視覚障害者の理解のために
1.視覚障害とは
(1)定義
視力や視野に障害があり、生活に支障を来している状態を視覚障害といいます。眼鏡をつけても一定以上の視力が出なかったり、視野が狭くなり人や物にぶつかるなどの状態です。
眼の機能は、視力、視野、色覚などがあります。身体障害者福祉法に規定されている視覚障害は、視機能のうちの矯正視力、視野の程度により1級から6級に区分されます。矯正視力とは、近視や乱視などの矯正眼鏡をしたときの視力です。視野は、視線をまっすぐにして動かさない状態で見えている範囲をいいます。
視覚障害の等級
1級:両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、きょう正視力について測ったものをいう。
以下同じ)の和が0.01以下のもの
2級:1 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの
3級:1 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの
4級:1 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
5級:1 両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの
2 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
6級:1 眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの
(2)全盲の方とロービジョンの方
視覚障害の方の見え方の状態には、全盲、弱視、ロービジョンなどいろいろな表現があります。
全盲とは、医学的には光も感じない状態をいいます。社会的盲、教育的盲という表現もあります。社会的盲は、ある程度の視機能があるものの、かなり見えないため視覚以外の感覚を使って日常生活をしている状態をいいます。教育的盲は、ある程度の視機能はあるが、かなり見えないため視覚以外の感覚による教育をすべき状態です。
弱視という言葉もあります。医学的に弱視とは、眼球に障害の原因となるような疾患がなく、視力低下の原因が視覚に関係する脳の発達によると考えられる状態を指します。斜視弱視、屈折異常弱視、不同視弱視、形態覚遮断弱視に分類され、小児期での対応で、視機能が上がることもよくあります。
それに対して、社会的弱視、教育的弱視という言葉もあります。社会的弱視は、視覚障害はあっても、主に眼からの情報を使って生活できる状態をさします。教育的弱視は、視覚障害はあるものの主に視覚を用いた学習が可能な状態をいいます。最近では、医学的弱視との混同を避けるため、社会的弱視、教育的弱視をロービジョンということがあります。
全盲とロービジョンの定義は必ずしも確定していませんが、全盲とは視機能をほぼ使えない状態、ロービジョンとは視覚情報をある程度使える状態と言えます。ロービジョンの人は、視覚障害者の多くを占めています。
(3)ロービジョンの方の見え方
見え方には、眼疾患などにより視力が低くなる、視野が狭くなるなど、いろいろな状態があります。さらに、まぶしさや薄暗いところで見えにくいという夜盲などの症状が合わさっていることもあります。視力が低いため拡大鏡などで大きくして読む人、視野の中心が無くなり文字が読めなくなったものの、周辺の視野を使って慣れた道を問題なく歩く人、視野の周辺の視野が無くなり中心の視野で見ながら歩行するので障害物や人にぶつかってしまう人、それらの状態にまぶしさや夜盲などの症状が加わった人など、様々です。
2.視覚障害の方との日常生活
周囲の方の協力で、視覚障害の方が職場などで過ごしやすくなります。
(視覚障害と歩行)
視覚障害の方は、見えないあるいは見えにくいため物の位置関係を把握するのが困難です。人や障害物にぶつかることなどを防ぎ安全に歩くため、白い杖(白杖)を使いながら通勤・通学をしている人もいます
(決められた場所にものを置く)
必要なものは決められた場所に置くようにすると、視覚障害の方がものを探しやすくなります。よく使う事務用品を、いつもとは違う場所に置くと、本人はそれに気づかず、必要な事務用品を見つけ出せないことになります。置き場所を変える際は、そのことを本人に話す必要があります。
(通路にはものを置かない)
視覚障害の方は、障害物を発見しにくいので、室内であっても不要なものを床に置かないようにします。例えば、いつもは置いていない場所に荷物を置くと、それにつまずいてしまうことがあります。どうしても置かざるを得ない場合は、そのことを本人に伝えておきます。できれば目が不自由ではない人(晴眼者)と一緒に行き、直接確認しておくとよいでしょう。
(よく使う場所への行き方を覚える)
視覚障害の方は、トイレなど位置関係を覚えれば一人で行けます。初めは晴眼者と何回か歩いてもらい、いつもいる場所との位置関係を覚えると、屋内での単独歩行が可能になります。
(物の位置の説明)
視覚障害の方に、場所やものの位置を示す場合は、「あっち」「こっち」の言葉を使って説明すると、方向がわからないことが多々あります。テーブル上での説明ですと「3時の位置にコーヒーを置きます。」と時計の文字盤をイメージして説明したり「右手の前にお茶を置きます。」あるいは、部屋などの位置を説明する場合も「ドアを出て右へ10mほどいくと、左側に洗面所があります。」など具体的に位置を説明します。
(使用する文字)
視覚障害であっても、全員が点字を使うわけではありません。普通の文字を拡大鏡や拡大読書器などを使って読む人がいます。そのような方にメモなどを渡す場合は、サインペンなどで書いたものを渡すと、読みやすくなることがあります。
(コンピュータ)
音声ソフトやディスプレイ上の文字や図などを拡大するソフトを利用してコンピュータを使う人もいます。視覚障害の方も仕事をする上では、コンピュータを使うことが一般的になってきています。
(まぶしさ)
視覚障害の方の中には、屋内や屋外でまぶしさを感じる人もいます。そのため、特殊なサングラスなどを常用している人もいます。
(向きによりディスプレイ上のものが見えにくくなることもある)
屋内であっても、差し込む光の具合によってはコンピュータのディスプレイが見えにくかったり、書類の文字が見えにくかったりすることがあります。ディスプレイの向きを変えたり、カーテンやブラインドなどで入ってくる光量の調整などをすると見えにくさが軽減することがあります。
(声かけは名前から)
職場などでは、視覚障害の人に声をかけるときは、いきなり声をかけるよりも、まず、その人の名前を呼んでから、自分の名前をいい、用件を話すようにします。職場の同僚でも、その人の声を覚えるまでは誰が話しかけているのか、わからないことがあるからです。例えば、「鈴木さん、田中です。先ほど、○△商事の佐藤さんから電話があり、折り返し、電話を下さいとのことでした。」という具合です。
(肘をもってもらい外出)
一緒に外出する際は、かなり見えない方、あるいは人混みや暗くなった場合には、視覚障害の方に肘を貸して歩いてください。より安全に効率よく歩けます。
(外食時の説明)
一緒に食事をする時は、お店のメニューを本人の代わりに読んで説明します。出てきた料理の位置も上記の”物の位置の説明”のようにするとともに、「ハンバーグはお皿の左端に、ハンバーグのすぐ右にポテトとにんじんがあります。ハンバーグから白い湯気がたっていて熱そうですから、気をつけて食べてください。」などのように説明すると、食事がさらに楽しくなります。
3.円滑にヘルスキーパー業務を行うために(視覚障害者の立場から)
三療師としての技術向上を図るため、土日祭日などで研修会等に参加しながら、自己啓発に努めます。また、利用者の健康管理と業務効率の向上を目指して頑張りますので、遠慮せずに指示を出してください。
(1)指示の仕方
指示を出す場合には、簡単な内容は口頭で、複雑な内容はメールでの説明が何度も確認できますので助かります。
理解できない場合には、積極的に質問をするつもりですのでよろしくお願いします。
(2)情報の伝達
業務に関することはもちろんのこと、ヘルスキーパー業務以外の情報伝達や連絡もお願いします。
(3)同僚との協調協力
他のヘルスキーパーや、ヘルスキーパー以外の同僚とも、コミュニケーションをとりながら、企業の一員として協調して働きます。
(4)職場安全
通勤や社内での移動という定まったルートは、視覚障害についての専門職員のオリエンテーションを受けることにより、基本的に単独で問題なく行動できます。
職場環境(事務室のレイアウト、機器等の配置)が変わる場合には、その都度現場に同行して説明をお願いします。また、通路などに物を置かないようにしてください。
出張など、通常の行動範囲外へ移動する場合には、初回は同行してください。ただし、一度行ったところは、その後は一人で大丈夫です。
同行時のガイド方法は、白杖を持っている反対側に立ち肘を貸し、半歩先を歩いてください。また、階段にさしかかった時は、「階段を○段ほど上がります」「階段を○段ほど下がります」と声をかけてください。
(5)勤務時間外のコミュニケーション
日常生活の訓練を受けていますので、食事などは単独でできますが、昼食などは是非普段より声をかけてください。
懇親会などには積極的に参加したいと思います。なお、会場や最寄り駅などまで引率してくだされば幸いです。