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障害の予防とリハビリテーションに関する
WHO指定研究協力センター
センター長:
江藤 文夫
電話:
04-2995-3100
FAX:
04-2995-3102



世界保健機関(WHO)国際セミナー

東京宣言

1997

(仮訳)

 

 

 

国立身体障害者リハビリテーションセンター

 

世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局

 

 

 

 

この宣言は、世界保健機関(WHO)の公式文書ではないが、その著作権は世界保健機関に属する。 この文書を販売その他商業目的で利用するものでなければ、一部または全部について批評、要約、引用、あるいは翻訳しても差し支えない。

世界保健機関(WHO)国際セミナー東京宣言

1997

 

 

 

世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局

 

マニラ市、フィリピン

 

 

 

宣言について

 

 世界保健機関(WHO)国際セミナー東京宣言1997は、障害の予防とリハビリテーションに関わる世界保健機関(WHO)の支援活動である。 これは、「アジア太平洋障害者の十年」の後半に向けて、障害の予防とリハビリテーションについて個人、コミュニティー、 そして加盟諸国の努力を支援するためのものである。 この宣言は、アジア太平洋諸国の専門家によって行われた「アジア太平洋障害者の十年」の行動課題の遂行状況の分析と、 セミナーでの障害の予防とリハビリテーションに関わる真摯な討議を基に起草された。

 

  次の機関がセミナーの開催を支援し、参加した。

 

 

  本宣言についてより詳しい資料が必要な方は、下記までお問い合わせください。

  〒 359-8555

  埼玉県所沢市並木4-1

  国立障害者リハビリテーションセンター

  管理部企画課国際協力係

  電話:  04-2995-3100   ファックス:  04-2995-3661

 

 

 

WHO国際セミナー東京宣言

 

世界には身体機能、精神機能、あるいは感覚機能に障害のある人々が5億人以上おり、これらのうち3億人以上はアジア太平洋地域に住んでいる。 物理的、心理的、あるいは社会的な障壁によって、彼らはしばしば差別隔離され、かつ劣悪な生活を強いられている。 断固とした、しかも効果的な施策がとられない限り、障害のある人々の数は増加すると考えられる。

 

1992年に開催されたアジア太平洋経済社会委員会の第48回総会において、 参加33か国は1993年から2002年までを「アジア太平洋障害者の十年」とする宣言の決議(第48の3号)を採択した。 これは、障害のある人々の完全参加と平等の実現に向けて、アジア太平洋地域の各国政府がその総意を表明したものである。

 

国立身体障害者リハビリテーションセンター及びWHO西太平洋地域事務局は、 総理府等の関係省庁並びに日本障害者リハビリテーション協会等の障害者団体の後援を得て、 「アジア太平洋障害者の十年(1993年〜2002年)」の中間年にあたり、1997年11月10日から14日まで東京でセミナーを開催することを呼びかけた。 セミナーの開催に先立ち、あらかじめ各国の参加者に質問紙を送り、「アジア太平洋障害者の十年」の目標達成に向けての進捗状況の分析を行った。 また、セミナーでは、それぞれの専門的視点から障害の予防とリハビリテーションについて広汎な討議がなされた。

 

後半の5年及びそれ以降に向けて、障害の予防、リハビリテーション、機会均等化への動きを推進する緊急かつ一致協力した活動が必要であるとの基本的な合意が得られた。

 

 

【 予 防 】

 身体機能、精神機能、感覚機能の障害は、予防可能なものが多い。 仮に、機能障害が起きたとしても、本人にとって不利になるような身体的、心理的、及び社会的影響は最小限にとどめることができる。 予防プログラムには以下の施策を含むべきである。すなわち、

である。

 

避けることのできる能力障害の発生は、経済的損失をもたらす。 プライマリー・ヘルス・ケア、栄養、教育、住宅の改善を行う開発プログラムも、障害の予防とリハビリテーションの一層の改善につながる。

 

機能障害の結果生じる能力障害を除去し、あるいは最小限にとどめるのに必要なヘルス・ケア及び関連サービスを全ての人々に提供することが奨励される。

 

【リハビリテーション】

機能障害の発見と診断は、できるだけ早期に行われるべきである。 これによって、能力障害の予防、あるいは少なくとも続発性障害への波及を予防するのに必要な医学的ケア及び治療が適切な時期に行えるようになる。 能力障害を予防するには手遅れ、または不可能な場合、リハビリテーション・サービスは、 自己管理と移動の訓練、手話のようなコミュニケーション、社会・心理・その他のカウンセリング等の支援を含むべきである。 リハビリテーションは、福祉用具の提供、特殊教育サービス、及び職業リハビリテーション・サービスにも関わるべきである。 リハビリテーション・サービスは、機能障害のある人々が最適な身体的、精神的、社会的機能レベルに到達できるように提供されなくてはならない。

 

伝統的なリハビリテーションの取り組みは、施設を基盤にしたものである。 リハビリテーション・プログラムの基軸として地域に根ざした(community based)サービスが開発され、推進されるべきである。 地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)は、地方でも財政的に可能で、取り組みやすく、実態に合ったものであることが明らかである。 地方自治体の支援があれば、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)は、コミュニティーや家族を援助して、 障害のある人々が日常の生活環境の中で機能障害に起因する能力障害を克服しようとする努力を支えることができる。 障害のある人々に対する全てのサービスは、可能な限り常に既存の保健、福祉と教育、及び労働機構の中で提供されるべきである。 家族を支援するシステムの構築も同じく奨励されるべきである。

 

【 福 祉 用 具 】

障害のある多くの人々は、その活動、移動、そして日常生活の自立を改善し、聴覚・視覚の損傷を補うため福祉用具を必要としている。 これら福祉用具の製作にあたっては、できるだけ低コストで、その地域にある材料の使用が奨励されるべきである。 多くの国々が、これら福祉用具の利用を阻む関税やその他の障壁を取り除いている。 自国の全般的な技術発展に見合った福祉用具の開発と製造も支援されるべきである。

 

【 教 育 】

多くの国々が障害のある児童・生徒に何らかの奨励金を提供しているが、特別なニーズのあるほとんどの子供は、 通常の教育も、ノン・フォーマル教育(識字・社会開発教育)も、特殊教育も受けていない。 一般に教育によってもたらされる、障害のある子供や大人の可能性に人々は気付いていない。

 

障害のある人々は、インテグレーションが成功するように可能な限り通常の教育体制に含まれるべきである。 障害のある人々のニーズを配慮した教員養成プログラムが、通常の教育や特殊教育担当の教師、及びこれを支援する教職員に対して実施されるべきである。

 

【 訓 練 と 雇 用 】

適切なガイダンスと評価、適切な職業適応へ向けてのカウンセリング、そして訓練が行われれば、障害のある人々も広範な仕事をこなすことができる。 しかしながら、多くの国では、彼らが生きがいをもてる職業を見付けることは容易でない。 一部のアジア太平洋諸国は、割当雇用制度や税金の控除といった方法で障害のある人々の職業への参加を支援している。 特別なニーズがある、あるいは重度の障害のある人々のために、福祉的就労の場が整備されている。

 

障害のある人々ができるだけ自立できるように、彼らにより多くのより良い雇用機会を保障する他の施策が展開されねばならない。

 

【 人 材 開 発 】

アジア太平洋諸国では、障害の予防とリハビリテーション・プログラムを推進する上で最も困難なものの一つは、 良く訓練された専門家やスタッフの不足にあることが知られている。 教育機関での教育訓練方法も改善される必要がある。 その教育訓練の質は一定の基準を満たし、そのカリキュラムは、それぞれの国の社会・文化的な背景を反映したものでなくてはならない。 その国が必要とする人材の養成と開発について定期的に評価すべきである。

 

強調されるべきなのは、現場レベルの実践者(ワーカー)を指導するリーダーの養成・訓練である。 特に、機能障害の早期発見及び基本的援助を担当する、地域を拠点とした(community based)実践者の訓練が重要である。 適切な訓練と監督指導(スーパービジョン)が行われれば、地域の実践者は、障害のある人々が必要とするサービスを提供し、人材の不足を補うことができる。

 

リハビリテーション・チームのメンバーの指導、養成訓練にあたる専門職員には継続的教育が特に重要である。 リハビリテーションのさまざまな課題を扱うためのアジア太平洋地域の研究・教育センターの設置の必要性が認識され、不可欠なものと待望されている。

 

【 情報と国民の啓発 】

障害のない人々の非協力的態度によって、障害のある人々には、教育、社会、及び職業への参加の機会が与えられていないことがしばしばある。 偏見と差別が社会全体にくまなく広がっていて、障害のある多くの人々に心理的あるいは社会的な困難を引き起こしている。 人々の態度・意識上の障壁を除き、社会のさまざまな制度を全ての障害のある人々に開放するために、継続的な啓発活動が必要とされている。

 

障害のある人々を含む全ての国民に障害に関わる課題について広く理解を育むため、マスメディアの利用を含め広報・啓発活動が開始されるべきである。

 

【 自 助 組 織 】

世界中の障害のある人々は、自らの権利を擁護する組織を作り上げてきた。 このような組識を通じて障害のある人々は、政府の指導者に影響を与え、自らのニーズを把握し、優先順位を決定し、サービスを評価し、人々の理解を図る主体者となった。 彼らの目的は、完全参加と平等である。

 

障害のある人々が彼らの見解を明らかにする機会をもてるように、障害に関する事業の計画と実施にあたっては、 障害のある人々の組織とアジア太平洋諸国との協力が奨励されるべきである。

 

【アクセシビリティ(施設の利用し易さ)とコミュニケーション】

機会均等化への障壁を除去あるいは緩和するために、多くの国で重要な施策が実施されている。 障害のある人々が、教育、雇用、社会交流への権利を享受できるよう法律が制定されている。 感覚障害のある人々が、全ての種類の情報にアクセスできるようにするための施策が多くの国で行われている。 公共交通機関を利用できるようにする方策が採られている。 障害のある人々の機会均等化と社会参加を遂行するために更なる努力が払われるべきである。

 

【 デ ー タ の 利 用 】

多くのアジア太平洋諸国は、障害のある人々の状況を反映した正確かつ包括的なデータを保有していない。 特に、精神疾患、精神発達遅滞、及び障害に関するデータが無い。 機能障害(Impairment)、能力障害(Disability)、社会的不利(Handicap)の定義は一様ではない。 障害の原因、タイプ、及び発生率、またリハビリテーション・サービスの提供についての標準的データベースを構築する必要がある。

 

ニーズや優先順位を反映し、注意を払うべきプログラムの確認に役立つように、 計画立案者、行政担当者等を支援する効果的で信頼性の高いデータ収集のシステムが開発されるべきである。 障害のある人々自身の情報へのアクセスは保証されなくてはならない。 これには、さまざまな能力障害の形態に対応した、手近で、安価な情報技術の使用を含めるのが望ましい。

 

【 研 究 】

アジア太平洋地域のほとんどの国は、障害の予防とリハビリテーションに関わる体系的な研究計画をもっていない。 その費用対効果を勘案しながら、さまざまなリハビリテーション政策やプログラムを評価する研究が特に必要とされている。

 

生物医学的研究の最近の成果は、障害の予防とリハビリテーションのプログラムの向上に資する新しい手段の活用に向けられるべきである。 発展途上国の文化的かつ経済的状況に合った解決策を見い出すように特別な努力が払われるべきである。 障害の量と質を決定するために疫学的調査が実施されるべきである。 研究成果を互いに利用し合うことが奨励される。

 

【 立 法 】

ほとんどのアジア太平洋諸国は、障害のある人々に対して教育、雇用、社会保障、及び地域の施設の利用に関わる権利と機会を保障する法律を制定している。 これらの国の多くは、物理的・文化的障壁や障害のある人々についての差別などを取り除きながら、 完全参加を阻む障壁を除去または軽減するために重要な施策を実施している。

 

障害のある人々が、その国民には保障されている権利と自由を行使するのを妨げる多くの阻害要因がある。 立法措置を講じて、障害の予防とリハビリテーションを推進し、 社会生活において障害のある人々の完全参加を支援するための包括的な法体系と政府機関が整備されるべきである。

 

【 国 内 調 整 】

障害のある人々の課題は多岐にわたるが、これを個別的に分離して扱うべきではない。 この課題は、異なった障害のある人々の意図も配慮して取り扱うべきである。 障害のある人々の健康、教育、職業及び社会活動に関わる官民を含めた諸団体を調整する国の機関が設置され、強化されるべきである。 これは、政策の策定やプログラムの立案、そしてその実施の調整を図ることになる。 また、これはリハビリテーション分野においてシステムが全体として機能することを保証することにもなる。

 

【 域 内 協 力 】

障害の予防、障害のある人々のリハビリテーション、機会均等化といった分野でのアジア太平洋地域内の協力が奨励される。 地域内の国々での技術協力、情報や経験の交流を促進するための制度が整えられるべきである。 このような協力は、国内調整委員会の設置と強化、ニーズの明確化、情報の収集と分析、そして研究活動や養成研修といった分野に関わるものである。

 

【 結 論 】

「アジア太平洋障害者の十年」の中間年に開催されたWHO国際セミナーの参加者は、 「アジア太平洋障害者の十年」の行動課題に示された作業プログラムを全面的に支持した。 本セミナーの参加者は、この10年間の進捗状況を定期的に評価することを勧告した。 「アジア太平洋障害者の十年」の始まりにあたって起草された行動課題へのこのような支持を再確認することは、 後半5年及びそれ以降の活動を強力に推進するためには不可欠である。

 

 

 

謝 辞

 

 この宣言の作成は、日本の国立身体障害者リハビリテーションセンターの多大な支援がなかったならば成し遂げられないものであった。 特に、総長の初山泰弘博士への感謝は言葉に尽くせないものがある。 

 

 N.V.K.ナイヤー博士、リンダ・ミラン博士、及びアントニオ・ペリケット博士によって用意された原案に始まり、 広範な領域の専門家の意見や視点が取り入れられ、幾たびかの修正の後に最終案が作られた。 この宣言の作成のために貴重な時間、知識、専門技能を喜んで提供してくれた次の専門家に感謝する。

 

 

ポーンピット・アマチャクル

マヒドン大学ラチャスダ・カレッジ

タイ、ナコーン・プラトン市

 

浅井邦彦

日本精神病院協会

日本、東京

 

ベンジャミン・ジェラルド・G・カブレラ

フィリピン総合病院眼科

フィリピン、マニラ市

ハッサン・サイディー・カーン

国立小児聴覚・言語センター

バングラデシュ、ダッカ市

 

木村哲彦

国立身体障害者リハビリテーションセンター病院

日本、所沢市

 

吉川武彦

国立精神・神経センター精神保健研究所

日本、市川市

 

リー・ジャンジュン

中国リハビリテーション研究センター

中国、北京市

 

クリスチーナ・S・ロペス

サント・トマス大学病院耳鼻咽喉科

フィリピン、マニラ市

 

ルース・マーシャル

王立アデレード病院整形、切断、脊髄損傷リハビリテーション・サービス

オーストラリア、ノースフィールド市

 

リノ・ピント・マルケス

コンデ・デ・S・ハニュエロ中央病院リハビリテーション部

マカオ

 

中村隆一

国立身体障害者リハビリテーションセンター更生訓練所

日本、所沢市

 

ナン・デンクン

同済医科大学(WHO指定研究協力センター)

中国、武漢市

 

ニュンニュン

国立リハビリテーション病院

ミャンマー、ヤンゴン市

 

ザリハ・オマール

マラヤ大学医学部整形外科

マレーシア、クアラルンプール市

 

パク・チャンイル

延世大学医学部リハビリテーション部

韓国、ソウル市

 

サンディヤオ・セバスチャン

マラヤ大学教育・教育心理学部

マレーシア、クアラルンプール市

 

シェン・ユークン

北京医科大学精神保健研究所

中国、北京市

 

柴田貞雄

国立身体障害者リハビリテーションセンター学院

日本、所沢市

 

ポーンチャイ・シマロー

マヒドン大学眼科

タイ、バンコク市

 

ソプランジョーノ

ソエハルソ教授記念整形外科病院

インドネシア、スラカルタ市

 

飛松好子

国立身体障害者リハビリテーションセンター病院

日本、所沢市

 

ジャカタマ・トガ

フィジー障害者全国協議会

フィジー、ナッソー市

 

ハンドヨ・チャンドラクスマ

CBR開発・訓練センター

インドネシア、スラカルタ市

 

山内  繁

国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所

日本、所沢市

 

簗島謙次

国立身体障害者リハビリテーションセンター病院

日本、所沢市

 

ツァオ・ダホン

孫中山医科大学(WHO指定研究協力センター)

中国、広州市

 

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