高次脳機能障害支援モデル事業

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国立障害者リハビリテーションセンター

 


Q & A


【高次脳機能障害の定義】
Q1:高次脳機能障害とはどのようなものですか?

A1: 医学的に統一した定義はなく、専門家によっても「高次脳機能障害」という言葉の指す範囲が異なります。また、学問の領域でこの用語を使うときと、福祉の仕組みの中でこの用語を使うときでは定義が異なってきます。近年、脳の損傷による後遺症として生じる記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が注目されていて、現在実施されている高次脳機能障害支援モデル事業でも特にこの点に焦点が当てられています。そこで行政的に高次脳機能障害を取り扱うときを念頭に説明してみます。具体的な例としては、頭部打撲や脳卒中などによって、重い意識障害に陥るような状態となり、治療の後、意識が戻り、歩行や食事ができるようになり、外見上は回復したように思えるのに、「会話がうまくかみ合わない」、「段取りをつけて物事を行うことができない」などの症状が現れ、周囲の人に「人が変わった」、「怠け者になった」といった印象を与えるような状態のことです。このような例では、これらの症状が日常生活や社会復帰に大きな支障となっているにも関わらず、一見しただけではわかりにくいため、ご本人やご家族、さらには医療関係者等の間でも、この症状が脳の損傷の後遺症によるものであるということ、そして、この症状にどう対応すればよいか、といったことなどが、なかなか理解されにくいというのが現状といえます。以下の項目においても行政的な高次脳機能障害についての取り組みを想定して、質問にお答えします。

 
【高次脳機能障害の症状】
Q2:行政的に高次脳機能障害の症状とは、どのようなものを指すのですか?

A2-1:記憶障害:物の置き場所を忘れたり、新しいできごとを覚えていられなくなること。そのために何度も同じことを繰り返し質問したりする。

A2-2:注意障害:ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりする。また物事に集中できず、すぐに飽きてしまう。ふたつのことを同時にしようとすると混乱する。

A2-3:遂行機能障害:ものごとを目的に合わせて適切にやり遂げることができない。ひとつひとつ指示してもらわないと何もできない。物事の優先順位がつけられず、いきあたりばったりの行動をする。

A2-4:病識欠落:自分が障害をもっていることに対する認識がうまくできない。障害がないかのようにふるまったり、言ったりする。

A2-5:社会的行動障害など
2-5-1:依存性・退行:すぐに他人を頼るようなそぶりを示したり、子供っぽくなったりすること。 
2-5-2:欲求コントロール低下:我慢ができなくて、何でも無制限に欲しがること。好きなものを食べたり、飲んだりすることばかりでなく、お金を無制限に遣ってしまうことにもみられる。
2-5-3:感情コントロール低下:場違いの場面で怒ったり、笑ったりすること。ひどい場には、大した理由もなく、突然感情を爆発させて暴れることもある。
2-5-4:対人技能拙劣:相手の立場や気持ちを思いやることができなくなり、良い人間関係をつくることが難しい。
2-5-5:固執性:一つのものごとにこだわって、容易に変えられないこと。いつまでも同じことを続けることもある。
2-5-6:意欲・発動性の低下:自分では何もしようとはしないで、他人に言われないと物事ができないようなボーとした状態。

 
【高次脳機能障害の診断】
Q3:高次脳機能障害があるかどうかは、どのようにわかりますか?

A3:記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害があり、脳のCTやMRIといった画像検査で、これらの症状の原因と考えられる脳の損傷が確認される場合は、比較的、高次脳機能障害があることがわかりやすいのですが、画像検査でははっきりとわからない場合もあり、その場合は過去に脳の損傷の原因となる事実があったかどうか確認することが必要となります。一方、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を客観的に検査する方法(神経心理学的検査法)については、現在のところ、医療機関によってもまちまちで統一的な検査法はありません。これらの診断方法については、これまで、一定の知見は得られつつありますが、今後さらなる知見の蓄積や、新たな検査法の開発が期待されています。

 
【症状の経過】
Q4:高次脳機能障害の症状は、回復しますか?

A4:高次脳機能障害にも様々な症状があり、その内容に合わせた適切な訓練(リハビリテーション)を受けることで治療効果がみられ、症状が回復する場合があります。しかし、全ての方に明らかな効果があるとは限りません。また、中には高次脳機能障害の原因となる脳の損傷の受傷(発症)から長い年月を経て良くなっていかれる方がいますが、一般的には受傷(発症)から年数の経った場合では良くなる程度に限界があると考えられ、早期の訓練が望まれます。

 
【福祉制度】
Q5:現在、高次脳機能障害をもつ人は、どのような福祉制度が利用できますか?

A5:運動麻痺などの身体障害を併せもつ場合は、その障害の内容によって身体障害者手帳を取得できる場合があります。また、感情面の症状が強い場合などは、精神保健福祉手帳を取得できる場合があります。受傷(発症)が18歳未満で、知能の低下がある場合は、療育手帳を取得できる場合があります。これらのいわゆる障害者手帳をもつ場合には、その手帳に基づく福祉制度を利用することができます。その他の福祉制度の利用についても、その障害の内容によって判断がなされますので、これらの福祉制度が利用できるかどうかは、居住地の市区町村の福祉窓口にご相談下さい。
 なお、厚生労働省が実施している「高次脳機能障害支援モデル事業」を実施している道府県、政令市においては、障害者手帳をもっていない場合でも、福祉制度が利用できる場合がありますので、これらの道府県、政令市の地方拠点病院等にご相談下さい。


【家族の接し方】
Q6-1:以前と人が変わってしまったようなのですが、どうしたらよいのですか?

A6-1: まず脳損傷を受けた結果起きた変化を理解する事から始まります。この説明を受けるのはとても辛いことですが、専門家から正確に詳しく聞きましょう。その上で変化にどのように対応したらよいのか、どのようにして一緒に暮らしていくのか、専門家と時期をおいて繰り返し検討していくことが大切です。

Q6-2:前に出来たことが出来なくなって苛つくんだけどどうしたらよいですか?

A6-2: 高次脳機能障害を持った結果、以前に出来たことが全く出来なくなったり、出来るけれども遅くなったり、以前と同じ方法では出来なかったりと症状はいろいろ考えられます。そこでまず、家族や周辺にいる人はどのような場面で苛つくのかメモをとりましょう。現在の能力でできるように工夫したり、現在の能力で出来ることに目を向けたりするために、最も必要な資料がそこから得られると考えます。

Q6-3:暴れたり、怒ったりした時どう対応したらよいのですか?どのように対応したらよいか

A6-3:ちょっとしたことで怒り出したり暴れたりすようになったという話をよく聞きます。特に怒りの感情は対人関係に大きな影響を及ぼすことから深刻な問題となりがちです。
 怒り出し何が何だかわからなくなるという時は、冷静に人の声かけに耳を傾けられる状況ではありませんので、怒りに正面から向かおうとするとさらに事態が悪化したりします。まずは、怒りだしたら話題を変えたり場面を変えることも必要です。物理的にその場から離すことも有効です。そして、落ち着いたところで自分がとった行動について一緒に話し合ってみることが大切です。そうすることで自分の取った行動に対し反省の言葉が聞かれるようになったり、怒り出す原因やきっかけがわかることも多く、以後の対応のヒントが得られることもあります。

Q6-4:忘れっぽくなったようですが、家族はどのように対応したらよいのでしょうか?

A6-4: 忘れやすいということは記憶に何らかの障害があると考えられますので、記憶を補う方法としてメモの活用などをおすすめします。メモを活用できるようにするためには、一定の訓練や指導を受けたり家族の協力も必要です。そのほか、よく使う物は目につきやすい決まった場所に置くようにするなど、家族も協力して環境を整えていくことが必要です。

Q6-5:訓練中はメモを取っていたのですが、在宅になってからはメモを取らなくなってきました。どのように対応したらよいのでしょうか?

A6-5: 訓練中はメモを取らないと訓練に支障を来したけれど、家庭生活では「あ、忘れちゃった」で済み、日常生活に大きな支障はないという状態になってはいないでしょうか?必要性が薄ければメモを取る意欲も薄れます。メモを取ることによって何が出来るようになるのかを本人が実感できることが大切です。
 
Q6-6:退院後,自宅にてごろごろすることが多く,外へ出たがらない,何もしたがらない場合、家族としてどのように対応したらよいでしょうか?

A6-6: このような時に叱咤激励しても効果は期待できません。自発的に何かができない人にはするべきことを具体的に示してあげる必要があります。たとえば一日のスケジュールを決めて、スケジュールに沿ってひとつひとつ課題をこなしてゆくという方法で規則正しい生活リズムを作るようにします。スケジュールを決めても自らは行わないことが多いので、表にして見やすいところに張り、ひとつひとつ促してゆきます。活動内容はその方の能力に見合ったものを選ぶことが大切です。本人の興味のあることから始めたり、簡単な家庭内役割を持ってもらうのも動機づけに役立ちます。

Q6-7:集中して何か作業をすることが困難なのですが、どのような対応を行っていけば良いのでしょうか?
A6-7: 一度にふたつのことをしないで、まずひとつのことに課題をしぼります。その上で注意が持続し集中できるような環境にします。それでもすぐに疲れてしまって集中できないのであれば、集中できる時間を少しずつ延ばすようにします。そのためには興味の持てる課題や少し努力すれば出きる課題から始めると良いでしょう。集中が途切れがちな時には様子を見ながら声かけをするのも良いでしょう。励ますのも良いでしょう。集中できたときはほめてあげるのも達成感につながります。次の取り組みにもよい影響がでてきます。周囲の人や物音などに気が散って集中できないのであれば、部屋を変えるとか机を壁の方に向けるとかの環境の調整も必要になります。

 
Q7 高次脳機能障害支援モデル事業は、どこで行われていますか。
A7 北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県、大阪府、岡山県、広島県、福岡県、名古屋市と国立障害者リハビリテーションセンターで実施されています。各地方自治体では地方拠点病院や協力病院をはじめとして、更生援護施設や小規模作業所等がこの問題に取り組んでいますのでご相談ください。 

 


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