「システム脳神経科学とリハビリテーション研究会: SNR2014」開催報告
                研究所・脳機能系障害研究部脳神経科学研究室 神作憲司

2014年3月12−13日に、国立障害者リハビリテーションセンター学院(6F大研修室)にて「システム脳神経科学とリハビリテーション研究会(Conference on Systems Neuroscience and Rehabilitation:SNR2014)」を開催しました。システム脳神経科学とリハビリテーションの関わりを手掛かりに、医学、工学、心理学等、バックグラウンドを問わずに研究者が集い、先端科学と人間の福祉の向上を如何につなげていくかについて議論する場を提供できればと考え、本研究会を企画させていただきました。2010年より開催してきている研究会も、本年で5回目の節目の開催となりました。皆様方のご支援に心より感謝申し上げます。
 研究会では、はじめに国リハ研究所での関連研究として、脳機能系障害研究部脳神経科学研究室で行ってきている、ブレイン−マシン・インターフェイス技術を用いた障害者自立支援システムの研究開発状況をご紹介しました。つぎに、運動機能系障害研究部の緒方徹氏より、脊髄損傷後の歩行運動に関するニューロリハビリテーション研究をご紹介いただきました。
 そして、ATR脳情報通信総合研究所の川人光男氏より基調講演をしていただきました。川人氏は計算論的神経科学の第一人者で、今回は、デコーディッドニューロフィードバック法とその医療応用に関する最新の研究などについてお話くださいました。
 引き続き、3部構成で先生方にご講演いただきました。第1部は「ブレイン−マシン・インターフェイスとニューロリハビリテーション(Brain-Machine Interface and Neurorehablitation)」、第2部は「神経画像手法の応用(Neuroimaging Application)」、第3部は「ニューロリハビリテーションの神経基盤(Neural Basis of Rehabilitation)」としました。第1部「ブレイン−マシン・インターフェイスとニューロリハビリテーション」では、理化学研究所BSIのAndrzej Cichocki氏より、テンソル分解等を用いたブレイン−マシン・インターフェイスの高性能化に関する研究をご紹介いただきました。ドイツ・テュービンゲン大学のSurjo R. Soekadar氏からは、ブレイン−マシン・インターフェイスのニューロリハビリテーション応用に関する演題をご発表いただき、京都大学の美馬達哉氏には、経頭蓋直流電気刺激法のリハビリテーション応用についてご講演いただきました。
 第2部「神経画像手法の応用」では、ATR認知機構研究所の今水寛氏より、fMRIにより見出された脳内ネットワークに関する情報と行動との関係についてご講演いただきました。そして首都大学東京の関原謙介氏より、脳磁図の信号源推定による脳内ネットワークの解析についてご講演いただきました。第3部「ニューロリハビリテーションの神経基盤」では、米国・カンザス大学のRandolph J. Nudo氏より、神経補綴機器による損傷脳修復の神経基盤に関して特別講演をしていただきました。Nudo氏は、「Neurorehabilitation & Neural Repair誌」の編集長もされているニューロリハビリテーションの第一人者です。そして産業技術総合研究所の肥後範行氏より、運動野損傷後のトレーニングによる巧緻運動の回復についてご講演いただきました。さらに、若手研究者からのポスターも25演題の発表がありました。ポスター発表の時間では、参加研究者の間で活発な議論が交わされました。
 今回の「システム脳神経科学とリハビリテーション研究会(Conference on Systems Neuroscience and Rehabilitation:SNR2014)」は、基調講演の川人光男氏、特別講演の Randolph J. Nudo氏をはじめ、先端的な研究を行っている研究者が一堂に会する貴重な機会となりました。ご参加くださいました皆様に感謝いたします。こうした機会を設けることで、近年展開が著しいシステム脳神経科学やその周辺の先端科学による研究成果を、リハビリテーションへと良く活用していくために貢献できればと願っています。本研究会を開催するにあたり、いろいろとご指導いただきました中村耕三総長、加藤誠志研究所長、中島八十一学院長・脳機能系障害研究部長、飯島節自立支援局長、赤居正美病院長に深く感謝いたします。そして研究室スタッフの皆さん、準備から当日対応・後片付けまで、おつかれさまでした。国の内外や研究分野を問わず、患者・障害者のために研究者が結集する機会をつくっていければと考えていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

図 会場にて

写真1:会場にて


写真2:会場にて



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