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支援機器開発事例データベースの開発

研究分担者

井上剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター)  
高嶋 淳(国立障害者リハビリテーションセンター) 

研究の背景と目的 

支援機器の開発は,市場規模が小さいために研究開発費 をかけられない一方で,多岐にわたる障害に対応するためには膨大な種類の支援機器の開発が必要であるという矛盾を抱えています.その問題に対して,厚生労働省をはじめとし,国の機関も企業に支援機器の開発を活発に行ってもらうためにさまざまな助成を行っています. 我々は,これらの開発助成をさらに効率よく進め,得られた成果を広く国民に活用していた だくとともに,助成を受けていない他の企業の機器開発にも助成を通して得られた有用な開発にまつわる知見を広く広めることにより,支援機器開発を盛り立ててゆきたいと考えております.

研究の方法 

国からの公的な支援機器開発助成を受けた企業・団体に対しアンケート調査を実施し,支援機器開発プロジェクトの陥りやすい問題点,解決法,要望を収集しております.それらを分析することで,支援機器開発をスムーズに遂行する方策を練るとともに,開発事例のデータベースとして公開して役立てることを目指します.

調査対象

  1. 障害者自立支援機器等開発促進事業採択企業 69件(厚生労働省,H22-26年度)
  2. NEDO福祉用具実用化開発推進事業 31件(新エネルギー・産業技術総合開発機構,H22-27年度)

調査方法

アンケート調査票 を作成し,対象企業・団体に送付し,回答を収集致しました.
アンケート調査票

開発事例データベース

得られた回答を分析した結果,開発プロジェクトの人員構成,進捗の度合い,成果は開発の問題点等,支援機器開発事例における状況の把握ができました. また,収集した情報のうち,プロジェクトで発生した問題点やその解決法,プロジェクトを支援する側への要望などは,以下に開発事例のデータとして公開致します.

プロジェクトの中で発生した困難と解決方法(問13)

機器開発における困難

  1. 解析ロジックを開発していたが、ロジックの設計に時間がかかってしまい治験数が十分に取得できなかった。
  2. 設計検証、社内検証で設計変更が生じ、安全認証に必要な試験を助成期間内に実施することができなかった。今年度に実施する予定である。
  3. さまざまな端末機への対応要望があり、ソフトウェア(組込)の再設計およびコーディングを実施した。製品販売後に対応した。
  4. 開発機器材料の混和物の挙動がつかみにくく、シミュレーションのパラメーターの設定が困難であり、理論と実験結果の整合がとれず理論裏付がやりにくいことから、実証実験からパラメーター値を決めることになり、時間がかかった。パッケージの材料の研究も必要となり、商品化へはこの周りもかためる必要が出て来て、開発範囲が広くなった。パッケージ材料の試作は、メーカーが同意してくれて短期で解決し、試作品が完成した。
  5. 標準規格に準拠してプログラム開発をしているが、規格の解釈が様々あり、仕様のスタンダードが決まらなかった。そのため有識者の意見を求め、一般的と思われる方法を採った。
  6. 当初の構造では作動に不具合が生じ、構造を再設計し計画よりも少し遅れたが、部品メーカーとのタイムリーなやりとりで、計画通りに進める事ができ、解決した。
  7. 試作品の事前評価が悪く改善が必要となったが、構造・サイズの改善、更には適正化を行い、モニターにおいても良好な結果が得られた。
  8. 理想像を描いて設計し、製作したが、出来上ってみると次の課題が見え、改めて作り直すということを繰り返し、結果かなり理想とは異なった形となった。それは2年以上延期となり、形状も3種類になった。
  9. アクチュエータに福祉機器としての使用ならではの大きな耐久性の課題が生じた際、4つの機関からなる当プロジェクトの内、アクチュエータ開発に関る2機関で新たに小プロジェクトをつくって改善・対策にあたり計画に間に合わせることができた。
  10. 基板の試作にて、試作品に不備があり、再度試作を実施する必要があり、1ヶ月程度の遅れが生じてしまった。実証実験にて被験者の協力を受けて、短期間で有意義なデータ取りを行い、開発を終了できた。
  11. 軽量化と安全性に課題を抱えており、現在も試作を重ねている。
  12. 初年度開発したアクチュエータの機能に問題があったため、アクチュエータを見直すと共に、新たな機構を考案した。この事で、1.5ヶ月の遅れが生じたが、問題を解決する事ができた。
  13. 最初は低コストにするため、機能の1つを廃止して開発に取り組んだが、1年目の評価の時にその機能が必要であることを指摘され、再設計となった。
  14. 電気系回路の不具合から動作コントロールが不充分となったが、設計見直しを行った。約3ヶ月のロスが生じたものの、何とか帳尻を合せた形となった。
  15. 生活環境にあふれる情報から特定の信号を判別し、それからの距離や方向を求める為に信号が規格化されている事が望ましいが、規格化されていない情報が多く判別が困難であった。
  16. 試作結果から必要性能を得る為には、ある部材との併用が必要になったが、その部材と機器を併用すると、当初提案した有意性がなくなる為、プロジェクトを中断し、機器の性能向上を目指す開発に変更した。しかし、機器に使用する材料の素材バラツキが大きく、必要性能を得る目処が立たなかった。
  17. プロジェクトの計画において、情報ライブラリの制作をあげていたが、高品質のライブラリを作ろうとしたため、ライブラリ制作に長期の時間を要し要員が確保しきれず、通常品質のライブラリ制作に切り替えてアンケート調査に間に合わせた。
  18. 今迄にない、必要と思える機能をすべて組込んだ試作機は機能的には完成したが、その副作用もあり、結局一機種に組み込むことはあきらめて複数の機種となった。その意味で想定品は完成できなかった。完成したように見えてから、現実市販品に至る迄のステップがこれ程大変だと思わなかった。現在も開発継続中である。中国製の製品を採用したが問題が多く、結局国内で現在新型製品を開発することとなった。当初作った構造では規格が認めらず、公費にとてもハードルがある。国に規格化の提言をしてきたが、然るべき方々も来訪したが、それは是非そうしようと言っていたが動けなかった。そして数年経た今やっと構造に関する委員会が始まった。
  19. 想定する使用環境での使用を目的とした機器であるが、使用対象の寸法・規格が大きく違いがあった。特に外国メーカーでは使用対象の高さが大きく、機器を小さくしたい意図と反した。よって国内規格の平均的高さを対象に限定した。
  20. 試作機完成までをプロジェクト達成レベルと考えると、試作機の動作のスムーズさに問題が発生し、再設計を余儀なくされた.想定より約2ヶ月遅れたものの、機器の精度アップにより帳尻は合わせた形となった。
  21. 想定した使用環境で受けるノイズが想定以上に多種多様であり、ノイズを軽減する回路を試作機に求められ、次年度の試作機開発に大きなヒントとなった。
  22. 初年度に選定したアクチュエーターでは機能が優れず、使用者の動作に対応した機構の切替が出来なかった。次年度に別のアクチュエーターを使い新たな機構を開発した事で解決した。
  23. 製品の操作性、コストの改善に悩まされたが、発注先を変えることで品質・価格ともに向上(価格は低下)した。

開発連携に関する困難

  1. 海外メーカーと共同作業が必要な際に、日本のデータの仕様についての理解を得るのに苦労があった。継続的に丁寧なコミュニケーションを取る事で解決した。
  2. 当初よりエビデンスの無い福祉機器の開発であったため、目的項目と目標項目が企業内でズレていったため、ゴールを見失った。加えて、プロジェクトチームのあいまいさが、注力するメンバーの温度差となり実行力を失った。
  3. 開発期間の短さから、専門メーカーの協力が必要であったが、大手メーカーが快く協力してくれたおかげで、短期間で開発することができた。
  4. 単年度採択のため、4〜6月まで補助金に空白の期間が発生した。そのため本事業では委託先と継続的な検討ができない状況であったが、独自に契約を結び、採択を前提に開発を継続。計画通り開発を進めることができた。
  5. 会社の事業部である部門が取り組んでいたため、長期間の仕様検討や改修を行うことはむずかしい。商品化が大前提であり、商品提供が支援になるという想いで開発に取り組んだ。
  6. 当社の開発アプリについては、A社のOSで開発を実施していたが、障害者団体がB社のOSを推奨するといった情報があり、販売といった状況を鑑みると、状況として厳しい形となった。実証実験をしたところ、ガイダンスの説明がまどろっこしい。丁寧すぎるといった指摘もあった。また、ユーザーは、B社のOSのアクセシビリティに慣れている為、操作性の指摘もあり、そのあたりを考慮し、操作性の改善を図った。
  7. 医師や大学病院との連携の際に、患者へテストしたデータのフィードバックと改善に関する情報収集に時間を要した。また、製品の大幅な変更により、デザインを見直した。

人を対象とする機器開発の困難

  1. 困難だった点は、臨床評価にあたり当社としては初めて倫理審査を行った点である。申請書の書き方や臨床評価の計画の内容についても、他の事例の調査や外部からのアドバイスをいただきながら作成することができた。
  2. 開発機器の精度を向上するための基礎データとして、対象となるデータを一定数収集する予定であったが、協力者の時間が取れず当初計画していたようにデータが集まらなかった。そこでデータ収集対象者を健常者に拡大することでようやく当初予定していた6割程度のデータが収集できた。
  3. 本プロジェクトで当時の試作機から操作性を大きく変更したが、試作機からご協力をいただいていたモニター様より「以前のものと変わりすぎて使いづらくなった」という意見があがった。試作機があまりにも複雑すぎたこともあり、その旨モニター様に説明することで納得いただいたが、障害者が利用する機器の操作性改善の際には、その点を十分に考慮する必要があることを痛感した。
  4. 倫理審査委員会を通したモニタ試験が初めての経験だったので、申請書類の作成に数カ月間かかってしまった。
  5. 高齢者が理解できないとモニターしてもらえない為、解り易く「まんが」で説明した。
  6. プロジェクトメンバー内に臨床面の専門家が必須と感じた。
  7. 特定疾病患者に適用させるため、患者の負荷低減と低価格化を狙った。患者の負荷を減らすには、患者の動作負担を減らすことであり、同時に加工コストが減り低価格化につながる訳だが、品質も低下してしまう。我々が取り組んだ開発は「本人性」を活かすものであり、開発内容と本人性の確保のバランスを得るため、試行錯誤をおこなった。
  8. 身体に機器を固定する必要があるが、固定する位置の個人差が激しく、最初の試作段階では、十分に機能しないケースもあったが、固定バンドの構成を変更することにより、任意の場所や角度の調整が容易になった。

開発助成によるプロジェクトの困難

  1. 申請当初に開発することを検討していた製品を、アンケートの結果を受け方針を変更、スケジュール遅れなく対応中である。
  2. 申請時の課題解決手段であったものが、採用後に検討が不可能となり別の方策を検討する必要が発生した。そのために、再検討を行うことになり申請時に描いていた完了までの青写真で進めることができなかった。
  3. 当機器の開発は当初より2年間の計画で進めているので、現段階ではスケジュール通り進行している。
  4. 予算が厳しくなったため、販売に向けての準備に時間がかかっている。

予測不能な事象による困難

  1. 自然災害により一次試作機で使用する部材確保が大幅に遅延したが、基板設計の見直しにより解決した。対象者に配慮し金型によって作成した本体への表記、そのことによる印刷の困難が生じたが、印刷手段を変えることにより解決した。

プロジェクトの中における成功点とその要因となった事例(問14)

プロジェクト体制における成功点

  1. 公益法人及び大学との連携により、現場でのモニター等、有効的であった。
  2. 大学と協同で、人間工学的手法により、画面の構成・色を決定しモニタ評価を通して得た意見を反映し改良することで目的を達成する提示画面が実現できた。
  3. プロジェクトリーダーが、障害当事者であった為、ユーザーの要望に添った形での開発が行われたことが成功点である。
  4. 数多くの福祉機器を製作している企業ゆえに、開発初期に見受けられる、たくさんの選択肢を最小限にする事ができた。これは、専門分野ゆえの成功点であると思う。
  5. 計画立案前2年程からプロジェクトリーダーによる基礎開発は行われており、立案的には開発コンセプトが明確になっていた事。
  6. 4機関協業で各々が持つ専門的で高度な技術を共有化し、開発を進める事ができた。障害当事者に関する研究施設の協力を得る事が可能となり、被験者のリクルートから実証試験まで効率的、計画的に進める事ができた。
  7. プロジェクトに、障害当事者に対する研究に対して実績がある方に参画して頂いたことが大きな成功要因の1つと考えている。その方は、対象となる障害者ニーズ・ユーザー評価などに精通しておられ、試作機仕様の決定及びユーザー評価からのフィードバックによる修正など、効率よく進めることができた為である。障害者の研究を行っている機関をプロジェクトに参画して頂くことは必須だと思う。
  8. 開発において、申請当初は専門メーカーのあてがなかったが、予算を確保できたことにより、大手メーカの協力が得られた。

開発段階における成功点

  1. 身体への固定バンドの構成を変更したことにより、また、それに対応した部品を新設計したため、従来の機器を利用している方々に対して、従来のものとほぼ同等な機能を実現できることが確認できた。
  2. 量産に向けた課題を洗い出すための1次試作品をつくることが目標であった。狙い通り多数の課題を抽出でき、今年度の2次試作品開発につながった。
  3. 絶対に捨てなかった。又妥協しなかったことにより、今迄にないものが生まれたと自負している。機器の基本的な構造に対しては、アメリカにほとんど特許をとられている。が、そこで特許取得ができ、他にも全新しい機構を数多く開発した結果、従来手法の専有面積に対し1/4に削減することを実現した。
  4. 製品の発注先を変えることで操作性、コストの問題が解決した。
  5. フラットなデザインである、端末機器において、当事者に通知する必要性を考慮し、外部デバイスにより、起動ができる点は、非常に当事者にとって高評価であった。
  6. 他社が取り組む装置と開発ソフトとを融合させることを狙った。障がい者に向けて提供される様々な機器・装置は、それぞれの良いところを組合すことで更に価値が上がる。また、利用者様もそれを望んでいた。会社が異なることで役割と責任の分界点、サポートの方法など様々な課題があったが、利用者の喜びを目指し、お互いが協力し合い成し遂げることができた。
  7. 行動を促す際にご家族のご協力や、その他の開発を採用、また見た目もかわいらしいキャラクターを採用するなど、単なる機器から人間らしさを追求したインターフェースにこだわった事で、特にその点についてはご家族の方からも高い評価をいただく事が出来た。
  8. 簡単に使用できるツールにする事に開発の重点を置いた事が成功点だった。
  9. アクチュエータの機能に問題があったが、新たな機構とアクチュエータを見直す事で解決できた。
  10. 使用対象者が限定された端末機に絞った事で、仕様が限られる。そのため機能は絞られるが、必要なものの提供に注力できた。
  11. 操作が簡単という点に特化したので、OSを搭載せずチップベースでの製作となり、低価格で気軽につかえる機器となった。
  12. 機器の鍵となる回路設計において、新しく設計したアナログ回路で高効率化を実現できた。
  13. プロジェクト二年目に開発した新たな機構により、機能の優れた機器にできた。
  14. 多種多様の信号を収集し、そのデータを解析すれば、特定の信号を判別できる事が理解出来た。
  15. 想定した使用環境における外来ノイズ(雑音)の感じ方は障害当事者の障害レベルにより異なる事がわかった。
  16. 既製品を上回る性能を目標にしているが、ある機能は越えているものの別の機能にについては、残念ながら試作品評価では越えることは出来ていない。開発機器材料の使用方法では、材料の長期安定性の実現については成功して、2年位は変性や性能劣化は少ない。
  17. 機器の一部を減らして、シンプルにした。

評価段階における成功点

  1. 多くの方がモニターテストに参加していただけたので、販売時の課題点が明確になった。
  2. 試作機を実際に利用される方々に試用していただき、その結果を踏まえた改良を加えたことにより、より完成度の高い試作機が完成できた。
  3. モニタ評価で多くの意見を聞くことができたことにより、実用的な製品化ができた。
  4. 試作開発の段階から大手通信会社の特例子会社が協力して頂いており、研修などでもテストで使用され、一定の評価を得ている。
  5. 当初の課題として、身体の浮腫の改善があったが、対象とする障害者及び高齢者での検証ができていなかったが、本プロジェクトにより、検証を実施出来、量産化へ至った。
  6. 想定する使用環境への機器を持参又は送付して使用する条件は満たした。使用対象の構造に左右されず、使用対象部位に機器が入らない構造で安定するデザインにより解決した。
  7. 2年目の活動において、市販の装置とのコラボレーションが実現でき、多くのユーザに喜んでいただけた。このように他社製品と組み合わせることで、利用者のQOLを高めることができたのは本事業の成果であったといえる。
  8. まだ量産できる仕組みがとれず、ニーズに対応できずお断りしたりしている。しかし、これを希望するユーザーや企業、とくにセラピスト達からの信頼が大変多く、その意味においては、ニーズをしっかりとらえているものができていると自負している。それは当社が20年以上にわたり、市販品を改造し、自立を応援する機能を作り続けて来た事と、世界中の最高レベルの福祉機器を扱って来たので、それ以上のものを目指す基準を持つことができた。
  9. 実際の材料を使用せずに、疑似材料を用いることで性能評価を実施出来うることを確認し、評価方法として用いることとした。
  10. モック製作から当事者が開発メンバーに入って頂けたことは、形状・置き方などの検証が行え、商品化することにあたっても、この事が非常に有意義な事であった。
  11. モニタ試験を導入することによって被験者への関わり方等を学べることができ、スムースに試験を行いデータを取得することができた。開発機器にデザインを考慮することによってユニバーサルな機器が完成した。
  12. 取付対象物の違いで荷重が変わるため、部品の変更で取付対象物の幅が広がった。障害者様の協力が多数あり、解決に至った。

開発助成を受けたことによる成功点

  1. 本研究をきっかけにものづくりに関する事業での採択を頂き更に発展させた形で開発が進んでいる。
  2. 補助金ということもあり、専門家や医師の信頼もあり、協力者が多く、各地において様々な障害特性を調査できた。
  3. 定量的にしにくいものを定量化できたので、SUS(System Usability Scale)の評価をご教示頂けたことが良かった。
  4. 本開発を通じて、推進委員会の方々や、被験者の方々との交流を深めることができ、結果実証実験の成功につながったと考えられる。
  5. 公開展示会において、被験者を呼んで使ってもらった結果、良い評価が得られ、必要性の自信につながった。

プロジェクトの中における失敗点とその改善点(問15)

機器開発面における失敗点

  1. 本プロジェクトの計画の一部であった操作性の改善について、予定データを登録する際の操作が使いづらいという意見があがった。これは主に利用者への促しや確認に関する操作性改善に注力したためであり、データを登録する、登録系の操作についてももう少し意見を取り入れながら改善すべきであった。
  2. 当初計画ではA社のOSであったが、プラットフォームをB社のOSにすべきだった。しかしながら、アプリケーション開発において、B社のOSの場合、アプリケーションからのアクセスが難しい(場合によっては出来ない)といった問題点も挙げられる。
  3. 解析ロジックを開発していたが、ロジックの設計に時間がかかってしまい治験数が十分に取得できなかった。
  4. 試作を進める中で、材料バラツキによる性能差が大きく現れ、安定した性能の製品を作製する事が困難であることが顕在化した。確立された材料でなかったので、材料の安定化も開発に盛り込んでおくべきだった。
  5. データの使用ライセンスが高額な事もあり、計画当初に予定した販売価格よりも高額な製品になってしまった点が挙げられる。
  6. 開発したアプリケーションソフトの使用において、情報選択の際に個々の選択と一括処理の登録ができるようにした方が良かった。
  7. 生活環境にあふれる情報の中の特定の信号について、規格化する事により、必要な信号の判別が容易になる。
  8. 当初の予定では、道の構造だけを重要視してコストダウンに取り組んだが、それでは目新しさがなく受け入れもよくないので、最初から色々な動作パターンのあるオンリーワンを考えた方が良かった。
  9. 開発ソフトウエアのOSの複数対応については、製品出荷後の要望であり、当初の予定外の作業となった。
  10. 対象者によって異なる使用環境下において、対象者の操作性などを検証し、試作機に反映させる事が困難であった。本来、操作性には関係のない使用環境が検証に大きく影響した。
  11. 当初の予定では、開発機器動作部の重量を8〜9kgで考えていたが、実際には11kgになった。機構上、材質上、コストとの絡みで、軽量化をもう一歩進め切れなかった。
  12. 取り扱いやすい仕様で製品化することによって、対象とする障害者のみならず、ある特定病の罹患者にも利用できる可能性を探り、臨床評価も実施したが、病状による個人の状況が想定していた以上に多様であり、必ずしもすべてに適用できたとは言えない部分が大きな改善課題と考えている。
  13. 当初の予定では、対象箇所を押す部品をある動作方式にしていたが、動作量が足りず、大きさ等の問題があった。プロジェクトを計画する段階で、部材や部品の検討をもうすこし、スタッフと行えばよかった。
  14. 開発に使用した開発機器動作部は、あるメーカーのものを使用したが、動作に満足いかなかった。今後改良された製品の販売の可能性があると聞いていたが、それは中止となった。開発目標は屋外でも使用する為、開発を根本転換する必要が生じた。結果様々検討や試作が行われ、時間はかかったが良い点にもつながった。
  15. 子供用において、成人用と同様の設計を行ったが、日常用補装具を流用する設計をするべきであった。
  16. 仕様の策定に時間がかかってしまい、試作の開始に時間がかかってしまった。仮設検証を速くまわし、設計期間が短縮できれば良かったと思う。試作の予算を十分に取っておくべきであった。
  17. モニタ評価の際、正しい使い方がわからずに間違った使い方をしたために思ったような性能ができないという評価者がいた。改善策として、モニタ評価中、何回か評価者に集まっていただいて使用状況のヒアリングと使い方の指導を行った。
  18. 試作機完成までは失敗点はないと思えるが、操作時に製品部分から若干音が発生する点は改善が必要と思われる。
  19. 時代の流れ的にはその仕様が主流となってきていたため、当初から特定の仕様での接続を想定して設計すべきだった。
  20. 開発機器材料の特性を利用して、目的の機能を実現するシステムであるが、一旦形を成すと、最終的には目的の機能を果たさなくなってしまうため、それが発生しない構造に苦労した。別の材料を使う構造にはじめからやっていれば対策は不要にできるかも知れない。
  21. 試作品を使ってみての感想・評価をおこなうというモニタ評価に偏ってしまっていた。本来は試作品に対する作り手の思いよりも、使われる方々にとって最善な支援機器とはどういうものか?という観点に立ち、どういった試作品を作るべきかに重点を置き、この制度を利用すべきだったのかもしれない。
  22. 当初予定では持ち運びすることも視野に入れていたが、専用カバーを作成し、特定の方法で事前送付に限定した方がよかった。
  23. 当初の予定では、ある検証の目的で市販の機器と本システムで得られる信号を比較評価することになっていたが、機器の設置に問題が発生し評価が充分には実施できなかった。評価実験は、施設内の障害者の個室に装置を設置して実施せざるを得ない。したがって期間対象人数も限定されているので、計画が不充分であったと反省している。

販売時における失敗点

  1. 端末機の普及が想定したほど進まず、量産化を断念した。
  2. 当社は、機能の開発はできても、同じ物を量産化(メーカー)としての経験も、ノウハウもなく、そこに大きなハードルがあった。当初は、ものが開発できれば量産もできると簡単にとらえていた。試作ができる毎に、課題が見え、又次のビジョンが生まれ、きりなく理想がふくらみ、いつになってもゴールにいたらなかった。ある時点でとり合えず止めて販売にすることが必要であった。(その問題の一つに規格の問題が生じた) 全額出る助成金システムはほとんどなく、小規模企業にとって連続で助成を受ける事は負担が大きかった。
  3. HCR等に出展し一般に対して広報してきたが、各施設・専門職へももっと早い段階でアナウンスすれば良かった。
  4. 製品の周知活動を様々なメディアを通じて発信を試みた。SNSなどのメディアで発信をおこなった。これにより欲しいであろう人に直接届き、購入につながることを期待していたが、実際には届いているのかいないのか追跡できず、(不特定多数の読者の中に一定割合で届けたい対象が存在している可能性はあるが、)効果の測定がおこなえなかったため、「発信をおこなった」という事実のみであった。
  5. この機器を必要としている当事者へ、どう知らせていくか?また施設での販路をどのように進めていくか?などが課題である。
  6. 予定していた機能は全て実装したが、年度内のサービス提供を必達の目標としていたため、一部の機能におけるユーザーインターフェースが、ユーザビリティが充分ではない。

プロジェクト体制に関する失敗点

  1. 最初の試作装置を作る前にもっと利用者の声を聞いておいた方が良かった。
  2. 当初の予定では、対象とする障害者向けの学校(支援学校)の生徒中心に実証試験を実施してデータ収集する計画であったが、スクールバスの運行状況の把握が不充分であった為、ほとんど実証経験ができなかった。事前に詳しい調査が必要であった。
  3. 企業都合であるが、プロジェクトチーム内の温度差があった。研究デザインに基いた自分から積極的に進めるメンバーと助成金もらえたのだから経費分しか進めない消極的メンバーがいた。会社の持ち出しは多くても、専従メンバーで進めるべきであった。
  4. 当初の課題解決手段を検討していた会社より以降の検討は出来かねるとの連絡があり、別の解決手段を検討することになり可能性のあるものを見出したが、これが申請時と採用時の間で起こった事象のために本プロジェクトの遂行が滞ることとなった。
  5. 障害者に評価を依頼する場合に必要な倫理審査について、申請する委員会の指定を受けたが、それに時間を割くことになり非常に非効率であった。プロジェクト内に認められた倫理審査委員会を有する機関がある場合は、他プロジェクトの方の意見と同様、その活用を許してもらえるとよい。

開発助成に関する失敗点

  1. 予算が厳しくなったため、販売に向けての準備が進んでいないこと。
  2. 倫理審査が長期間になり工程を変更した。
  3. 当初の予定では、2年目に数点金型製作したいと思っていたが、半額補助になったため、一部部品は金型製作できなかった。

プロジェクトのどういった所に,どのような補助があればより良く遂行できたか(問16)

金銭的な補助について

  1. 商品化を進める中で、新しい機構を折込んでいる為、認証を得る為の経費が高額に掛かる事が想定不充分であった。商品化の為の援助(金銭的補助・技術的部分も含)があるとありがたいと思った。
  2. 補助事業開始当初は、工数が補助の対象であったが、ある年度は対象外となった。補助率1/2であれば工数は考慮頂きたい。
  3. 被災の影響により2年計画を1年での終了を余儀なくされてしまったが、継続・非継続の判断に少なからず影響したのは、、1年目が100%補助で間接経費計上が可能であったのに対し、2年目が、50%助成で間接経費計上不可であったことである。残念ながら、事業規模の小さい障害者用機器の開発は福祉系以外の企業では充分な開発費補助がないと進めることが困難である。研究開発を伴う障害者機器の開発補助の場合、相当の補助を頂けたらと思う。
  4. 単年度採択のため、4〜6月まで空白の期間が発生した。採択時点で4月に遡り費用の行使が出来るよう配慮頂きたかった。
  5. 人件費の補助があると助かった。
  6. 金銭的な補助は、もう少しあると助かります。(1/2→2/3)又、人的補助はなかなか人が集まりにくく、苦労しました。
  7. プロジェクトは、2年を申請したが、1年でプロジェクトが終了した為、開発期間が短く実用品の完成に成らなかった。
  8. 弊社は3年計画でプロジェクトを実施したが、1年1年の単位で補助予算がつくのではなく、3年間の総額の補助予算として、その間で利用できるような制度になると、より良いように思う。
  9. 初めてのプロジェクトの為、全ての面で、できるだけ節約をした形になった。金銭的、人的な補助を当初から確保できていたら実際の環境で長期の実証試験が可能であった。
  10. 開発に係る直接人件費の補助があると助かった。
  11. 製品化するという条件で全額補助をお願いしたいところである。
  12. 補助としては十分であったと思うが、測定器などの備品購入の支援がもっとあると良かった。
  13. 中小企業がプロジェクトを実施するためには、半額ではなく2/3助成にして欲しい。
  14. 中小企業が開発した福祉用具を給付対象とする為の支援(金銭的補助や、一時的にでも給付対象として試行運用・評価していただけるための仕組み作り等)を強く要望する。
  15. 1年目は全額補助だったので、金型製作に費用をつぎ込めたが、2年目は半額補助に変わってしまったため、開発費用の捻出に苦労した。
  16. 福祉機器開発に関する補助金の殆んどが、人件費(役員)に対して補助されない。弊社のような零細企業では、社長自らが、開発に携わっている。現状にマッチした補助金制度があれば良いが、ほとんどない。
  17. 量産化の過程の中で、規格等の受験費用等のある程度の援助を認めていただけるとありがたいと思った。
  18. 金銭的な補助として人件費を認めていただきたかった。
  19. 倫理審査の審査費用は全額補助を認めていただきたかった。(当初予想していなかったため)
  20. 単年度採択のため、4〜6月まで空白の期間が発生した。採択の時点で4月に遡り費用の行使ができるよう配慮をいただきたかった。
  21. 英語バージョンを開発したり国際学会にも出展したが、海外への旅費に計上できなかった。海外での調査費も対象としてほしい。
  22. 金銭的には7月ではなく、もう少し早い時期から対象にして頂けるとありがたい。本プロジェクトで実施した実証試験とは別の場所で行った実験で、モニタのリクルートにかなり苦心したことがある。そのようなところに支援いただけると助かる。
  23. 固有の技術を使った製品により、利用者のQOLを高めることはできても、利用者となっていただくためには多くの出費を課してしまっている。より多くの方に喜んでいただくため、低価格化へ向け開発費を投じてきた。その中で本事業の助けを得られたのは意味深いが、それでもなおまだ、多くの開発費が必要である。また支援機器だけの事業では市場が小さいため採算ベースにもなり難い。そのような状況において、購入者に対する公的支援が適用されるための機器認定支援などを受けられること。また直接的に開発費援助が受けられることを希望する。
  24. 本プロジェクトの進めによって、今の補助は十分であるが、補助率がもう少し高ければ当社負担も軽減できる。

技術的な補助について

  1. 材料の安定化も開発に盛り込み、材料系の開発メンバーをいれていれば、使用材料の欠点に早く気付き、対処する事ができた。
  2. 開発機器販売へのアドバイスがほしかった.
  3. 設計のプロのアドバイスが欲しかった。また安く早く金属加工の試作をするところを紹介して欲しかった。
  4. 仕様等については、アドバイスいただける方はいたが、技術的なアドバイスをなかなか無償で受けることができない。コンサル(開発・技術に関して)の様な所に支払う補助があるとより進め易いと思われる。
  5. 多くの補装具開発の中で、装具の開発に大きなアウトプットが無いのは、この分野が未成熟であるためである。しかし日本には、300万人の装具ユーザーが存在する。PO及び製作技能者のレベルアップ自体が業界の急務である。

人的な補助について

  1. 製品化のためには、性能評価、特に障がい者等の施設・病院等で多くのモニターを行う必要があり、多くの施設等との連携が出来る様なサポート体制があると助かる。
  2. 対象となる障害者向け機器の業界は独特で、この世界を知らないと分からない部分が多くあり、新規参入者はかなりとまどう。業界に詳しい方のアドバイスというか、ニーズを提案するスーパーバイザーがいたらよかったと思う。
  3. モニター制度システムがあったが、当社開発の場合は、ユーザーと密な関係があるので、システムとして必要は感じなかった。データとしても正式に役立つものとして活用できるものとなれるとは思えなかった。むしろ、短期的に完成する(できるもの)ではなかったので、もっと後に、本当の意味でモニターの声を聞け、検証できる機会があると有難かった。現実にモニター結果を提出したが、提出しないと完了にならないから行った・・・という感じであった。
  4. 在宅で介護をしている又は受けている家族及び当事者を対象として一定数のモニター使用が出来ればより具体的データが収集できたと思われる。中小企業単独での実施は困難である。
  5. モニタ評価を行いたい場所での実験ができなかった。たとえば公的機関の窓口や公共施設の受付等でのモニタ評価を行うことができなかった。管轄の公的機関から公共施設に対してモニタ評価の協力依頼を行っていただけると非常にありがたい。
  6. 商品化のあとのマーケティング、プロモーションにもっと支援が欲しい。事業部単位での活動では認知が限られる。
  7. それぞれの地域に補助機関や人員が居ると開発アドバイスが受けやすく良いと思う。
  8. 新しい概念における開発なので、新しい開発や研究に興味がある医師の方の助言があるとよいと思った。
  9. プロジェクト遂行におけるアドバイスを頂ける方がいると良かったのではないかと思う。それも、遂行に関する事務的なことを相談する方と、技術的なことを相談する方がともにいらっしゃると良いと思う。
  10. このような製品の情報を如何に必要とする人に届けるか。公的機関でも展示会を開いたりしていただいているが、障がい者という方々への情報発信の有効な手立てをご指導いただきたい。

事務手続きの補助について

  1. 短期間の中、倫理審査は大きな負担であった。
  2. 倫理審査の申請から承認までの期間短縮。当促進事業に関連する企業、団体の事前通知、シーズニーズに関しては事後に説明があったため対応できなかった。
  3. 倫理審査は初の試みであった為、このあたりのアドバイスを頂戴出来ればと思われる。また、開発費は対象外といったスキームであったが、多くの企業参入を促す為には、開発費も経費として計上できる形にすると、多くの企業の参入を期待できると思われる。
  4. 途中で何度か中間発表があったが、評価が理解している方とそうでない方が見えて、質問に的外れなものがあった。助かったのは、障害当事者に関する研究施設を紹介いただけたこと。現場のご意見は、中間発表よりはるかに参考になった。別件でも協力しあえる事になった。
  5. 助成金は有難いが、小規模企業にとっては開発部がある訳でなく人員がそちらにさかれると、売り上げも下がる。その上、提出書数の作成は基本的に苦手である。即ちこの経理関係や提出書類にかかる負担が大きく、開発に焦点できない。この辺の簡素化、或いは代行やアドバイザー等の提供等もあると、小企業も参加しやすくなるのでは。 産学官等の協力などがあるが、「学」が「産」の助力ができるようになると、もっと現実が変わると思われる。

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