長から、全国の更生相談所における補装具判定について先行研究により明らかにされた状況と課題が紹介され、そして先行研究を踏まえて本研究で進めている補装具費支給判定Q&Aマニュアルの作成について報告されました。
 研究班外の方からも3つのご報告をいただきました。厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 自立支援振興室の加藤晴喜福祉用具専門官からは「障害者施策における補装具支給制度の現状と課題など」と題して、補装具費支給制度について統計データ・先行研究等を踏まえた現況および課題についてご報告いただきました。日本義肢協会の橋啓次氏からは「補装具の適切な支給実現のために補装具製作事業者が抱える問題点」として、義肢・装具の価格設定についての課題と米国と日本との価格比較について報告されました。日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)義肢装具部会の羽佐田和之氏からは「今後の補装具費支給制度について」として、ICFモデルに基づき心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子の各項目を踏まえた補装具費支給の評価・判定方法について報告されました。
 各報告の終了後、上記各報告者および筆者(当センター研究所障害福祉研究部研究員)をパネリストとするディスカッションがもたれ、今後の補装具費支給の判定、機能区分、価格設定などについて、意見が交わされました。フロアからも、補装具を利用している障害当事者の方、補装具製作に関わる方、リハビリテーションセンターの方などからご発言をいただきました。


写真:パネルディスカッションの様子
<パネルディスカッションの様子>

 最後に当センター加藤誠志研究所長より閉会の挨拶があり、本公開研究会を終えました。加藤所長の挨拶にもあったとおり、今後の研究を進めるうえで、データを集めること、どうやって集めるか、そしてそれを補装具の利用者、供給関係者、行政、研究者などさまざまな立場の方を交えて検討を行い成果をまとめ、それを発信していくかということが課題になるかと思います。次年度以降もご関係の皆さまのご協力を賜りますようお願い申し上げ、報告といたします。



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