開発会議B:第二回

開催概要

日時: 2013年12月8日(日)
場所: 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 第二会議室
参加者: 【ユーザ】 3名(介助者3名),【開発者】 5名,【オブザーバ】 2名,【スタッフ】 3名

プログラム

15:30~ 開会、挨拶、前回までのおさらい、進め方の確認
15:35~ 要求機能と思考展開図の確認
15:50~ モックアップを使って機能を確認しよう!
16:35~ モックアップを使って制約条件を出しつくそう!
17:20  次回、今後に向けて、閉会

内容

1.開会、挨拶、前回までのおさらい、進め方の確認
・排泄問題ワークショップでは、様々なテーマの検討グループが生まれてきているが、開発会議Bでは、排泄に関する悩み解決のための福祉機器開発に向けて、今後も邁進していきたい。

2.要求機能と思考展開図の確認
・第一回の議論で、参加者の思いが要求機能として整理され、そのための機構・構造が提案された。また、具体的な構造を想定する上で、制約条件・技術的課題も整理されてきた。(写真1:車いす上での消臭機構の思考展開図参照)
・昨年は『パンツからの臭いの漏れを極力抑える』ことを重視し、裾を絞ったウェットスーツ素材のインナーパンツを試作した。
・『漏れた臭いを除去する』ために、光触媒や活性炭・ゼオライト、複合臭スプレーなどが検討材料として上がった。
・本日は、『漏れた臭いを拡散させない』ための装置を試作しているので、その効果を確認しながら、議論を展開したい。

3.モックアップを使って機能を確認しよう!
・今回、モックアップとして事務局で以下の道具を準備した。

○ PCファンを発泡スチロールで囲い空気の逆流を無くした、臭い収集機。ファンの下手にはビニールのダクトを設け、収集した臭いを遠方に送風できるようにした。
○ 上記の収集機を接続できるビニールエプロン。ファンでエプロンで覆われた腰部周辺を陰圧に保ち、臭気の拡散を防ぐ。
○ 各種、臭いの元を閉じ込めたもの(スプレー式ハッカ油、香水、ラベンダーオイル、ユーカリオイル、ソース、酢)

<基本的な機能の確認>
・写真4、5に示したように、会議室の中と外で臭いを比較した。会議室の中では、臭い収集機のビニールエプロン内に香水などを噴霧。会議室の外で、ビニールダクトを通して排気される臭気を確認。
・室内では、室外に排気される空気と比較すると、噴霧した香水の匂いはほとんど感じられないことがわかった。ビニールエプロンで拡散を抑えつつ、ファンで排気することで、失禁時の臭い漏れを防止できる可能性が確認された。
・臭いの出口であるファンの下流に、『漏れた臭いを除去する』ための分解・吸着・マスキングなどの機構を設置すれば、臭い漏れを完全に防止できるはず。

<臭い拡散防止エプロン/素材など>
・エプロンがめくれるなど、利用者の動きによって閉じ込め効果が薄れると臭いが拡散してしまうことわかった。利用者の動きにも対応できるよう、臭い封じ込めエプロン自体にも消臭機能を持った素材も検討したい。
・臭いの拡散を防ぐためにも、腰・胴回りや足まわりからの臭いの漏れが防げる機能が必要。
・ゴアテックスなど、薄くて蒸れない素材がよいのではないか。

4.モックアップを使って制約条件を出しつくそう!
【使用上の制約とその解決策】
・膝に乗せる大きさとして、弁当箱程度のものだと、使用しづらい。
・ひざ掛け自体を使用しないことは可能か。
・見た目でわかってしまう装置は敬遠したい。
→ズボンにホースのようなものを組み込んではどうか?
→ペチコートの様なカバーを使ってはどうか?
・若い女性などの見た目を重視する意見と、とにかく機能重視でいきたいという2パターンがあり、どちらも重要だろう。
・できれば日常的に使用できるものが好ましいが、先ずはハレの日などに使用できるものがあるとよい。
・2本のチューブで吸引し、ファンは車いす後部に設置するなど、膝上はフリーになる仕組みはどうか。

【その他の議論】
<利用者のニーズ>
・必要台数は少ないだろうが、ニーズは必ずある。例えば最初は1年5台程度しか売れないとしても、口コミなどでユーザは増えてくるのではないか。
・国際線の飛行機利用者等、長時間移動でのニーズは大きいと思う。
→飛行機や電車、新幹線等に設置してもらえるようになると、開発者としての採算性が見えてくるのではないか。

<採算性/事業性>
・消耗品(活性炭などの吸着剤等)が商品に組み込めると、ランニングコストで採算がつり合い、開発者も参入しやすい。
→利用者としては辛いが、効果次第だと思う。
・防毒マスクなどもあるので、お金をかければ消臭できる技術はあるはずである。
・臭いはワンパスで除去するのは難しいが、コンパクトに循環させて分解させれば良いかもしれない。

5.次回、今後に向けて
今回のモックアップを使った実験で、『漏れた臭いを拡散させない』という要求機能が実現可能なことを確認できた。この臭い収集システムをベースとして、『漏れた臭いを除去する』機能を実現するための機構を検討していきたい。

写真1
写真1  これまでの議論をまとめると,機器への要求機能から設計解の候補までがきれいに網羅されていることがわかる.拡大写真はこちら

写真2
写真2  右の人の股間の臭いを左の人に嗅がせる装置(?).

写真3
写真3  ビニールエプロンの内側の臭いを収集.

写真4
写真4  部屋の中で装置を装着し,股の間に香水を噴霧.

写真5
写真5  部屋の外のダクト出口では強烈な芳香が.部屋の中では香水の匂いが全然しなかった.実験成功.

写真6
写真6  モックアップの機能の確認と,「こうでなければ使えない」制約条件の検討。

写真7
写真7  議論の内容.