「未来につながるアプローチがある」
研究所オープンハウス2014を開催しました

研究所 障害福祉研究部  我澤 賢之

 平成26年12月5日(金曜日)に当センター研究所を会場に開催された「オープンハウス(研究所一般公開)」について報告させていただきます。

 このイベントは日頃研究所で行われている、医学、工学、社会科学、義肢装具学などを基盤に、障害のある方々の「活動と社会参加を支える技術」の開発、「生活を支える社会環境整備」の提案、「心身機能の解明による回復・向上」などの各分野の研究について広く知っていただくことを目的として毎年開催されるものです。9回目の開催となる今回も、研究の詳細を紹介するパネル展示や、実際に開発した機器のデモ展示、さらには体験の場などからなる展示の場を用意させていただきました。昨年・一昨年の第7・8回オープンハウスは、10月のリハ並木祭と同日土曜日の開催だったのに対し、今回は第6回以前と同じ12月の障害者週間に合わせての開催で、当日寒いなか130名余りの方にご来場いただきました。内訳は、会社員、学生の方が多く併せて来場者の4割余り、つづいて、公務員、主婦、研究者、医療・福祉の専門職の方などが来場されていました。各展示会場で、研究担当者の説明に熱心に聞かれていました。みなさまからたくさんのご質問、ご意見をいただき、関心の高さを窺い知ることができました。また、来場者の方にご協力いただいたアンケートでも、説明が丁寧だったとのご指摘を多数いただけたことはありがたい次第です。
 今年も情報保障の一環として、簡易筆談記の用意と併せて、パンフレットの点字版、文字数を抑えかつよりわかりやすい表現を用いた簡易版、マルチメディア・デイジー版の CD-Rを用意しましたところ、嬉しそうに持ち帰る方が少数ながらおられました。特にマルチメディア・デイジー版の CD-Rは喜ばれたようです。結果的に点字版パンフについては、ご利用になる来場者の方はおられなかったものの、今回のように多様な読み方に応じられるようパンフレットを揃えておくことは重要と考えています。

以下に主な展示内容をご紹介いたします。

○ 脳機能系障害研究部
高次脳機能障害研究の紹介(文処理の脳メカニズムについて、音声処理の脳メカニズムについて)、ブレイン−マシン・インターフェイス(BMI)実用化研究、高次脳機能の客観的評価手法およびニューロフィードバック手法の開発、発達障害研究の紹介、自閉症のコミュニケーション障害の改善をはかるための訓練ゲームの開発についてパネルや動画等の展示によって紹介しました。来場者アンケートでも、今後に向けてBMIの研究に期待するコメントが複数みられました。

写真:脳機能系障害研究部の展示風景
脳機能系障害研究部の展示(ブレイン−マシン・インターフェイス実用化研究)

○ 運動機能系障害研究部
損傷脊髄の機能回復を目指した基礎研究、ヒトの姿勢と歩行のしくみを解明する、新しいコンセプトに基づくリハビリシステムの開発、褥瘡のメカニズム解析と再発予防、遠隔地シーティングクリニック支援についてパネルやコンピュータ等の展示により紹介しました。実際に研究で使われている実験設備などが設置された研究室での展示で、研究の場の雰囲気がより伝わったのではないでしょうか。

写真:運動機能系障害研究部の展示風景
運動機能系障害研究部の展示(脊髄損傷者の歩行リハビリテーション)

○ 感覚機能系障害研究部
網膜の変性と再生に関する研究、難聴の病態解明と新しい原理の人工内耳の開発、盲ろう者支援のための触指文字用ロボットの開発、吃音の病態生理の解明と吃音のある人の評価・支援法の開発についてパネル等の展示により紹介しました。触指文字用ロボットについては試作された実機が展示されていましたが、特に印象に残った展示としてこれを挙げた来場者の方が複数おられました。

写真:感覚機能系障害研究部の展示風景
感覚機能系障害研究部の展示

○ 福祉機器開発部
電動車いすシミュレーター、車いす搭載型うつ熱予防システム、支援機器の臨床評価、車椅子クッションやおむつのぬれ消散機能の測定、義肢装具/座位保持装置の試験評価、大切な情報を知らせてくれる生活支援ロボット、予定と日付が分かる電子カレンダー、透明文字盤コミュニケーションにおける介護者支援、住環境整備業務の体系化及び記録用紙の開発の展示が行われました。電動車いすシミュレーターなどの設備や、介護者の負担を軽くするよう拡張された透明文字盤など開発した機器、活用を図っているロボット等の実機を交えた展示によって、紹介しました。

写真:福祉機器開発部の展示風景
福祉機器開発部の展示(大切な情報を知らせてくれる生活支援ロボットなど)

○ 障害工学研究部
障害者支援機器・評価機器のためのセンサの研究開発、福祉機器の客観的評価のための外装変形機構を有する人型ダミーロボット、国リハコレクション2014(ファッションショーと展示)の紹介、高次脳機能障害者を支援するアプリ、ロボットによるコミュニケーション能力の獲得支援、筋電で動く幼児向け筋電義手トレーニングシステムについて、パネルとロボット等の実機による展示により紹介しました。来場者アンケートによれば特に印象に残ったとして、幼児向け筋電義手トレーニングシステムのデモ機である、筋電により操作するプラレールを挙げる方が複数おられました。

写真:障害工学研究部の展示風景
障害工学研究部の展示(筋電で動く幼児向け筋電義手トレーニングシステム(筋電で操作するプラレール)、ロボットによるコミュニケーション能力の獲得支援、福祉機器の客観的評価のための外装変形機構を有する人型ダミーロボットなど)

○ 障害福祉研究部
プリントディスアビリティへの支援に関する研究〜多様な障害における電子図書活用〜、災害時要援護者支援のあり方に関する研究、障害者支援を充実させるための施策構築に関する研究、義肢・装具・座位保持装置製作をめぐる価格と製作費用のはなしについてパネルやタッチパネルパソコン等による展示によって紹介しました。

写真:障害福祉研究部の展示風景
障害福祉研究部の展示(障害者と支援者による災害対策に関する研究などパネル)

○ 義肢装具技術研究部
模擬筋電義手の体験、いろいろな義手、義足の展示を行いました。機器を体験できたり、実物を見られたりするということで好評だったようです。また、障害工学研究部と合同で、義足への荷重訓練支援システムのデモをおこないました。

写真:義肢装具技術研究部の展示風景
義肢装具技術研究部の展示(いろいろな義手、義足の展示)

 今回の来場者アンケートによれば、説明について丁寧と評価する意見が多かった一方で、開催日については、土日開催がいいとの意見を多数いただきました。また広報にさらに力を入れるようご指摘をいただきました。来年度の開催に向けて、また考えさせていただきたいと思います。
 最後になりましたが、ご来場いただいた皆さま、どうもありがとうございました。
写真:研究所オープンハウス告知の様子

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