障害者基本法第9条には、『国民の間に広く基本原則に関する関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することを促進するため、障害者週間を設ける。』と記載しており、12月3日から9日までの1週間は障害者週間となっています。
当センターでは障害者週間のイベントの1つとして国立障害者リハビリテーションセンター子ども体験デーを実施いたしましたので、ご報告いたします。
平成27年11月20日(金)、27日(金)、12月8日(火)の3日間で、近隣の小学校3校(計217名)が国立障害者リハビリテーションセンターの子ども体験デーに参加しました。
今回体験していただいたので、手話体験、筋電義手体験、電動車椅子体験、アイマスク体験、障害者スポーツ体験(車いす)、障害者スポーツ体験(視覚障害)の6項目です。
1 手話体験
当センター学院手話通訳学科の教官による手話体験を行いました。
手話通訳学科では言葉を使用せず事業を行います。今回は小学生の皆さんに言葉を使用しない授業を体験していただきました。
体験は聴覚障害のある教官の話を手話通訳者を通じて伝えるという形で始まりました。
まず、最初に○×クイズ形式で、手話を学びました。
ここで、出題された問題の一部を紹介します。
① 手話は世界共通である。 ○ or ×
② 手話には方言がある。 ○ or ×
皆さんお分かりでしょうか。
答えは@は×、Aは○です。
手話について初めて体験する児童が多く、皆さん真剣に聞いていました。
体験の後半では、言葉でのコミュニケーションを禁止した授業を体験していただきました。
ここからは話を手話通訳者は付きませんので、講師からの言葉による説明はありません。もちろん隣の友達に聞くこともできません。
皆さん どのように行ったと思いますか?
今回はプロジェクターによる映像(イラスト)と手話によって講義を行いました。
「話すこと禁止」と言われた途端、「えー」という声とともにざわざわ落ち着きがなくなったのですが、教官の説明が始まるとだんだん集中し、数分後には皆さん教官の説明を見逃さないように集中して教官と画面を見ていました。
教官は、動物のイラストを見せて、その後その動物を手話で伝えます。子ども達はイラストの動物の手話だと理解し、すぐに手話を覚えます。
「ねずみ」、「うさぎ」、「イヌ」、「うま」、「にんげん」の手話をすぐに覚えていきました。
覚えた手話でゲームを行いました。
最後に教官に手話について多くの質問がありました。
子ども達に手話によるコミュニケーションを体験いただけたと思います。
2 筋電義手体験
当センター研究所義肢装具技術研究部の義肢装具士による筋電義手の体験を行いました。
「筋電義手」とは不慮の事故や疾病によって手や足の切断を余儀なくされた方々に筋肉が活動するときに発生する電位(筋活動電位)を利用して動かす義手のことです。
今回は模擬体験用の筋電義手を使い、体験を行いました。
体験は2つのグループに分け、それぞれ2種類の義手の体験を実施しました。
一つは手に持って操作するタイプの義手です。
義手を使って、柔らかいボールやペットボトル等を掴む体験を行いました。
普段は簡単に掴んでいるボールやペットボトルですが、義手を使って掴むとなると力加減がわかないので、みんなうまく掴めるように悪戦苦闘。何人かの児童はペットボトルをつぶしていました。
二つ目は筋電義手の体験です。電力を腕に2か所つけ、手首を動かすことによって、筋電義手を動かしました。
初めて見る筋電義手の技術に歓声が上がりました。
3 電動車椅子体験
当センター研究所福祉機器開発部の研究者による電動車椅子の体験を行いました。
電動車椅子は肢体不自由な方が移動するため、少ない操作で動作することができます。
電動車椅子ユーザーでもある研究者から電動車椅子の説明を受けた後、実際に試乗していただきました。
今回は使用した電動椅子は通常の車いすにモーター等を付けたものやリクライニング機能があるものなど4種類です。
それぞれ、スピードを一番遅い設定にし、お互いぶつからないように安全に気を付けて乗っていただきました。
体験後に児童の皆さんからの質問も数多くいただき、電動車椅子のことやその技術について興味を持っていただけたのではないかと思います。
4 アイマスク体験
当センター自立支援局で視覚障害のある方に歩行訓練等を指導している専門職による視覚障害者の疑似体験(アイマスク体験)を行いました。
内容はアイマスクを着けて歩行とその誘導です。
普段目で確認して歩いているので、アイマスクを着けるとまったく見えなくなり、進行方向もわからず、歩行すること自体容易ではありません。
そこで、友達同士で誘導を行いました。
最初は建物の中を歩き、その後建物の外を歩きました。
歩くスピードはアイマスクをしている人に合わせます。
説明がないとアイマスクをしている人どこを歩いているのかもわかりませんが、屋外に出ると外の風を感じるため外に出たことを感じることができます。
誘導するには、視覚障害の方のペースに合わせて歩くことや今どこを歩いているか説明することが重要であるということを理解していただけたかと思います。
5 障害者スポーツ体験(車いす)
病院の患者さんや自立支援局の利用者さんに指導している運動療法士による車いすスポーツの体験を行いました。
まず、車椅子操作について、職員による実演を交えて説明しました。
車椅子で段差を乗り越えることについて説明や安全に車椅子に乗るための説明を行いました。
その後、スポーツ用の車椅子(ウィルチェアラグビー用)を使って車椅子操作体験を行いました。最初は慣れない車椅子操作に苦戦していましたが、だんだん慣れていきました。
最後に大玉を使い相手ゴールに運ぶゲームの体験を行いました。今度は車椅子を操作しながら、大玉を相手ゴールに向けてコントロールします。ゴールがきまると大変盛り上がっていました。
終わりに職員から障害者スポーツに興味を持ってくれたら、インターネット等でいろいろ調べてくれたらうれしいとの話がありました。
6 障害者スポーツ体験(視覚障害)
当センター自立支援局で視覚障害のある方に運動を指導している職員による障害者スポーツの体験を行いました。
今回体験していただいたのは視覚障害者のスポーツであるゴールボールです。この競技は1チーム3人が黒く塗られたアイシェード(目隠し)を着け、中に鈴が入ったゴムボール(1.25kg)を相手ゴールに向かって投げ、相手ゴールラインをボールが通過すると得点になります。そのため守備ではボールの鈴の音を頼りに相手の攻撃を阻止します。コートのラインには手でさわるとラインがわかるようにたこ糸の上にラインをひいています。これで方向と位置を知ることができます。
まず、パスの練習をしました。パスをするのに大事なことは味方の位置を確認してから味方に向かって投げることです。健常者のスポーツであれば、相手をよく見てパスをするのですが、全員アイシェード(目隠し)を着けているため、味方が何処にいるのかわかりません。
そこで、まず大きな声で味方の名前を呼びます。名前を呼ばれた味方の選手は大きな声で返事をします。その声で味方の位置を判断し、パスをします。
パスを受ける方は、名前が聞こえた方向に体を向け、集中してボールの転がる音(鈴の音)を聞きます。そしてボールが来たら、キャッチします。よく音を聞いていないと、ボールは足元を通過してしまいます。
最後に試合形式の体験を実施しました。
味方同士でパスを行い、相手ゴールに向かってボールを投げます。
コートのラインをうまく把握しないと相手ゴールに向かって投げることができないだけでなく、自分がどこにいるかわからなくなってしまします。
慣れてくるとうまくパスがつながるようになり、大変盛り上がっていました。
これらの体験を通じて「障害者」や「福祉」について興味を持っていただけたらと思っています。
体験終了後に引率の先生方からは、「とても貴重な体験になりました。」とのお言葉をいただき、国立障害者リハビリテーションセンター体験デーを無事終了することができました。
国立障害者リハビリテーションセンターでは、今後もこれらの活動を通じ、障害者についての啓発活動を行っていきたいと思います。
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